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記憶を読む治療士、魔獣の家族を視てしまう --人間と魔獣の境界で揺れる青年の物語  作者: 50
揺らぎ始める世界の正義

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第9話 森が牙を向く

第一偵察隊は、森の奥へと慎重に進んでいた。

盗賊が足跡を追い、弓師が周囲を警戒し、剣士が後方を守る。


「昨日の群れは、ここを通ってる」

「気配は薄い。奥へ引いたか」


緊張はあるが、まだ余裕があった。


――その余裕は、一瞬で消えた。


ヒュッ――。


矢が一本、木々の影から飛び出し、

剣士の肩を掠めた。


「ぐっ……! 敵だ、構えろ!」


弓師が即座に矢が来た方向へ反撃する。


ドスッ。


放たれた矢が、木々の間から飛び出したボアの顔に突き刺さった。


「ボア……?!」


ボアが悲鳴を上げて転倒し、

その背に乗っていたゴブリンが地面に投げ出される。


「なんでボアとゴブリンが?!」


ドスッ、ドスッ、ドスッ。


別方向から、

**複数のボアにまたがったゴブリンたち** が現れた。


一匹ではない。

二匹、三匹……

それぞれが別のボアに騎乗し、弓を構えている。


「……なんだこれ……!」


ボアたちが走り出す。

左右に散開し、森の中を縫うように疾走する。


ゴブリンたちは揺れる背の上で体を沈め、

走りながら矢を放った。


ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ!


「はめられた……!」

「避けろ!」


弓師が再び狙うが、

一本は外れ、一本はボアの分厚い皮に浅く刺さるだけ。


「くそっ……!」


弓師がもう一度狙おうとした瞬間、

別方向から飛んだ矢が弓師の胸を貫いた。


「っ……!」


弓師が倒れる。


盗賊は近接戦が不可能と悟り、手投げナイフを構える。


「障害物が多すぎる……!」


シュッ。


ナイフは放たれたが――

当たらない。


ボアは一定の距離を保ちながら走り続け、

ゴブリンはその背で安定した姿勢を保ち、

正確に矢を放ち続ける。


「くそ……詰められねえ……!」


剣士が突撃しようとした瞬間、

別方向からの矢が足を射抜き、膝をついた。


「ぐっ……!」


停滞した剣士は、次の瞬間には集中砲火を浴びて倒れた。


盗賊は歯を食いしばる。


(……やられた。ボアとゴブリンが組むなんて)


ただの奇襲ではない。

**ボアの機動力 × ゴブリンの射撃**。

森という障害物だらけの地形でこそ成立する“連携攻撃”。


「ダメだ……逃げるしか――」


一歩踏み出した、その二歩目。


ゴブリンの放った矢が盗賊の胸に突き刺さった。


第一偵察隊は、

盗賊・弓師・剣士――

全員がその場で倒れた。


***


第二偵察隊のハルは、

歩きながらふと足を止めた。


(嫌な予感がする……)


森は静かだった。

だがその静けさは、

**何かが終わった後の静けさ** に思えた。


そして――

その予感はすぐに現実となる。


木々の奥から、

血の匂いが風に乗って流れてきた。


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