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魔獣の記憶を視る男  作者: 50


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第4話 村に迫る影、揺れる灯火

夜の帳が降り、村の灯りがぽつぽつとともり始めていた。

家々の窓から漏れる光は温かく、どこかのどかな空気すら漂っている。


しかし、その外側――森の境界線では、

まったく別の空気が流れていた。


兄ボアを先頭に、複数の影が木々の間を静かに進む。

怒りと悲しみを抱えた群れのボアたちだ。


「ブヒ……」

短い鳴き声が交わされる。

それは確認の合図。

迷いはない。

彼らは“奪われたもの”に対する答えを求めていた。


兄ボアは村の灯りを見つめた。

胸の奥が痛む。

本当は、こんなことを望んでいない。

家族と過ごした草原のように、

ただ静かに生きていたかっただけだ。


だが、もう戻れない。


(……家族を奪ったのは、人間だ)


耳を切り取られた亡骸が脳裏に焼きついて離れない。

あの光景を忘れることなどできなかった。


群れの長が低く鳴く。


「ブオォ……」


それは“進め”の合図。


ボアたちは地を踏みしめ、村へ向かって歩みを速める。

草が揺れ、土が震え、夜風がざわめく。


その頃、村の外れでは、

見張りの冒険者が焚き火の前で欠伸をしていた。


「……なんか、森が静かすぎねえか?」


隣の仲間が肩をすくめる。


「気のせいだろ。最近は魔獣も減ってるって話だしな」


その言葉が終わるより早く――

森の闇が揺れた。


「……おい、今の見たか?」


「風だろ。気にすんなって」


だが次の瞬間、

闇の中から“赤い光”がいくつも浮かび上がった。


目だ。


無数のボアの瞳が、焚き火の光を反射していた。


「なっ……!? 魔獣だ!!」


叫びが夜空に響く。

見張りの冒険者が武器を構えた瞬間、

群れの長が地を蹴った。


「ブオォォォォ!!」


咆哮が森を震わせ、

ボアたちが一斉に飛び出す。


兄ボアもまた、

家族を奪われた痛みを胸に、

村へ向かって駆け出した。


その足音は、

人間と魔獣の均衡が崩れ始めたことを告げる

最初の衝撃だった。


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