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記憶を読む治療士、魔獣の家族を視てしまう --人間と魔獣の境界で揺れる青年の物語  作者: 50
揺らぎ始める世界の正義

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第17話 「対話」

兄ボアの家族の名前を呼んだ瞬間、

森に満ちていた殺気が嘘のように静まり返った。


兄ボアは突進の体勢のまま動きを止め、

ゆっくりとハルへ視線を向ける。


「……今、何と言った」


低く、震える声だった。

怒りではない。

確かめたいという、切実な響き。


ハルは息を整え、正面から兄ボアを見返した。


「……あなたの家族の名前だ。

 俺は……触れた相手の“記憶”が視える」


兄ボアの瞳が揺れる。


「記憶……? 私の家族を……お前が?」


ハルは頷いた。


「倒れていたボアに触れたとき、

 あなたの家族が倒された最後の姿が流れ込んできた」


兄ボアは一歩近づく。

その足取りは重く、迷いがあった。


「……家族の最期を……見られるのか。

 犯人は……人間なのか」


ハルは首を振る。


「俺が視たのは“あなたたち側の記憶”だけだ。

 殺害した側の記憶を観れば分かるが……触れる必要がある」


兄ボアは苦しげに目を閉じた。


「……それでもいい。

 家族が……どう死んだのか……知りたい」


その声は震えていた。

怒りではなく、喪失の痛みに。


ハルは静かに頷いた。


「……わかった、協力する。

 あなたの家族の最後を、俺が視ます」


その瞬間――


「ふざけんなよ、ボア!」


ゴブリン長が怒声を上げた。

弓師が負傷している今こそ、人間を仕留める絶好の機会。

それを逃す気はない。


「今殺せば終わりだろうが! 裏切る気か!」


兄ボアはゆっくりと振り返り、

ゴブリン長を睨みつけた。


「……もう、お前たちと組む理由はない」


「なんだと? 筋が通らねぇ!」


ゴブリン長は近くにいた別のボアを掴み、

その首元に短剣を突きつけた。


「動くな! こいつを殺すぞ!」


ボアたちがざわめく。

兄ボアの表情が険しくなる。


そのとき――

ハルが弓師へ目配せした。


弓師は痛む足を押さえながらも、

わずかに頷く。


ハルは一歩踏み出し、

ゴブリン長の注意を引いた。


「だから、お前は上位ゴブリンになれないんだよ!」


同時に弓師が矢を放つ。

矢はゴブリン長の腕をかすめ、

人質にされていたボアが反射的に身をよじる。


その隙に兄ボアが飛び込み、

仲間のボアを引き離した。


ボアと冒険者が、同じ方向へ向く


“ゴブリン”


戦況が変わり

ゴブリン長が薄ら笑いを浮かべる


ハルもまた、薄ら笑いで詠唱を始めた

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