第18話 決着
「裏切り者がァ!!」
ゴブリン長が怒り狂い、
兄ボアへ槍を突き立てようとする。
だが兄ボアは、散々目の前で見てきた槍の長さを正確に測り、
攻撃範囲の外へ退いた。
そして弓師を背に乗せたまま、地面を蹴る。
「撃て! 俺には倒せん任せた!」
弓師は痛む足を押さえながらも、
兄ボアの背で体勢を整え、矢をつがえる。
ヒュッ!
ヒュッ!
逃げようとするゴブリンたちの肩や腕に矢が突き刺さり、
悲鳴が森に散った。
剣士と盗賊も動き出す。
「右を押さえる!」
「ボアたちは左へ回り込め!」
人間とボアが、
互いに声を掛け合うという異様な光景。
だがその連携は、驚くほど噛み合っていた。
***
ハルはゴブリン長と対峙していた。
「てめぇが全部邪魔なんだよ!」
槍が突き出される。
ハルはメイスで受け流し、木の影へ飛び込む。
ガンッ!
火花が散り、腕に衝撃が走る。
(……だめだ、武器がもたない)
ゴブリン長は苛立ち、
戦況をひっくり返そうと焦って攻めてきた。
「死ねぇ!!」
その瞬間――
ヒュッ!
兄ボアの背から放たれた弓師の矢が、
ゴブリン長の腕を貫いた。
「がっ……!」
槍が落ちる。
ハルは即座に動く
距離を詰め、メイスを振り下ろした。
ガンッ!!
ゴブリン長がよろめく。
そこへ兄ボアが突進し、
巨体でゴブリン長を木へ叩きつけた。
最後の一矢が放たれる。
ヒュッ――。
弓師の矢が、
ゴブリン長の胸を正確に貫いた。
強靭な肉体により
矢は貫通しなかったが、内臓には達した
木に沿って、そのまま崩れ落ちた。
ゴブリン長がやられ、他のゴブリンたちも指揮を失い、ゴブリンは全滅した崩壊。
***
戦いが終わると、
兄ボアがハルへ歩み寄った。
「……第一偵察隊の記憶を読めるか?」
ハルは首を振る。
「遺体には触れても記憶は読めない
……ごめん」
兄ボアはしばらく黙り、
やがて静かに言った。
「……いい。
だが、家族の最後は……必ず教えてくれ」
ハルは頷いた。
「約束する」
兄ボアたちは弓師を途中まで運ぶことを申し出た。
冒険者たちもそれを受け入れ、
奇妙な共闘のまま森を後にする。
ハルは胸の奥に重いものを抱えながら、
村へ戻る道を歩いた。
その背後で――
盗賊が、
誰にも気づかれないように
冷たい目でハルを見つめていた。
(……記憶を読む?
まずいな、それは)
森の静寂が、
新たな不穏を孕んでいた。




