第16話 「共闘の矢」
ゴブリン長は怒り狂い、
兄ボアへ槍を突き立てようとした。
「裏切り者がァ!!」
兄ボアは弓師を担ぎ上げ、
その巨体で走り出す。
「撃て! 俺が足になる!」
弓師は兄ボアの背で体勢を整え、
次々と矢を放つ。
ヒュッ! ヒュッ!
ゴブリンたちが距離を取ろうとするが、
兄ボアの機動力は凄まじい。
逃げる間もなく矢が命中していく。
一方、ハルはゴブリン長と対峙していた。
「てめぇが全部邪魔なんだよ!」
槍が突き出される。
ハルはメイスで受け流し、
木の影へ飛び込む。
ガンッ!
火花が散る。
剣士と盗賊は、
周囲のボアたちと連携しながら
他のゴブリンを次々と倒していく。
「こっちは任せろ!」
「ボアたち、右へ回り込め!」
人間とボアが、
互いに声を掛け合うという異様な光景。
だがその連携は確かに機能していた。
ゴブリン長は苛立ち、
兄ボアへ槍を投げつけようとした。
「死ねぇ!!」
その瞬間――
ヒュッ!
兄ボアの背から放たれた弓師の矢が、
ゴブリン長の腕を貫いた。
「がっ……!」
槍が落ちる。
ハルは一気に距離を詰め、
メイスを振り下ろした。
ガンッ!!
ゴブリン長がよろめいたところへ、
兄ボアが突進し、
弓師の最後の一矢が胸を貫いた。
ゴブリン長は木に叩きつけられ、
そのまま動かなくなった。
森に、静寂が戻る。
***
戦いが終わると、
兄ボアがハルへ歩み寄った。
「……第一偵察隊の記憶を読めるか?」
ハルは首を振る。
「遺体には触れない。
……ごめん」
兄ボアはしばらく黙り、
やがて静かに言った。
「……いい。
だが、家族の最後は……必ず教えてくれ」
ハルは頷いた。
「約束する」
兄ボアたちは弓師を途中まで運ぶことを申し出た。
冒険者たちもそれを受け入れ、
奇妙な共闘のまま森を後にする。
ハルは胸の奥に重いものを抱えながら、
村へ戻る道を歩いた。
その背後で――
盗賊が、
誰にも気づかれないように
冷たい目でハルを見つめていた。




