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記憶を読む治療士、魔獣の家族を視てしまう --人間と魔獣の境界で揺れる青年の物語  作者: 50
揺らぎ始める世界の正義

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第13話 崩れた均衡

ゴブリンが放つ矢が、冒険者たちへ容赦なく降り注ぐ。


「……っ!」


弓師の太ももに一本が命中し、

その瞬間、攻撃の手がわずかに止まった。


だが弓師は片膝をつきながらも体勢を整え、

痛みに耐えて矢を放ち続ける。


剣士がすぐに駆け寄り、

盗賊も手持ちの投げナイフをすべて放った。


殺すためではない。

均衡を保つための、必死の牽制。


しかし――

焦りは、どうしても顔に出る。


そのわずかな乱れが、

戦況を傾けるには十分すぎた。


「……今だ」


ゴブリン長が兄ボアの肩を軽く叩く。

合図は短く、迷いがない。


兄ボアが弓師へ向けて踏み込もうとした、その瞬間――


ハルが前へ飛び出し、

兄ボアとゴブリン長の視線を遮った。


空気が、一瞬だけ止まる。


兄ボアの瞳が揺れた。

驚きか、怒りか、それとも――

あの“記憶”の残滓か。


ゴブリン長は舌打ちし、槍を構え直す。


「邪魔すんなよ、小僧」


ハルは震える手でメイスを握りしめ、

兄ボアの前に立ち続けた。


(……逃げない。

 ここで退いたら、何も変わらない)


森の奥から、

複数のボアとゴブリンが姿を現し始める。


包囲が完成する。


森が、

完全に牙をむいた。


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