第11話 記憶の相手、遭遇
ハルたち第二偵察隊は、第一隊とボアの痕跡を追って森の奥へ進んでいた。
血の匂いは濃く、何かを引きずった跡は
“見せつけるように” はっきりと残されている。
(……ボア以外の何かがいる)
そのとき――
「……ゴブリンだ!!」
最前列の仲間が突然足を止めた。
その声には、確信と焦りが混じっていた。
振り向こうとした瞬間。
ヒュッ――!
左右の茂みから、同時に矢が放たれた。
「散れッ!」
全員が反射的に身を翻す。
矢が木に突き刺さり、乾いた音が森に響いた。
(ボアに……ゴブリンが騎乗している……!)
ハルが身を起こした瞬間――
背後から、地面を揺らす重い足音が迫ってきた。
ドスッ、ドスッ、ドスッ!
「後ろだッ!」
振り返ると、
巨大な影が突進してくる。
兄ボアだった。
その背には、
槍を構えたゴブリン長が乗っている。
兄ボアの突進は止められない。
ハルは咄嗟に横へ飛び退いた。
直後、兄ボアが通過し、
地面が抉れる。
同時に、
ゴブリン長の槍が横薙ぎに迫る。
「ッ……!」
ハルはメイスを振り上げ、
槍の軌道だけを逸らした。
ガンッ!!
火花が散り、
衝撃が腕に走る。
その一瞬――
兄ボアが振り返り、
ハルと目が合った。
覚悟を決めた目。
そして、覚悟を決めきれていない目。
ハルは息を呑み、
震える声でつぶやいた。
「……こいつだ……
こいつの家族の記憶だ……」
兄ボアは低く唸り、
再び地面を蹴る。
ゴブリン長は槍を構え直し、
ニヤリと笑った。
「さっきより骨があるじゃねえか」
左右の茂みでは、
複数のボアとゴブリンが姿を現し始めていた。
森が、
ついに牙をむく。




