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公女


マリカは本当にしっかりした子だ…きっと今より立派で逞しい女性に育つだろう。そういえば神国で出会ったカレンって子も年に似合わずマリカの様なしっかりした『芯』を持っていそうだったな。


「さて、早速だが俺に用事があるんだって?」


「はい。まあ定期報告も兼ねてですが」


それからエウルに聞いたのは『ユリオン』の『湖上都市フィーリス』についての依頼内容とイヴ達の判断だった。


湖上都市フィーリス、名は聞いたことがある…同じ『タルハス』でも確か王都アルディア付近よりも強力な魔物が出現する地域だ。それに加えて都市内の賊…か。賊達はどれ程の手合いなのか、水質汚染の魔物にしても得体が知れない…情報が少ないな。


だからこそイヴ達は3人で行く気なんだろうが……俺の中でガールズを信じるよりも案じる方が勝ってしまった。


もしもダイヤモンドドラゴンの時みたいに思わぬ強敵と出会ってしまったら…なんて考え始めたら居ても立ってもいられなくなってきた。


「もう出発したのか?」

「いえ、まだだと思いますよ」

「そうか…」

「心配なんだね〜」

「であるな」

「あの人達なら大丈夫だと思うけどな」

「…そうだな」


「ミウさん、行ってください」

「エウル」

「何があるか分かりませんし、皆さん会いたがっています。そうだ、ポルメネさんから伝言が」

「なんだ?」


エウルはちょっと、と言って周りに聞こえない様に耳打ちした。


「姉さん方に負けないくらい愛しています、だそうです」


それを聞いて俺は驚くと同時に無償にポルメネに会いたくなった。あのポルメネがこんなにも大胆な言い方をしてくれたんだ、俺の気持ちをしっかりと伝えてからこの手で抱き締めたい。山猫姉妹もガールズも、同様に愛でたい…だが今はそれどころではない。


「実は大事な話がある」


「なんです?」


俺は4人に現状得た聖騎士の情報と竜人族の話をした。


「なっ、ミウさんが負けてた…だと」

「…信じられない」

「あたしら4人で倒せるくらいかな。そんなのが複数って…」

「かなり危険である」

「ミウさん、本当にそのカシアンてのは加減してたのか?」

「ああ。間違いない」

「そんな…」

「だからこそ今は仲間と離れたくないんだ」

「なるほどな…」

「あっ、だったらお兄さんが戻ってくるまであたしら『月明かりの四牙』と『女神の聖槍』が一緒にいれば良いんじゃない?」

「確かにエルティーの言う通りです。私達が合流して行動を共にしていればミウさんが抜けていても刺客を退けることが出来ます」

「そうだぜミウさん、俺達少しは強くなったんだ。頼ってくれよ」

「うんっ」

「ウムッ」


アギレ、エルティー、バーセアは親指の腹を見せて笑った。


「緊急時には私も出るわ」

「エンカ、いいのか」

「ええ。家族同然の相手を見殺しになんてしないわよ」


5人は「安心してくれ」と言わんばかりに俺を見た。


「…お前ら。ありがとな」


ーーーーーーーーーー


「ねえサラ、お父様の胸中、解っているはずよ」


私の癒し処である自宮の『流穏(るおん)の庭』に面した通路にて、家族であり魔術の師でもあるラナにそう言われた私は己がいかに子供じみた我儘を言っているのか思い知った。


でも、それでも…こればかりはどうしても譲れないのだ。ラナと父との会話を聞いた瞬間、本能的に自分も『其処(そこ)』へ赴くべきだと思った。


「解っています。それでも気持ちは変わりません」

「どうしたと言うのサラ、貴方らしくないわ」

「私は…。ラナ、私だって冒険したい、そういつも言っていますよね」

「ええ」

「それとは全く異なる理由でラナ達に同行したいのです」

「異なる理由?」

「はい。行かなければいけない…そんな使命にも似た声が流れてくるのです」

「サラ…」


「ふああ…いいじゃないラナスティア、わたくし達が一緒なのだからぁ」


欠伸をしながら現れたのはもう1人の師であるソル先生だった。


「ソル先生っ」

「ソルティエナ!またそんなこと言って。公女を連れ出すなんて重大な事なのよっ」

「そもそもラナスティアがあんな所であんな内容の話をしたのが切っ掛けじゃない。駄目よぉ、もっと人目につかない場所を選ばないと。ねぇサラちゃん」

「え、えっ…と」

「サラを困らせる言い方は止めなさいっ」

「ウフフ、本当に良い子に育ったわねぇ」

「いえ、そんなことは。現に父様(とうさま)を困らせています」

「真面目ねぇ。兎に角それって()き止められる流れではないのでしょう?」

「…はい。無理矢理止めるべき流れではないと判断しました」

「あらあら、ここまで言っているサラは初めてねぇ。だからこそ止めるのは難しいと思うわよラナスティア」


ソル先生は笑ってこそいるが真剣な眼差しでラナを見つめた。


「…仕方無いわね。私からラウシス大公に話してどうにか説得してみるわ」

「ラナ!ありがとうございますっ」

「言っておくけどまだ同行を許すと決まった訳ではないから。貴方のお父様が承諾する保証は無いのよ」

「…はい」

「大公は手強いわよぉラナスティア」

「分かってるわよ」

「うう…」


ソル先生の言う通りだ、父様はきっと簡単には許してくれない。


説得材料がもう少し有れば…


「ちょっといいですか」


その時、少し離れた石柱の影から声がした。

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