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決意


声の主は我が『ノールコンス公国』の選ばれし魔術師集団『魔術精鋭(ラヴディ)』の一員、『砕切(さいせつ)のシェステル』だった。


私にはよく分からないがラナとソル先生は彼をあまり好いていない、故に今も2人揃って眉をひそめている。


「何の用、シェステル…それより盗み聴いていたの」


「いやいや、そんなつもりはなかったんですが…我が公国の秘宝、サラ・ミシュベリー様の窮地だと思いましてね」


「相変わらずわざとらしいわねぇ。要件はなによ」


「サラ様の護衛として自分も同行しますよ。実力のある者が一人でも多くお側に居れば、ラウシス大公も安心するのではないかと思いましてね」


そう言ってシェステルは私を見て笑みを浮かべた。彼の協力的な言動に私は感謝するべきだと思い、口を開いた。


「シェステルっ、感謝致しま…」


「貴方、それは本心なの?」


ラナは疑いの眼差しでシェステルを見ている。どうして?彼に嘘を吐く理由なんてあるの?ソル先生も石柱に寄りかかり腕組みをしながらシェステルを見ている…もちろん笑みは無い、一気にこの場の空気が重くなった様に感じる。


「失礼します」


その時、シェステルの後ろから声がした。


彼と同様『魔術精鋭(ラヴディ)』の一員、『黒面(こくめん)のティマノイル』が腹部に手を当て丁寧に頭を下げていた。


「あ、ティマ」


「なんだよ、お前も居たのか」


「どうしたのティマノイル」


「私も同行させていただけますか」


ラナとソル先生にそう言ってからティマはシェステルを見た。


「お二人の考えは理解しているつもりです。シェステルのことは私に任せて頂けませんか」

「おいおい、嫌な言い方だな」

「いかがでしょうか?」

「全く、困ったものね」

「どうするのラナスティア」

「…分かったわ。ラウシス大公にはそう伝えておく」

「感謝致します」

「ありがとうございます。それじゃあ自分は失礼しますよ」


シェステルはティマを一瞥して去っていった。


シェステルの背中を見続けた後、ティマも私達に頭を下げてから行ってしまった。


同じ組織に属しているのに、仲良くないのかな…まあ他のラヴディのみんなも仲良しって感じではないかも…ラナは『曲者(くせもの)集団』ってよく言ってる。


『流穏の庭』に目をやると小鳥達が東屋(あずまや)に集まっているのが見えた。私も早くお話したいな、なんて考えているとソル先生が真面目な声音で尋ねた。


「で、どうなのラナスティア」

「不穏な風は吹いている…ただティマノイルのお陰で多少は変わったみたい」

「ラナ…ごめんなさい、私…」

「今更よサラ。気にしなくて良いわ」


ラナは長い金髪を風に(なび)かせながらフッと穏やかに笑った。


「それに、これから行く先にはやはり貴方が必要な予感がするわ」

「私が…ですか?」

「シェステルにティマノイル、この流れは自然と似て非なるものかもねぇ」

「そうね。兎に角『あの場所』から吹く風…これは放っておくには(よど)みが強過ぎる」


ラナの台詞でこれから行く先がどれだけ危険な場所なのか改めて知らされた。


「あのっ、ソル先生、今から授業をお願いしても宜しいですか」

「いいわよ。真面目ねぇサラ……まあ今回はわたくしもそうすべきだと思うわぁ」

「大公を説得したら私も参加するわ」

「ラナ、よろしくお願いします」

「任せなさい、許しはもらえる…きっとね。その代わりお父様とは後でちゃんと話すのよ」

「はい」

「それにしても、サラちゃんにとっては初めてのまともな『冒険』になるけど…勢いが強いわねぇ」

「覚悟は出来ています。Aランク冒険者としての自覚は持ち続けているつもりなので」

「ウフフ、本当に良い子に育ったものねぇ」

「だとすれば両親とお2人のお陰です」

「嬉しいわぁ、ねえラナスティア」

「ええ。血は繋がっていなくとも娘みたいなものだからね…誇らしく思うわ」


2人は温かな木洩れ陽の様な表情で私の頭を撫でた。


子供扱いはやめてほしい、なんて考えたことはない。そもそも彼女等とは『時間』に対しての概念が異なる訳だし。


何はともあれこの冒険…足手まといにならない様にしないと。


ーーーーーーーーーー


俺は一度神国に戻り、皆に事情を説明した。


「それと、ミミルとマリカも連れて行くつもりだ」

「えっ、大丈夫なの?ウチも行ったら戦力下がるよ〜」

「大丈夫ですよミミル、こちらのことは心配なさらず行って来て下さい」

「ティオもそう思って…」

「えぇ~っ!ミウ遠くにいくのぉ?やだやだぁ!」

「アナ、ミウのことを思うのなら行かせてあげて下さい」

「うぅ〜…ミミルだけずるいぃ」

「なんでそうなるんだ」

「だってミミルはミウのこと…ぐむっ」

「あはは…アナちゃん留守番よろしくね〜」

「ぐむむっ」

「急ぎなんだろう?早く準備したらどうだい」

「ゼリウス、すまないな」

「気にすなよ、僕らの仲だろう」


そう言って笑い、ゼリウスは拳を突き出した。


「そうだな…頼んだ」

「2人とも久しぶりの帰省だろ?ゆっくりしてきなよ」

「ありがとな」


拳を合わせて笑うと、メティとティオが側に来た。

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