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妹弟


「わあっ!ありがとうございますっ」


カレンの妹は目を輝かせてから丁寧に頭を下げた。


「い、いいのよ。お姉さん居ないのよね?」

「…はい」

「そう。じゃあ私はこれで…」

「あのっ」

「ん?」

「もしご迷惑でなければ上がっていきませんかっ」

「…いいの?」

「はいっ。シンくん…弟にもフィリパさんを会わせたいので」


…やはり弟も居るのか。でも先程から顔を見せない、外出若しくは寝ているのだろうか?


「そ、それじゃあお言葉に甘えようかな」

「やったぁ!どうぞ入ってくださいっ」


中に入るよう促され、私はカレンの家に上がった。


とても日当たりが良く、外観から予想はしていたが中は結構広かった。やはり他の家族は居ない様だ…いや、あの扉は寝室だろうか?とそんな私に気付いたらしくカレンの妹はその扉をそっと開けて何やら話していた。


「フィリパさん、どうぞ」

「え…ああ」


言われるがまに部屋に入ると、ベッド上に少年が横たわっていた。まさか…


「はじめまして、こんにちは…僕はオルレア姉ちゃんの弟シンっていいます」


やはりそうか、『オルレア』と言うのがカレンの本名だ。それにしてもこの子、顔色が良くない…それに痣?の様なものが腕や首筋に見える。


「はじめまして、オルレアの仲間のフィリパです。よろしくね」

「よろしくお願いします…こんな状態で挨拶しちゃってごめんなさい」


妹のカレンもそうだけどなんてしっかりした子達なの、きっと良い親子さんに育てられたのだろう。


「調子のいい日は少し歩いたりできるんですけど」

「そうなのね。気にしないで、オルレアのご妹弟に会えただけでも嬉しいわ」

「そう言って頂けると有り難いです。フィリパさん、オルレア姉ちゃんの言う通り優しい方ですね」

「そ、そんなことは…」

「だよね!あたしもそう思ったんだよっ」

「ふふ…カレン姉ちゃん、扉開けておいて」

「うんっ、わかってるよ。フィリパさん、お茶淹れるからこっちに座って。シンくんちょっと今日は起きれないけど、話は聞いてるから」

「…わかったわ」


ドアを全開にしてから居間に戻り、私はカレンに従い椅子に座った。


「ちょっと待っててください」

「ええ」


それからカレンはお茶を淹れる準備を始めたのだが、私は内心とても驚いていた。あの所作、カレン…オルレアにそっくりだ。


その時、私は無意識にオルレアにお茶を淹れてもらっている場面を思い返してしまった。あの時は…いや、いま考えても仕方の無いことだ。


「どうぞ、熱いので気をつけてくださいね」

「っ!!」

「フィリパさん…?」

「あ…いや、お姉さんにそっくりだなって」

「ほんとですか、嬉しいですっ」

「…お姉さん好き?」

「はいっ」

「…そう」

「あの、フィリパさんも聖騎士さんなんですよね?」

「えっ」


そうか、そういうことにしているのか。こんな子に嘘は吐きたくないが話を合わせないと混乱させてしまう。


「ええ」

「お姉ちゃん言ってましたよ、先輩はすごーく強くて美しい剣技を振るうんだーって」

「…あの子、オルレアはちょっと大袈裟なのよ」

「そんなことないですっ。少なくともフィリパさんのことを大袈裟に話したりはしてないっておもいます!」

「そ、そう」


オルレア、私のことを慕ってくれていたのは本心だったの?あれも偽りの姿だと思っていたのに…あなたは一体どういう気持ちであんなことを……そうだっ。


「お姉さん、私以外の仲間の話はしてなかった?」

「してましたよっ。でも…」

「…?」

「いつも途中で話すのやめてました。あたし、なんでだろうって気になって聞いたことあったけど教えてくれなかったんです」


カレンの話を聞いて私は何となく、ぼんやりとだがオルレアの心境を察することが出来た。それにコルトン隊長、フレヤ、ソティリス、エイデンを意図も簡単に殺めることが出来た理由も解った気がする。


初めは純粋に嘘で固めた殺戮人形の様な人間だと思っていた…でも違う、きっとオルレアはこの子達の為に…ってあれ?


「そう言えばご両親は?」

「えっ、お姉ちゃん話してないんですか」

「…?」

「うち、お父さんもお母さんも死んじゃってて」

「あっ…ごめんなさい」

「いいんです、気にしないでください」


そう言ってカレンは少し寂しそうな目をしてカップを掌で包んだ。


「お母さんは病気で死んじゃったんです…」


カレンは私の目をちらちらと見て何かを話すのを躊躇っている様だった。


「無理しなくてもいいわよ」

「えっ…あっ、お気遣いありがとうございます」


ふふっと笑ってからカレンは衣服の袖を捲った。


「それ…」

「はい。シンくんもあたしもお母さんと同じ病気なんです」


カレンの細腕には弟と同じ痣があった。

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