第四十五話 準京都の意思②
「よくもあんなことができるわよね………そもそも、青新選組の隊員は準京都の人なのに、お金のために仲間を売るなんて、裏切りもいいところよ。こうなったら、もう敵も同然よ………」
と、バスの車内、ノボルの前に座る二人組の女性客の一人が声を震わせた。
「何もかも“年貢”が悪いのよ」
もう一人も隠語を口にして憤りをあらわにする。
年貢とは、準京都側が本京都側に支払う税金のことだった。
「でも、そのお金は私たちのものなんだから、返してもらいたいわよ。そうすれば、こっちの生活はもっと楽になるはずなんだから」
「あちらは、そうさせたくないのよ」
「要するに、私たちが強く賢くなることは許さない。でも、いなくなっても困る。そういうことでしょ? どこまで悪趣味なの!」
「警察にはもっとうまくやってもらいたかったわ。“倒幕派”を真剣に取り締まるふりをしつつ見逃し続けていたようだけど、多分、新江戸政府にそのことがバレてしまったんじゃないかしら? そのせいで青新選組まで結成されてしまったのよ。しかも隊員は、警察でさえも所持が許されていない実弾入りの拳銃まで持っている。これが大問題だわ………」
新江戸政府は政権転覆の企てを封じるために、警察だけではなく、全ての準京都の人々の武器類の所持を禁じていた。
それが、いわゆる刈り取り政策の一つ“刀狩り”だった。
当然、準京都側は政府による押さえつけだと抗議したが、一切聞き入れられなかった。
隠密警察や赤新選組が好き放題できるのもまさにそのためだった。
だから倒幕派の存在は、準京都側の意思表示でもあり、警察もその活動を黙認していたのだった。
「そうよ、そこなのよ、私たちは毎日、同士打ちをさせられているっていうことなのよ。老中議員たちは、なんてヒドイことを考えるのかしら! もう、何もかもがグチャグチャで、どうにもならないわね………」
と、再びバスが弾んだが、運転手はスピードをゆるめなかった。
もう左手前方に図書館が見えていたからだ。
「みなさん、もうちょっとの辛抱ですよ!」
さらに、そう叫ぶと、前を見たまま必死にハンドルがブレないように握り締めていたが、やがて急ブレーキをかけた。
ノボルは思わず前席のシートにつんのめりそうになったものの、バスがとまったあとで何とか体勢を戻すと再び黒縁メガネをかけた。
そして、財布から小銭を取り出すと席を立った。
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