第四十六話 謎の書物①
地区に一つしかない図書館にやってきたノボルは、一度館内を眺めてみた。
一応、書架は各ジャンルごとに並んではいたのだが、肝心の本はほとんど置かれていなかった。
これも、政府による刈り取り政策の一つ“書物狩り”のためだった。
人々がよからぬ気を起こさないように大多数の本の閲覧を禁止し、いくつかあった図書館も閉鎖したのだ。
さらには、屋外同様に、館内にも無数の監視カメラが設置されていることもあり、来館者は極めて少なかった。
ノボルは閑散としているロビーの隅にあるカウンターに向かった。
「あの、調べたいものがあるんですけど………」
事務仕事をしている二人の女性の一人、若い受付係がパソコンから顔を上げた。
「どんなものですか?」
「“蝶”に関する本はありますか?」
それを聞くや、受付係は緊張した面持ちになり、奥にいるもう一人の女性に目配せした。
すると、その上司らしき中年女性がおもむろに席から立ち上がり、ノボルの前までやってきた。
館長 澤田悦子
胸元のネームバッジを見たノボルは、目尻のシワをわずかに細める澤田にも同じことを聞こうとした。
「そのまま問い合わせをしている風を装って………!」
が、澤田はやや声を抑え、先にそんなことを言った。
「あなたも倒幕派の人ね? 今のは合言葉でしょ?」
「えっ………!?」
ノボルが戸惑った様子を見せると、さらに釘を刺してきた。
「言ったはずよ! 怪しまれるような素振りは見せないでって!」
いかにも来館者に対応している姿を演じている澤田に対し、ノボルはまだ状況が飲み込めないでいた。
確かにそういう名称を名乗り、政府に抵抗しているグループがいるという噂は聞いたことがあった。
それは、さっきのバスの中でも耳にしていたが、ノボルには関わりのないものだった。
「大丈夫、安心して。私たちは味方よ!」
ノボルが警戒していると勘違いした澤田は、さりげなく手元にあった書籍目録の資料を開いたあと、壁側の書架の方を指し示すようにしながら言った。
「ついてきて!」
◇ ◇ ◇
館内にある監視カメラの位置と撮影角度を把握していた澤田は、ノボルを案内するよう見せかけながら進んだ。
やがて二十ほどある書架のうち、一番奥にある一つと観葉植物の間にある非常口の前まで来たところで足を止めた。
そこはカメラの死角になっている場所だった。
そして澤田は三つのカギがついたキーホルダーを出し、そのうちの一つですばやく非常扉を開けた。
「ここからは急いで!」
ここまで読んでいただきありがとうございます!
“何となくいい感じ”と思われましたら、広告の下にある「ブックマーク」と「☆☆☆☆☆」のポイント評価をいただけると嬉しいです^^
これからも、皆さまに楽しんでいただける作品を作っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m




