第四十五話 準京都の意思①
突然、バスが弾んだ。
道路に穴があいており、その上を通ったからだ。
窓から外を眺めていたノボルは、危うく座席からずり落ちそうになった。
いつもは電車を利用していたノボルだったが、今日はバスを使った。
目的地の図書館の前に停留所があるからだった。
「お客さん方、すいませんね………!」
運転手は座席側に向かってそれだけ言うや慎重にアクセルを踏み直し、ハンドルさばきに集中した。
また、前方に穴。
というより、道路の半分ほどが陥没している。
窓を開けて対向車に合図をした運転手は、速度を落としつつ反対車線にバスを回り込ませて窪みをさけた。
ノボルも一旦お金のやりくりの心配は脇に置き、座席につかまった。
ほどなくすると、今度は倒れ落ちた道路標識があり、バスは再び車線を越えて蛇行する。
至る所でそんなことが起きているため、道路はいつも渋滞していた。
さらにはノロノロ運転の車の間を通行人が行き来する中、青パトが何台も走り抜けて行く。
鳴り響くクラクション。
ほころびや落書きの目立つ沿道の建物。
歩道に散乱するゴミ。
食べ残しをあさるホームレスとストリートチルドレン。
通りのブロックごとに設置されている監視カメラ………。
準京都第三環区の全域がそうというわけではなかったが、人が密集する地区の日常はまさに混沌としていた。
「次は図書館前です」
と、車内アナウンスが流れる。
降車ボタンを押したノボルはポケットから財布を取り出すと、運転席の後ろ側に掲示されている料金表を確かめようとした。
が、ちょうどレンズのヒビが邪魔になって見にくい。
再度ゴーグルメガネにかけ替えて確かめると、図書館前までは五百九十円だった。
パン!
その時、どこからか銃声が聞こえた。
パン! パン!
さらに連続して響いた直後、通りを歩いていた人が数人倒れ、銃弾を受けた体から血が流れ出た。
悲鳴が交錯する中、三人の男女が路地から歩道に駆け出してきた。
そして、それを追うように隠密警察と赤新選組の隊員が飛び出してきて再び発砲すると、三人のうち二人が腕や足に銃弾を受けて転倒した。
残りの一人は、パニックになって逃げ惑う通行人の中にもぐり込んだ。
すると、今度は青新選組の隊員が現れて銃を放ったので、無関係の人たちが多数巻き込まれた。
ノボルはその非情な行為に胸が締めつけられる思いになりながらも、目では別のものを見ていた。
隠密警察、赤新選組、青新選組の男たちの胸には黒く光る球体が浮かび上がっており、ほどなくすると空へと漂って消えていった。
ノボルは白く光る球体も探したが、その近くには見当たらなかった。
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