第三十八話 見破られた偽装②
さらに、アルテミオンのとある場所の建物。
その一室に置かれている水槽と、中にいる一匹の大サソリ。
ヌラリと光る尻尾のトゲ。
その傍らに置かれているカゴには、怯えて縮こまっているリス。
一体のアンドロイドがそれを鷲掴みにすると、水槽に投げ入れる。
すると、あっという間に刺されて、数秒ほど痙攣したあとで動かなくなる。
「どうだ?」
セルメルトは、机の上の二つの端末からチラッと顔をあげて聞いた。
「強い者が勝ちます」
「その通りだ、大正解だ。だからお前を作ったのだ、ジェネラル。最強の戦闘マシーンであり、かつ、最高の指揮官として」
抑揚のない口調で答えたジェネラルを褒めるセルメルト。
将軍と名づけられたアンドロイドは、人相も体格も屈強さが全面に出ており、額にはサソリのマークが刻まれていた。
「お前の出番は近い、活躍を楽しみにしているぞ」
「お任せください、完璧に期待に応えてみせます」
その返答を聞いて満足げにうなずいたセルメルトだったが、再び端末に目を戻して両方の画面を見比べると険しい表情になった。
左側のほうには数ヶ月前の映像、右側にはついさっき送られてきたもの。
どちらも、ほとんど同じだった。
異なる点といえば、人々の服装や背景の様子程度だった。
さらには、また二台の端末に別の映像を表示させて照らし合わせてみたものの、やはり同様だった。
どう見ても、行き交う人たちと町並みを組み合わせているようにしか思えない。
「ふざけた真似を………」
と、その時、机の上の緊急ランプが点灯し、一台の端末に二匹のトンボのマークが表示された。
それそれに目の色が違う。
イエローとブラウン。
それは、黄色メガネと茶色メガネからのデータ受信を知らせる合図だった。
セルメルトは届いた画像を開くなり目をしかめた。
「やはりか………」
そして、すぐに机の上のモニター付き電話の受話器を取ると、そこに映ったスタッフに指示を出した。
「九恩の司令船に“リンリン”を送れ」
◇ ◇ ◇
町の外れにある宇宙船発着場。、
並んでいる五棟の長方形の格納庫の一つの屋根が垂直に持ち上がる。
その中からゆっくりと紫メガネが浮上してくるや、エンジンが点火し、宇宙空間に飛び去っていった。
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