第三十八話 見破られた偽装①
観測室から主任室に戻って以降、三玲はずっとネットで検索をしていた。
キーワードは宇宙からの飛来物だったが、隕石関連のことが検閲対象になっていることもあって見つかるものは極めて少なかった。
そうだとしても、諦めるわけにはいかない。
地球に届いているはずの品々は、ある意味では、九恩が命がけで送ってくれたものでもあるからだった。
何か手がかりを………。
そう思いつつ作業を続ける三玲だったが、ふとあることを思い出した。
会見前のミサコとトモキたちの会話だった。
すぐにテレビ局のホームページを検索した三玲は、表示された番号に電話をかけた。
が、聞こえてきたのは、機械的なアナウンスだった。
〈本日の受付は終了いたしました。ご用のある方は、明日、おかけ直しください………〉
三玲は仕方なく電話を切ると、再び検索を続けた。
◇ ◇ ◇
その頃、宇宙空間に浮かぶ司令船の中では、九恩が映像を評議会に転送し終えたところだった。
「今日の分のデータを送りましたので、確認をお願いします」
『分かった』
またもや、セルメルトのつっけんどんな対応。
さすがに九恩も気になり始めた。
だが、もしバレていたのだとしら、何か言ってくるはずだろう。
そうではないのなら、まだ大丈夫だということになる。
とりあえずはそう思うことにして、ラミアにも同じものを送信する。
「今日の分のデータを送りましたので、確認をお願いします………」
『ご苦労さまでした』
そう言われると、やはりかすかな後ろめたさを感じてしまう。
それでも画面からラミアが消えると、九恩は明日の分の映像データの加工に取りかかり始めた。
◇ ◇ ◇
司令船から八十万光年ほど離れたところにある銀河。
形は釣鐘型で、多くの惑星を擁している。
そのうちの一つ、アルテミオン。
地表には茫漠とした砂が広がり、緑はわずかしか生息していない。
が、とある一角には町並みがあり、住居、ビル、車、電車などが見て取れる。
ただ、町は中心地点を縦断する分厚い透明な仕切りで隔てられており、東側にはアンドロイド、西側には人間が暮らしていた。
両者はそれぞれに分かれて生活していたので、違いは明確だった。
淡々と個々の営みに従事しているアンドロイドたち。
その一方で、雑多な日常を繰り広げている人間たち。
しかも、東側は町の景観までもが単調だったのに対して、西側には特徴的なものが二つあった。
一つ目は、無数の巨大な人工物。
まず、サッカー場がゆうに二つ入るほどの大きな建物。
それはアンドロイド製造工場兼研究施設で、通称“ラボ”と呼ばれていた。
次に、町の外れにある数基の重粒子砲。
全基の砲口は、いつでも発射できるように宇宙空間に向けられている。
さらには、大型の宇宙船を収容できる幅広の格納庫が五棟と、発着場らしき広いスペースまでもがあった。
もう一つは、キノコを思わせる紫色の高層建造物で、まさに傘のような形の最上階部分が乗っていた。
そこが賢者評議会の象徴でもある“コスモタワー”で、入り口前に敷き詰められた大理石の上には釣鐘のマークが大きく描かれている。
そして各階には評議会議長、副議長、十人の評議員、それとアドバイザーの執務室があり、その中の一室でラミアが九恩から転送されてきた映像をじっくり見ていた。
地球は本当に生き物の揺りカゴだわ………。
ラミアは、改めてそう思うばかりだった。
だからこそ、探しているものが見つかるのではないかと信じたかった。
生命を生み出すためのヒントを。
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