神隠し13
馬車から階段を使用して降りる。
それは梯子でなく、シッカリとした階段だ。
階段用スペースが設けてあり、足場もシッカリした家屋用と同じ階段なんだぞ。
確かに移動し易いが、馬車には過ぎる代物では?っと思うのだが…小屋ほどのデカさを誇る馬車だから今更か?
そんな階段を降ると、地面と馬車の段差を埋める階段台が設置されており、そこを伝って下車したよ。
乗り込む時には感じなかったが…降りるには、ちと恐いぞ、この階段台…
地面へ降り立ち、ほっと一息。
そんな俺を出迎えたのは立派な衣装を纏った威厳ある御老人。
彼の後ろにも高貴な方々と思われる者達が控えていたよ。
なんぞ、これ?
あまりなことにビビってよる俺へ、威厳満載たる御老人が声を掛けて来た。
「ヨコソ、ヨク、コラレタ」っと。
日本語やん!?
「え、え~っと…、その…こちらこそ、お招きいただき恐縮です。
それで、あなたは?」
思わず告げてしまった訳だが、不躾だったか?
御老人が眉を顰めている、拙ったか!?
「ワレ、スコシ、ワカル。
ソナタ、ハナス、ハヤイ。
ワカラナイ」
え~っと…日本語は少ししか解らないから、俺の話しが速すぎて解らないと?
仕方ないから、もう一度ゆっくりとね。
いざ、テイク2。
「お招きいただき、ありがとうございます。
日本語が解る方が居られ驚いております」
ゆっくりと告げたら理解していただけたようでな。
「ウム、アラタメテ、ヨコソ。
ニホゴ、ジウリウ、カイキウ、シル、ヒツヨウネ」
え~…ジウリウ、カイキウ???
あっ、上流階級のことかな?
むぅ…なかなかに厄介やもしれんぞ、これ…
だが、カードとジェスチャーでのやり取りに比べれば雲泥の差だろうさ。
「なるほど、そうでしたか。
では、あなたが一番話すのが達者なので?」
そう尋ねると御老人が頭を横へと振る。
「ワレ、ゴウシ、ナレバ、アイサツ、シテオル。
ワレ、ナ、ガケロ・ザウント、ナル」
「あ、申し遅れました。
私は葵 和弘と申します」
思わずヘコヘコと御辞儀を、我ながら日本人だなぁ~
その後、後方に控えていた青年が前へで出て来て会釈した後に…
「私はアリン・ザウントと申します。
とうザウント郷の郷主一族に連なる者ですね。
分家の者ですが、郷主であるガケロお祖父様の孫に当たります。
当郷へご逗留の間は私が案内いたしますので」っと。
おおぅ、まともに日本語を話せる者がっ‼
「アリン、ゴウ、キテノ、テンサイ、アル。
タヨル、ヨイ」
ガケロ老人が自慢気にな。
いや、まさに自慢なのだろう。
しかし、話しが通じる相手が現れて助かるぜっ!
これは是非にとも、色々と教えて貰わねばなるまいな!




