表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔力最底辺の魔石研究者ですが、余裕あふれる完璧公爵様に実は溺愛されていました ~気づけば私から逆プロポーズ!?~  作者: 藤田さち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/35

26. 褒章授与式と、私の本当の望み



 丁寧に結い上げた髪には、銀色の髪飾り。


 首元までぴっちりと詰まったスタンドカラーのアメリカンスリーブ。紺色のドレスはクラシカルで品があるけれど、腕や肩はむき出しなのは頂けない。


(だけど流行りのデコルテを全部出すドレスよりはましね。そもそも似合わないから着ないけど。……主に胸元が)


 残念ながら強調する谷間がないので。


 スカートはパニエで膨らませず、ストンと足元で波打っている。


 宝飾品は指輪一つ。実はこれは所長からの借りものの魔石だ。私の身を守る守護魔法が刻まれている。もう攫われるなんて醜態はさらさないためだ。

 ……まあ、それはいい。


「サラ、すごいわ。別人みたいね」


 研究室に籠る、質素なドレスばかりのいつもの自分とは大違い。


「お嬢様がお美しいのですよ」

「はいはい、いつもそう言ってくれてありがとう」


 満更でもない気分で、鏡を前に一回転。

 うん、悪くない。


(褒章を貰うのだもの。少しくらい見栄えが良くないとね)


「ペンダントは、本当に服の下に隠してしまうのですか?」

「うん」


 我ながら、未練がましいなんてものじゃない。


 あれから三日、着けるかどうか散々迷った。今日になっても何度か着けたり外したりしてサラを困らせたけど。これをもらったときの喜びは、何があっても褪せないんだもの。


(それに、この夜会でつけて欲しいって言った)


 それを免罪符にするのもどうかと思うけど。

 でも、今日だけ。今日だけ着けて、あとは見ないから。


「結婚かあ……」

「け、結婚!?」


 げ、声に出てた。サラがすごい顔している。


「その、ペンダントをくださった方とですか!?」

「う、ううん、違うよ。……ほら、最近そういう手紙がよくきていたでしょ? ちょっと考えただけ」


 うーん、誤魔化し六十点くらい? サラが訝しんだ顔してる。

 

(好きな人からの求婚を断るなんて馬鹿だと言われるかしら)


 貴族なんて大方政略結婚なんだから、彼の考えを気にするだけ損なのかもしれない。

 ……「うん」って言ってたらどうなったんだろう。


 結婚願望なんてなかったはずなのに、今になって何度も何度もその先を考えてる。


(でも、あの人が幸せにならないなんて、それこそあり得ない)


 だけどほら、何度考えたって、私の結論は変わらない。だから、私は間違ってない。


「お嬢様は素敵ですよ」

「……ありがとう、サラ」


 そうだったらどんなによかったことか。



◆◆◆


 

 王宮の大広間。


 贅を尽くしたシャンデリアは、チカチカと眩い。着飾った貴族たちが各々談笑する傍ら、ぽつりと一人立つ。


 正直、賛辞が送られるのか、罵倒されるのか分からなすぎたので、両親の付き添いは断った。


(ただでさえ好きにさせてもらっているのに、無駄に心労は増やしたくないからね)


 ……とはいえ、視線を感じるな。


 褒章の影響力、すさまじい。


 ところで、美女がどうとか、すごく聞こえてくる。

 夜会は着飾って出席するもの。美人なんてそこここにいるのに、今日に限ってなんなんだ。


 まあ、私には関係無い。気にせず胸を張った。

 高位貴族に見下されてなるものかと、知識、マナー、ダンスは叩き込み済みだ。


 ま、常に壁の花の私には披露する機会もないけど。

 

 広間の正面には赤い絨毯が敷かれた階段があり、その先に豪華な衣装の椅子が三つ並ぶ。陛下、王妃陛下、王太子殿下が今日ご列席されるのだろう。


 バクン、と心音。

 きゅ、急に緊張してきた……。


「あ、ルシアン様とオフィーリア様よ。お美しい」


 階段のすぐ下に、注目が集まっている。


(本当にお似合いだな)

 

 オフィーリア様のプラチナブロンドは、シャンデリアの光を受けて、更に輝いている。 


 長いまつげに覆われた、紫色の高貴な瞳はぱちりと大きい。小柄な肢体は柔らかな曲線美を描いて、まさに美貌を体現している。しかも侯爵家の家紋付きだ。


(私とは正反対)


 ぼうっと眺めていると、オフィーリア様の後ろに控えたルシアン様とパチリと目が合った。


 ドキ、と高鳴る心臓をなんとかしたい。心と身体がちぐはぐで気持ち悪いったらありゃしない。


 ルシアン様はじっと私を眺めると、眉をギュッと寄せた。


 ああほら、今度は心臓がヒヤッとした。


(私は彼にとって、求婚を一蹴した失礼な女でしかないものね)


 その時、喧騒がピタリと止んだ。王族が入場したのだ。


「では、褒章授与の儀を始める。エマ・フォード子爵令嬢、前へ」


 顎を上げて、背筋を伸ばす。

 優雅に見えるように運んだ足が床を踏む度、こつり、こつり、とヒールの音が鳴る。


 学術会のときは、ただねっとりと値踏みするような視線が重たかった。

 けれど、今日は違う。驚愕、称賛、好奇心。

 少なくとも、プラスの感情が見える。


(陛下に認められただけで、変なの)


 陛下の前に悠然と跪いた。


「守護魔石の研究について、よくやってくれた。これまで未踏の分野を切り開く胆力、見事だ。その慧眼を高く評価しよう。これからの活躍を期待している」


「稚拙な身に過分なお言葉、痛み入ります。魔石が齎す新たな可能性を御身にご覧いれましょう。此度の名誉に恥じぬよう、精進いたします」


「うむ。面を上げよ」


 恭しく陛下を見る。赤いベルベットの盆に、金色のバッチがかがやいている。


 差し出されたそれを、震える手で取り上げた。

 ドレスの胸元へ着ける。ずしりと重い。これからも成果を上げなければならないという重責かしら。


 ――うん、思った通り、紺のドレスによく映える。

 

「報奨金と、望みを一つ叶えよう。申してみよ」


「王宮、王立図書館の禁書庫への入室許可を」


「まったく、無欲なことだ。恙無く叶えよう」


「ありがたき幸せに御座います」


 陛下に促されて立ち上がり、広間を見渡した。


「我が国に、また一人偉人が誕生した。今宵、盛大に祝おう。アンセリアに未来永劫、光あらんことを」

 

 陛下がそう締めくくると、広間が、わあっと湧いた。

 拍手が空気を揺らす。


 ――この光景を覚えていよう。


 魔力なしの私は、確かに存在している。


 心が震える。目の前がチカチカとまぶしくて、瞬きを繰り返した。


 階段を降りると、私を眩しげに見つめる青い瞳があった。


(本当に、呆れ果てるわ)


 私は、研究で認められたかったはずだ。



 ――なのにあなたには、私を見て欲しい、だなんて。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ