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5四、 心金の共有
「……殺せよ。負けたんだ。僕にはもう、何もない」
膝をつき、項垂れる兄弟。その姿は、かつてルミナスの床で絶望した主人公そのものだった。
主人公は、静かに刀を鞘に収めた。そして、懐から一本の、古びた火打ち石を取り出した。
「何もない。ああ、その通りだ。……だが、ここからが始まりだ」
主人公は、兄弟の肩に手を置いた。その手は、旅で汚れ、傷だらけだったが、驚くほど温かかった。
「おれの言うことだけ聞いていればいい……。あの言葉は、もう聞こえないだろう? これからは、お前が自分の槌音を聞く番だ。痛みはある。だが、その痛みが、お前を本物の『人間』にする」
兄弟の目から、初めて「人形」ではない、熱い涙が溢れ出した。それは、彼が親の操り人形から、一人の苦悩する若者へと戻った瞬間だった。
要塞の向こうから、朝日が昇り始める。
「知性」と「品性」を求めて旅立った若者は、今、その両方を「痛みという名の代償」を支払うことで手に入れた。
彼の手にある名もなき刀には、いつの間にか一つの、目に見えぬ銘が刻まれていた。
それは言葉ではない。
ただ、誰の支配も受けず、誰の痛みも拒まない、**「不滅の意志」**という名の、静かな輝きであった。




