5三、 全てを斬る一閃
激突の瞬間。
兄弟の美刀と、主人公の無名の刀が交差した。
キン、と、この世のものとは思えない美しい音が響く。
兄弟の剣は、硬く、鋭かった。しかし、主人公の剣には、亡き友・カイトの遺志、師匠の槌音、そして「自分を捨てた」という地獄のような痛みが、幾重にも折り返されて宿っていた。
「斬らせてもらう。お前を縛る親の影も、私を縛る過去の悔恨も。……そして、この偽りの秩序も!」
主人公の刀が、兄弟の剣を「受け止めた」まま、円を描くように滑った。
それは攻撃ではなく、包容に近い円運動。兄弟の放った破壊的なエネルギーをすべて自分の中に取り込み、倍にして返す、師匠直伝の「再鍛造」の打撃。
バキッ。
絶望的な破砕音が響いた。
親の寵愛の証であり、兄弟のアイデンティティであった名剣が、真ん中から無残に砕け散った。
兄弟は、折れた柄を握ったまま、呆然と立ち尽くした。
「……なぜだ。完璧なはずの僕の剣が……なぜ、そんなボロボロの、名もなき鉄屑に……」
「お前の剣は、折れることを知らなかった。だから、一度の衝撃で終わった。私の剣は、何度も折れ、そのたびに火に入れられ、叩き直されてきた。……折れるたびに、強くなったんだ」
主人公の刃は、兄弟の喉元で止まっていた。
だが、その刃が斬ったのは、兄弟の肉体ではなかった。
兄弟の背後に立ち、彼を操っていた「親という名の呪縛」の糸。
そして、都を支配していた「傲慢」という名の虚像。
そのすべてが、主人公の放った目に見えぬ「覚悟の風」によって、一気に霧散していった。




