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5二、 憤怒の再戦:重力の差
「死ね、過去の残像!」
兄弟が地を蹴った。その動きは速く、鋭い。アウグストから授けられた冷徹な剣技。最短距離で急所を貫く、無駄のない殺人の知性。
対する主人公は、抜刀さえもしない。
かつての彼なら、ここで怒りに任せて迎え撃ち、その「硬さ」ゆえに折れていただろう。だが、今の彼は知っている。力とは、発するものではなく、流すものだ。
兄弟の鋭い刺突が、主人公の喉元をかすめる。だが、主人公はわずかな体捌きでそれをかわし、逆に兄弟の懐へと踏み込んだ。
「遅い。お前の剣には、自分の『痛み』がない。ただ教えられた通りに振っているだけだ」
「黙れ! 僕は完璧だ! 僕は親父殿の期待に応え、この都の法となったんだ!」
兄弟の剣が、さらに激しさを増す。憤怒に駆られた一撃が、主人公の肩を裂く。血が飛ぶ。だが、主人公は眉一つ動かさない。
「その痛みさえ、お前は自分のものではないと思っているのか。……見ろ、これが私が旅で得た、唯一の『確からしさ』だ」
主人公が、ついに腰の刀を抜いた。
それは、光を反射しないほどに鈍い、黒銀の刀身。銘はない。だが、その刃が空気を切り裂く音は、まるで地鳴りのような重圧を伴っていた。




