5一、 凍てつく再会
第5章:断絶の白刃、慈悲の銘
かつて白亜の美を誇った都「ルミナス」は、今や「憤怒」と「強欲」が支配する鋼鉄の要塞へと変貌していた。その最上階、冷たい風が吹き抜ける回廊に、その男は立っていた。
主人公は、かつて親に与えられた名を捨て、ただの「浪人」としてそこに現れた。
背負っているのは、装飾一つない黒い鞘の刀。かつての彼が持っていた「華やかさ」は消え失せ、代わりに、数多の傷を糧に鍛え上げられた、巨岩のような圧倒的な静寂を纏っている。
「……誰だ。不法侵入者か。それとも死に場所を探しに来た犬か」
奥から現れたのは、白銀の甲冑に身を包んだ、完璧な美貌を持つ騎士――かつての弟であった。
弟の持つ刀は、親から授かったあの美刀をさらに研ぎ澄ませた、一点の曇りもない名剣だ。だが、その刃からは、生きた人間の温もりではなく、凍りついた「掟」の冷気だけが漂っていた。
「久しぶりだな。お前が『おれの言うことだけ聞いていればいい』と囁く影に、どれほど深く沈んだか、確かめに来た」
主人公の声は、かつての激情を失い、深く、重く響いた。
「……兄さんなのか? その無様な姿は何だ。名を捨て、泥にまみれ、親父殿の慈悲を泥足で踏みにじって……。今の君は、ただの『不純物』だ。僕がこの手で、我が家の、そして世界の秩序のために排除してやる」
兄弟の瞳には、かつての憧憬は微塵もなかった。あるのは、自分が「正しい」と信じ込むことでしか自我を保てない者の、絶望的な**「傲慢」**だった。




