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4三、 名を捨て、一振りの「個」へ
修行の終わり。
師匠は、主人公が集落から持ち出し、敵の手によって折られたあの「儀礼用の刀」の破片を、炉の火に投げ入れた。
「かつての自分を、その火で焼け。親に付けられた名、集落での地位、守ってきた虚栄。すべてを焼いて、ただの『鉄』になれ」
主人公は、火の中で溶けていく過去の象徴をじっと見つめていた。
自分が何者でもなくなる恐怖。それは、死よりも恐ろしい喪失だった。だが、すべてを失ったはずのその瞬間に、彼はかつてない「自由」を感じた。
「……私は、もう誰の息子でもない。誰の操り人形でもない。私は、私の意志でこの槌を振るう、ただの男だ」
彼は自ら、集落で呼ばれていた名を、その火の中に葬り去った。
もはや彼は、何者でもなかった。同時に、彼は何者にもなれる「白紙の鋼」となった。
師匠は、一振りの銘のない、真っ黒な鞘に収まった刀を差し出した。
「行け、名もなき浪人よ。その刀に銘をつけるのは、お前ではない。お前のこれからの『生き様』だ。すべてを斬ってこい。親の呪いも、過去の執着も、そして――迷いの中にいるお前の兄弟もな」




