3四、 運命の槌音
意識が朦朧とする中で、主人公は懐かしい声を聴いた。
「おれの言うことだけ聞いていればいいんだよ……」
父の声だ。逃れられない呪縛が、死の淵にいる彼を嘲笑いに来たのか。
だが、その声を掻き消すように、硬く、重く、規則正しい音が響き始めた。
――トン、トン、トン、トン。
彼が目を覚ましたのは、深い森の奥にある、煤けた小さな鍛冶小屋だった。
全身を包帯で巻かれ、身動き一つ取れない主人公の傍らで、一人の老人が黙々と鉄を打っていた。
「目が覚めたか、無名の野良犬よ」
老人は振り返りもせず、火花を散らしながら続けた。
「友を救えず、刀を折られ、怒りに身を任せて無様に敗れた気分はどうだ?」
主人公は、乾いた声で答えた。
「……死んだ方が、マシだった」
「ほう。ならば今ここで死ぬか? それとも、その『折れた心』を、もう一度火の中に入れて叩き直すか?」
老人は、かつて伝説の刀匠と呼ばれながら、ある「痛み」をきっかけに表舞台から姿を消した、本作の師匠であった。
外の世界の理不尽と、自分自身の醜い憤怒に打ちのめされた主人公の前に、ついに**「真の鍛錬」**の扉が開かれた。
その小屋の隅には、弟が持っているような華美な刀ではない、銘も装飾もない、ただただ鈍い光を放つ**「鋼の塊」**が置かれていた。




