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グレイ  作者: 家端独
第三章
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第四十三話 神話と考察

「クソッ!!なんだよもう!こんなんばっかり!」


 トーマは巨大なカニの群れに追われていた。

 原因は一時間前に腹が減ったために彼らの仲間を目の前で焼いて食ったことにある(と思う)。


 空腹状態であんな美味しそうな奴が歩いてたら食うだろ!

 実際美味かったし!


 しかし、彼らが怒るのも理解できないことはない。

 言葉は通じないとは思うが、仲間の味の感想など言われたときには怒髪天は間違いなし。

 俺とてイカれた野郎にアルヴィの味とか聞かされたら何するか分からないからな。


 だから、申し訳なさから彼らに反撃しないでいたのだ。

 それに今狩り尽くしたら今度食べられなくなるしな。

 ちなみに、狩ったカニの身のほとんどは『門』の中にしまってある。

 大きすぎて食べきれなかったから。


『門』で約1km先に飛んですぐまた『門』で約1km先へ飛ぶ。

これを繰り返してカニとの距離を稼ぎながら鉱山都市への距離を縮める。


 5分もするとカニの姿は見えなくなっていた。


「ふぅ…すまないなカニさんたち。また会いにいくからね」


 俺は北上を続けた。


ーーー


 正直、あんまり『門』は使いたくない。


 それは、『門』の力があまりに強力すぎて敵さんにバレたときに俺が一番に狙われる可能性が出てくるからだ。


 一瞬にして長距離移動を可能にし、今回のように大量の物資の補給も出来る。

 移動に関しては俺だけでなく、その他大勢も出来るのだ。

 スレイズ拠点からラトガトまでなら数百人は余裕だろう。

 ラトガトへの『門』を展開しながら、教会領までの『門』も開ける。


 移動という時間も物資も食う工程を飛ばせるこの力は異常にして異質。

 アリアやテレシアさんから言わせても、似た魔術を知らないという特異性。


 加えて、ダリル戦でクローディアが見せたダリルの動きを止めた謎の力。


 対象の動きを止めるのか、それとも……時間そのものを停止させるのか。


 俺の予想では、おそらく後者。

 時間と空間を操る竜の力が俺に宿ってる。


 そこまで思考して俺はふとこの世界に伝わる神話を思い出した。


ーーー



 それは遥か昔、何千年も昔の話だ。


 世界の中心にそびえ立つ世界樹が一つの精霊を選び出した。

 選ばれた精霊は神と呼ばれ、世界樹のためにこの世界を創造した。最初に大地、次に海、次に空気、次に森や山。


 そうして土台を造った神はそこに住まわせる生命体を創造した。

 それが人や動物だ。

 正しく人として成長する種がある中、魔力の濃い地域に住まわせられた種は魔化し、魔族や魔物となり正常種を襲い始めたのだ。


 人同士や異種族との争いにより世界は混沌と化した。

 そんな世界を正すために神は自身の持つ特性を分け与えた12体の竜を世界に放ち竜たちに秩序の守護者という役目を与えた。


 それより数千年、神は世界の裁定を下した。結果は再創造。地上の生物、環境をまっさらにして新たに創造し直すというものだった。


 それに抗うため最初に生み出された『力』の竜は他の竜たちと徒党を組もうとした。

 しかし、『力』以外の竜はそれを拒んだ。

 

 『力』の竜は他の竜たちを各個に襲撃し、竜の持つ特性を付き従っていた人間に与えた。


 こうしてすべての竜を倒した『力』の竜は、その力を有した11人の人間たちとともに神を新天地に封じた。


ーーー


 これがこの世界に伝わる神話のざっくりとした内容なのだが、俺は疑問を持った。


 まず、俺の能力の持ち主であった竜はなぜ倒されたのかだ。

 これほどの能力だ、俺みたいに大した攻撃力を有していなくとも他の竜たちに勝てなくとも負けることはないはずなのだ。

 さっきのカニのときみたいに瞬間移動を連続させれば逃げ切れる。

 殺されそうなときにそれをしない理由が分からない。


 次に、というかこれが一番疑問なのだが、竜種が12体というところだ。

 現在、記録があるのは『力』『炎』『水』『地』『風』『氷』『雷』『光』『闇』『自然』『毒』『死霊』の12体。

 

 では俺は?

 時と空間を操る俺の力の属性は?

 アリアは俺から竜の気配がすると言った。

 ダリルは俺の気配を知らないと言った。


 それに、オルグス帝国は『力』の竜を皇帝と仰いでいる。

 ユリウスに渡された徽章には頂点のドラゴンに捧げれる剣の本数は12本だった。

 これは十二家門を表しているとアリアは言ったが、知られている竜は12種。うち一種は皇帝である『力』の竜だ。

 皇帝が自身に剣を捧げるというものおかしな話だ。

 

 ではこの十二番目の家門はどこの家だ?


 おそらく、というより十中八九、十三番目の竜である俺、というより前の持ち主だったエルフの老人だろうな。

 俺と会ったときには、既にボロボロだった。

 何かをやらかして帝国にいられなくなったとかだろうか?

 

 それなら理解できる。


 いや、12種しか確認されていないのだからエルフさんは表に出てきていない。

 もしこの力が知られていたらダリルの反応はおかしいし、竜種は12ではなく13に訂正されるはず。


 もしかして、隠されし系統とか?


 そ、そうに違いない!

 

 隠されたってのが、こう、心をくすぐる。

 今はあまり深く考える必要もない。

 どうしても知りたければクローディアに聞けばいいのだ。

 この能力を使いこなせているんだし、きっとエルフさんよりも前の持ち主なんだろうし。


 ……何歳くらいなのだろうか。


『細かいことは知らなくていいからね』


 釘を差された。

 そうだった。こいつは俺の心の声が聞こえるんだった。


 まぁ、こういうのは知る機会があればでいいのだ。

 何せ、俺達の目的には深く関係しないのだから。


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