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好敵手を撃破する

 翌朝。戦闘の大幅な方針変更に合わせて、できれば装備をあらためて整えたいところではあったけど、所持金が0だからね。しょうがないね。ない袖は振れない。……とりあえず今日は街の外に出て、魔物をどうにかして狩って、レベルをたくさん上げるのが目標かな。そうしていればお金も貯まるだろう。肝心なのは、その魔物を狩る方法をどうするかだが……



 僕はホーンラビットという名の凶獣が自由きままに徘徊している草原の様子を、始まりの街の門から顔だけ出してそっとうかがった。まるで、サメ映画で言うところの背ビレの見えている海面みたい。あんな恐ろしい場所に、昨日は無防備に足を踏み入れたのか……無知ってこわい。少し油断すれば昨日と同じ状況になる可能性は高いので、注意しすぎるということはないはず。そうして門から顔だけ出している僕の横を、ぞろぞろと普通に門をくぐって草原に出ていくプレイヤー達。くそう、お前ら全員食い殺されろ。気にせず、顔だけ出したまま新しい戦闘作戦の要である、登りやすそうな木をきょろきょろ探す。……あった!草原の右の方には森が見えるけど、その手前にも何本か木が生えている。手頃な高さで、枝がいくつか。見た感じ500メートルくらいの距離だが、あそこまでたどり着けるかどうか。途中に魔物の姿はぱっと見見えないけど……でも、魔物がこちらに気づく、こちらに近づく、攻撃する、という3工程を踏む間にあれに登ればいいわけだよね。いけるんじゃない?……でも、昨日も、いけるんじゃない?で失敗したしなあ。うーん……






 思ったより簡単に木にはたどりつくことができた。というのも、プレイヤーが通った後を着いていけば安全だという当たり前なアイデアが、門のところで30分くらい悩んだ後に降りてきたからだ。消費時間的にも、着実に昨日よりは進歩している気がする。ありがとう、森を目指してたっぽい見知らぬパーティーの皆さん。攻略頑張ってください!もう2度と食い殺されろなんて言ったりしないよ。


 

 そして、僕はこっそり後をつけた彼らに一方的に別れを告げ、周りの安全を確認して、枝に足をかけ、木に登る。大きく張り出している枝に腰かけて、あたりを見渡すと思ったよりもずっと遠くまで見渡すことができた。遠くに街と森が同じくらいの距離に見える。高いところにいるせいか空気の流れがいっそう強く感じられるような気がして、僕は大きく深呼吸してみた。現実よりもだいぶ長い髪が風に吹かれてさらさらと流される。なかなかいい感じ。……さて。獲物はどこだろう。上から見るとまたちょっと様子が違ってわかりにくかったけど、目を凝らすと、草の間にウサギの耳がやっぱり見える。とりあえずそちらに向かって、僕は自分が木のそばに無防備に立っている、というイメージを送ってみた。しばらく続けると、ウサギが飛び跳ねながら木に向かってくるのが見え、そのまま幹にすごい勢いで激突する。……なんだか明確な殺意を感じる。上級魔族ってウサギに恨まれてるのかな。この木は意外に頑丈みたいで、あまり幹には傷もついていないのにウサギに入った衝撃はなかなからしく、角が折れていた。痛そう。そのまま自分が相手に見えていないイメージを送りながら、地面を転がっているウサギのところに枝を伝ってよいしょと降りていき、体重をかけてダガーを思いっきりウサギの首のあたりに突き刺した。昨日の1時間を返せ!その一撃でウサギがぱあっと光に変わる。……やった!そのまま急いで木に登り、元の枝のところに戻った。……これいける!さすが1200ゴールドもしただけあって、木に激突した後に首にダガーをぶっ刺すと少なくともウサギを一撃で倒すことができるようだった。……この戦もらった!






 その後、テンションが上がった僕は同じ方法でウサギを狩り続け、撃墜数が10を越えたところでレベルが上がる。やった!やった!勝ったな……ステータス確認!ここなら偽装する必要もないし、ゆっくり見よう。



〈ステータス〉

名前:サロナ(№38)

種族:魔族

レベル:2

ジョブ:スパイ(魔王軍)

攻撃力:12(2+10)

防御力:16(2+14)

すばやさ:5

魔力:3

運:1

HP:3

MP:4



 ……ん?うーん。すばやさが1上がってる。それはいい。それ以外は?どれか1つしか上がらないのなら、プレイヤーのステータスに追いつくのってけっこう大変だよね。というか無理なんじゃ……うーん、僕ってひょっとして大器晩成型なのかな。もう少し上げてみよう。


 


 ……そして、さらに3時間後。



〈ステータス〉

名前:サロナ(№38)

種族:魔族

レベル:4

ジョブ:スパイ(魔王軍)

攻撃力:12(2+10)

防御力:16(2+14)

すばやさ:7

魔力:4

運:1

HP:4

MP:4



 まあ……悪くは……ないかな?HPが1上がったのが大きい。1って言っても、ギガンテスとはぐれメタルでHP1の重みってだいぶ違うしね。あとはレベルが上がって認識阻害の距離の範囲と、かかるまでの時間がだいぶ短縮された気がする。最初は10メートルくらいまで近寄ってこないと駄目だったのに、今はその2倍くらいまでいけるし。時間も1分くらいだったのが30秒くらいでかけられるし。ステータスよりスキルの伸びがいいタイプなのかも。ちょっとやる気出てきた。……そして、その後もウサギ絶対殺すマンと化した僕は狩りを続ける。でもさすがに倒しても倒してもレベルが上がらなくなったな、と思ったその時だった。ピコン!とメッセージが出た。



「スキル『兎殺し』『初手必殺』を取得しました」



 スキル!なんか前者は内容に想像がつくけど……その通りなら、あって困らない。むしろ今の僕には一番必要なスキルだった。始まりの街を安全に出るため、という意味で。取得したスキルは説明が出るので、一応確認。


「スキル:兎殺し……兎の姿をした魔物に大ダメージを与える(取得条件:兎系の魔物を100匹連続で倒す)」


「スキル:初手必殺……最初の一撃が必ずクリティカルになる(取得条件:初回の戦闘から、100匹連続して一撃で魔物を倒す)」


 100匹いったんだ。そして、衝撃の事実が発覚した。昨日のホーンラビットとの1時間にわたる戦いは、システム的に戦闘とすらカウントされていなかったらしい。だって、そうじゃないと2個目のスキルが取れないし。……そうだったんだ……でも、これって取得条件厳しいよね。効果もいいし。結果が良かったからいいよね。いいよね!……いいんだ……でも、これなら。






 ……そして、僕は枝を伝って木から降り、草原に降り立つ。周りを見渡して、2つの耳が草の間から飛び出しているのを見つけ、静かにダガーを鞘から抜いた。姿を現したウサギがこちらを見ているのを感じて、僕も相手を見返す。昨日よりもだいぶ動きがはっきり見えるようになったウサギがこちらに飛び跳ねながら向かってきて、その一瞬後、僕が突いたダガーの直撃を受けたウサギは光に変わった。相手の突進で僕の手にも衝撃とダメージがあり、HPが4から3に減る。その手に受けた重みを、僕は忘れないようにしようと思った。ウサギはきっと永遠のライバルとして、僕の中に刻まれるだろう。

戦闘シーンを書くのが苦手かつ時間がかかるということが判明しました。これからどうしよう。ちょっと考えます。

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