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第3話 悪役令嬢ばりに「おーほほほほほ!」と高笑いとして

悪役令嬢ばりに「おーほほほほほ!」と高笑いとして、「さっさと行きなさい!」とアンの背中を叩いておくことも忘れない。


そうして、わたしは取り繕うように、粛々と頭を下げる。


「重ね重ね、ご温情、ありがとうございます」

「うむ!」

「いいのよ。後は頼むわね」


にまにま顔の二人に、けっ! と思うけど、表情には出さない。


「はい。それではあの愚か者を領地に連れ帰り、二度と御前には出さないようにいたしますので」


もう一度深々と頭を下げて、わたしはパーティ会場から堂々と出て行った。


出て行く際に、ちらと第二王子を見る。

……追いかけては来ないだろうな?

未だおろおろしている様子を見れば、大丈夫そう。

アレがスパダリ?

笑っちまいますわよ、けっ!


会場から出て、素早く廊下を歩く。

いっそ走りたいくらいだけど、そこは一応わたしも貴族。

優雅にしないといけない。


一応『原作』では、スパダリ第二王子が王太子と侯爵令嬢の不貞の事実をあきらかにするなどの応酬があって、それから国王陛下がご登場、王太子殿下と侯爵令嬢はざまぁされるという流れ。


でも、卒業パーティまで待てるか! ずっといじめられるのになんか耐えられるか! とだね。

王太子殿下と婚約してから少しずつ、そして貴族学院に入学してからな急激に。

アンの聖力が衰えているように演技をさせた。


ホントはアンは、今でもバリバリ聖なる力を持っているけど。

傷が治せないとかの演技とか。

誰かの命に関わるような場面では、ギリギリ助かる程度に聖力を使って、その後「頭が痛い……」とか唸って、気絶しなさいよとかね。

事細かく、指示を出した。

おかげで貴族学院に入学して、二か月も経たないうちに王太子殿下からの婚約破棄。

卒業パーティを待たずに適当なパーティで婚約破棄宣言!

ブラボー!

これで無駄に長くアンが苦しまないですんだ!

やったぜわたし!


「クリスティーナお嬢様……」


廊下を進んだ先には、震えているアンの姿があった。


「急ぐわよ、アン」

「はい!」


つったかつったか急ぎ足で、我が家の馬車へと乗り込む。


「急いで! 王都を抜けてオールステット男爵領まで急いで!」


王都にある卒業パーティ会場からオールステット男爵までは、馬車で十日。着替えや資金は既に馬車に積んである。

ちなみに資金は、お父様が伯爵家にアンを売ったときに貰った金貨。

この日のために、一枚も使わずにとっておいた。

準備は万端なのだ。


「あ、ありがとうございます、クリスティーナお嬢様……。やっぱりお嬢様の言う通りでした……」


そう。『原作』を知っているわたしが、スパダリの登場までかわいそうなドアマットヒロインを放置してるわけはない。


元々、お父様がオールステット男爵家にアンを連れてきたときから、救済計画は立てていた。


まず、アンの弟のエーリクをこっそり我が家に連れてきて、使用人として雇った。

弟が無事であれば、安心でもあるし、いざ何かあったときに、弟を盾に無茶なことをさせられるということもない。保護、大事!


念のため、エーリクには、髪の色をアンと同じ水色から染粉で黒に染めさせている。


それから、アンとエーリクには『原作』のストーリーをざっくりと話しておいた。

前世とか何とかドアマット物語が何とかとか言うと、わたしがオカシナ人みたいだから「神の啓示を受けたのよ」とか言い訳したけどね!


「あのね。王太子殿下の婚約者になったアンネローゼは、王太子殿下からは毛嫌いされて、侯爵令嬢からは、熱い紅茶をかけられたり、階段から突き落とされたりというものすごい嫌がらせを受けるけど。将来的には王太子から婚約破棄されて、で、それまで何も手助けしてこなかった第二王子に求婚される。そんな人生をたどる予定なのだけど、それでいい?」


アンは首をぶんぶんと横に振った。


「嫌ですー! 最終的に助けられようとなんだろうと、それまでがつらい!」

「うんうん、そうよね。で、神様は、聖女であるアンにそんな苦労はさせたくないって思ったようなの。だから、わたしにアンを助けて逃がしてやれって、啓示をくださったのよ!」

「か、かみさまー!」

「方法はね、婚約破棄までに、少しずつ、聖女の力が減ってきたように偽装するの。婚約破棄される時までに段々と、擦り傷や切り傷程度しか治せなくなりましたって。それで婚約破棄される予定の卒業パーティで、何とかしてわたしがアンを連れて帰るから!」


ちゃんといろいろ説明しておいた。


アンは、最初は半信半疑だったけど、わたしがちゃんとエーリクを保護していることに信用してくれたのか、わたしの言いつけ通りに、聖女の力が段々減ってきたように偽装していった。


「よく頑張ったわね、アン」

「クリスティーナお嬢様ああぁぁあああ!」

「男爵領ではエーリクがアンを待っているわよ!」

「うわああああああん!」

「再会後は即座に国外逃亡だからね! のんびり男爵領で過ごしていたら、王都に引きずり戻されるから!」

「お嬢様あああああ! 一生ついていきますぅううううう!」




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