第4話 そうして、わたしは
そうして、わたしは男爵家にアンを連れて帰り、エーリクと涙の再会をさせて。
アンの水色の髪の毛も、エーリクと同じように黒色に変えさせた。
そんでもって、わたしとエーリクとアンは、足がつかないように辻馬車を拾って、船着場に向かい、さっさと国外逃亡!
親戚の叔母様が、隣国に嫁いでいるから、そこに行って、使用人として働かせてもらう予定なのだ。
ちゃんと事前に承諾は取ってある!
準備は万端!
手抜かりはなし!
はっはっは!
どこからともなくやって来て、ヒロインを溺愛するスバダリモドキを除外してやったわ! ふっふっふ! ざまぁ!
あ、ざまぁと言えば。
長年のお父様の身勝手に、実は怒りを溜めていたお母様が、サクッとお父様と離縁。
離縁の前に、執事以外の使用人を全員解雇! メイドも調理人もいなくなった!
もちろんちゃんと働いてきた者たちには紹介状と次の職場をお世話しているよ!
家庭内を治める女主人もまともな使用人もいなくなったから、屋敷内荒れ放題。
わたしも逃げて後継者不在。
そのうち男爵家は潰れるんじゃないかな?
お父様、ざまぁ!
そのお母様が、ご実家で読み終わった新聞を、叔母様のところ……というか、わたし宛に送ってくれたんだけど……。
王太子殿下は、国王陛下の命令に背いて勝手に婚約破棄をしたとかで、王太子の位から降ろされたって書いてあったわ! 今は離宮で静養……隔離されている。そのうち病死とかにされそうな流れねえ……。
侯爵令嬢は元・王太子殿下と肉体関係もあったようなので、繰り上がって第二王子の婚約者とすることもなく、侯爵家で蟄居。
王太子共々病死となると、嘘くさくなる。
かといって、処女ではない侯爵令嬢にまともな嫁ぎ先はない。
どこかの後妻にでもなるのかしらねー……。まあ、いっか。
で、第二王子殿下が繰り上がって王太子になったんだけど……。
愛しのアンネローゼがいなくなって、泣いたってさ。
「オールステット男爵家からアンネローゼを連れてこさせてください、婚約者にします」
もう、アンネローゼは聖女の力なんかない平民になったという「事実」があったからね。
国王陛下は、アンネローゼと第二王子の再婚約は認めなかった。当然だよねー。
第二王子殿下には他国の王女を婚約者にするってさ!
まあ、一応他国の王女であれば、ある程度の高い教養はあるから、今から我が国の王妃教育を受けさせても間に合うだろうってコトらしいけど。
……第二王子は十六歳。
他国の王女だって同年代。
そんな年まで婚約者がいない王族って、よほどの無能王女か、国王がメイドに手を付けてうっかりできちゃった名前だけの王女とか、公にできない事情があるとかじゃないかなあ……。
だって、王族の婚姻って、十歳くらいまでに決まっちゃうのが、こっちの世界の普通。
生まれる前から決まっていることだってあるくらいだし。
打診したら、すぐ婚約を結べる王女って……、よっぽどの難あり?
まあ、別に。わたしたちはもう国を出たし。
元いた国がどうなろうと知ったこっちゃない。
ふふふふふーんと鼻歌を歌いながら、わたしはアンとエーリクを引き連れて、叔母のいる海の向こうに行くのです~♪
二人と一緒に船に乗り、船が出向して、甲板で海風に吹かれていたら。
「あの、お嬢様……」
と、アンとエーリクが何か聞きたげな顔をしている。
「なぁに?」
「お嬢様は、どうしてここまでしてあたしたちを助けてくれたのですか? 神様の啓示があったとしても……」
そうねえ。
二人を連れて、他国にまで逃げて。お金もねえ、お父様からもらった金貨、全部使ってしまう勢いよねえ……。
ドアマットヒロインを最初から助けずに、後から出てくる似非スパダリが大嫌い! っていう個人的感情からの行動ではあるんだけど……。
わたしはアンとエーリクを見る。
ハムスター的な可愛さを持つアン。そして、アンとそっくりの美少年であるエーリク。
「うーん、そうねえ……」
似非スパダリ大嫌い……もあるけれど。
他にも、ハムスターは可愛いね。ダブルでそろえると可愛さ二倍だね……とか。
わたしの岩盤のようなこの肩こりを、アンの聖力で癒してほしい……とか、いろいろあるけど。
なんて説明したらいいかなー……なんて、思いながら、空を見上げる。
良く晴れた空には雲一つない。
海を渡ってくる風は、潮をふくんだ匂いではあるけれど、気持ちがいい。
わたしはふっと笑って、有名な小説の一節を告げた。
「太陽がまぶしかったからよ!」
終り
カクヨム様のサポーター様へギフト御礼として書いた話に加筆修正をした小話です。
お読みいただきましてありがとうございました!




