第16話 借りた時間
王都へ駆けつけてから、すでに数時間が過ぎていた。
王都を覆う水の結界が、夜空の下で何度も揺れている。
北、西、南西。
セルディア軍は位置を変えながら、断続的に風刃を放ち続けていた。
淡い緑色の風刃が水の膜へ衝突するたび、王都の上空へ大量の水滴が舞い上がる。
月明かりを受けた水滴は、一瞬だけ星のように輝いた。
次の瞬間には、冷たい雨となって街へ降り注いだ。
「西側の結界が薄くなっている!」
「水術師を回せ!」
「負傷者を地下へ運べ!」
外壁の上を、兵士たちが慌ただしく走り回っている。
アルトは胸壁の隙間から、暗い西の空を見つめた。
風刃を放った者たちの姿は見えない。
攻撃を終えるたびに移動し、別の方向から再び聖剣の力を放っている。
王都へ近づきすぎることもない。
かといって、完全に離れることもない。
こちらが追撃へ出れば、別の部隊が手薄になった場所を狙うのだろう。
「厄介だな」
アルトはつぶやいた。
セルディア軍の狙いは、王都を一撃で破壊することではない。
結界を休ませないこと。
食料を入れないこと。
街道と橋を壊し、王都を外から切り離すこと。
そして、アクアレギアを使い続けさせることだ。
再び風が鳴った。
「来るぞ!」
アルトが声を上げる。
西の空に、細い緑色の光が生まれた。
最初は小さな点だった。
それが一瞬で横へ広がり、夜空を切り裂く巨大な刃へ変わる。
王都へ向かってくる。
外壁の上にいた兵士たちが身を伏せた。
アルトは無銘の剣を抜く。
左手首の契約印が淡く光った。
背後から、フィオナの力が流れ込んでくる。
「無理に受け止めないで!」
「分かってる」
「あなたの『分かってる』は信用できないのよ!」
フィオナの声を背中で聞きながら、アルトは剣へ風をまとわせた。
正面から止める力はない。
昨日も、風刃を消すことはできなかった。
だが、飛来する方向が見えている今なら、結界へ届く前にわずかに軌道を変えることはできる。
アルトは迫る風刃へ向かって剣を振った。
無銘の剣から放たれた細い風が、巨大な風刃の側面へぶつかる。
一瞬だけ、緑色の光が揺れた。
わずかに上へそれる。
直後。
王都の水の結界へ激突した。
轟音。
水の膜が大きくへこむ。
青白い光が夜空を埋めた。
外壁全体が揺れる。
アルトは足を踏ん張った。
右手から、わずかに感覚が消える。
握っているはずの剣が、一瞬だけ遠く感じられた。
「アルト!」
フィオナが駆け寄ってくる。
「平気だ」
「剣を下ろして」
「まだ次が――」
「下ろして」
強い声だった。
アルトは反論しようとしたが、隣からリナにも睨まれた。
「今度は私もフィオナの味方だから」
「いつも俺の味方ではない気がするな」
「無茶をしないときだけ味方する」
「条件が厳しい」
「普通だよ」
アルトは無銘の剣を下ろした。
外壁の上では、兵士たちが損傷した結界の確認を始めている。
幸い、風刃は街まで届いていない。
だが、水の膜は先ほどより薄くなっていた。
青い光の向こう。
王宮に近い高塔の上に、人影が見える。
セレスだった。
遠くて表情までは分からない。
それでも、アクアレギアを掲げた姿が前日よりも弱っていることは分かった。
剣を持つ腕が下がっている。
立っているだけで精いっぱいなのだろう。
それでも、結界を解こうとはしない。
アルトは無銘の剣を鞘へ戻した。
「今夜は、まだ続くな」
「ええ」
フィオナが答えた。
「向こうも、こちらを眠らせるつもりはないのでしょう」
「セレスも限界に近い」
リナが高塔を見る。
「でも、休んだら結界が消える」
「ああ」
アルトはうなずいた。
守るために、剣を使い続ける。
使い続けなければ、誰かが死ぬ。
だから、手放せなくなる。
フレイムベルグを握っていたグレンと同じだった。
理由は違う。
守ろうとしているものも違う。
それでも、聖剣がなければ国を守れないと思い込んでいることは変わらない。
その夜。
セルディア軍の攻撃は、空が白み始めるまで続いた。
◇
王都攻略作戦が始まって、四日目。
夜明けとともに風刃は止んだ。
だが、それは攻撃の終了ではなかった。
今度は王都の西にある監視塔から煙が上がった。
続いて、南西の伝令拠点も襲われたという報告が届く。
高速で移動するセルディアの部隊が、王都周辺の連絡網を一つずつ断っている。
どの街道が通れるのか。
どの橋が残っているのか。
どこへ兵を送ればよいのか。
王都側は、正確な情報を得られなくなり始めていた。
アルトたちは、崩れかけた古い倉庫で休んでいた。
王都の外壁近くにある、資材置き場として使われていた建物だ。
屋根の一部には穴が開いている。
割れた窓から、冷たい風が入り込んでいた。
追われている身である以上、王都の兵舎や治療所へ入ることはできない。
それでも今は、セレスの命令によって積極的に攻撃されることはなかった。
セルディア軍の攻撃が続いている間だけの、曖昧な休戦だった。
アルトは木箱へ背中を預けた。
目を閉じる。
眠るつもりはなかった。
少しだけ身体を休ませるつもりだった。
だが、次に目を開けたとき。
割れた窓から差し込む光は、すでに夕暮れの色へ変わっていた。
どれほど眠っていたのか分からない。
身体を起こそうとして、右腕へ力が入らないことに気づく。
何度か指を動かす。
少し遅れて、感覚が戻ってきた。
アルトは息を吐いた。
倉庫の中に、フィオナとリナの姿はない。
入口の外から、かすかな話し声が聞こえた。
「……今日こそ、話さないと」
リナの声だった。
アルトは立ち上がろうとして、動きを止めた。
「分かっているわ」
フィオナが答える。
「昨日、王都へ戻ったら話すって約束したでしょう」
「でも、戻った途端に攻撃が始まった」
「ええ」
「だからって、また後にするの?」
「そのつもりはないわ」
少しの沈黙。
外では風が吹いていた。
遠くから、壊れた監視塔の鐘が不規則に鳴る音が聞こえる。
「アルトは、きっとやめない」
フィオナが言った。
「話しても、三本目まで壊すって言う」
「それでも、知らないまま進ませるよりいい」
「分かっている」
「本当に?」
「分かっているわ!」
フィオナの声が強くなる。
リナが黙った。
やがて、フィオナが小さく続ける。
「分かっているから、言えなかったのよ」
アルトは倉庫の壁へ手をついた。
三本目。
その言葉が胸の中へ残った。
「二本目を壊したら、今よりもっと弱る」
リナの声。
「そうね」
「三本目を壊したら……消えるんでしょう?」
アルトの指が止まった。
遠くで、また鐘が鳴った。
一度。
それきり、音は続かなかった。
「……本当に、ほかの可能性はないの?」
「記録を調べた」
フィオナが答える。
「三本の聖剣との接続が、アルトの魂を現世へ固定している。フレイムベルグを壊したことで、そのうち一つが失われた」
「だから、味が分からなくなった」
「それだけではないわ。体温も、満腹感も、身体の一部も」
「アクアレギアを壊したら?」
「残る支柱は、エアリアルだけになる」
「それでも、しばらくは生きられる?」
「分からない」
フィオナの声が震えた。
「何日なのか。何か月なのか。次の瞬間なのか。それすら分からない」
アルトは壁から手を離した。
隠れて聞き続ける理由はない。
倉庫の入口へ向かう。
一歩進むたび、床板が小さく軋んだ。
外にいた二人が振り返る。
リナの顔が強張った。
フィオナは何も言わなかった。
「三本目を壊したら、俺は消えるのか?」
アルトは尋ねた。
リナが目を伏せる。
フィオナだけが、アルトを見つめていた。
「どこから聞いていたの?」
「俺が、きっとやめないという辺りからだ」
「そう」
フィオナは目を閉じた。
言葉を選んでいるようだった。
だが、どれほど待っても、事実が変わるわけではない。
「答えてくれ」
「……ええ」
フィオナが言った。
「三本の聖剣をすべて壊せば、あなたを現世へつなぎ止めるものがなくなる」
「契約印は?」
「身体を安定させる助けにはなっている。でも、魂を固定する支柱の代わりにはならない」
「無銘の剣は?」
「それも違うわ。あの剣は、精霊の力を借りるための器でしかない」
アルトは左手首を見た。
蔦のような翠色の契約印。
今も薄く光っている。
フィオナとつながっている証。
だが、それだけでは自分をこの世界へ残すことはできない。
「いつから知っていた?」
「フレイムベルグを壊した夜に、疑い始めた」
「それからずっと?」
「確証はなかった」
フィオナは答えた。
「だから調べていたの。聖剣との接続を、別のものへ移す方法を」
「見つかったのか?」
フィオナは首を振った。
「エレナの記録にもなかった。魂と共鳴するほど強い痕跡は、人工的には作れない」
「そうか」
アルトは短く答えた。
不思議と、驚きは大きくなかった。
フレイムベルグを壊した後から、身体が少しずつ失われていた。
味覚。
満腹感。
体温。
右手の感覚。
身体の輪郭。
何も代償がないとは思っていなかった。
ただ、その終わりが思っていたより明確だっただけだ。
「どうして、そんなに落ち着いていられるの?」
リナが言った。
「自分が消えるって言われたんだよ」
「まだ消えたわけじゃない」
「そういう話じゃない!」
リナの声が倉庫の壁へ響いた。
「私たちは、あなたを助ける方法を探してた。フィオナはずっと調べてた。それなのに――」
「リナ」
フィオナが止める。
だが、リナは口を閉じなかった。
「どうせ、聖剣を壊すって言うんでしょう?」
アルトはすぐには答えなかった。
リナの目に、怒りと恐怖が混じっている。
それはグレンへ向けていた怒りとは違う。
失うことを恐れている目だった。
「アルト」
フィオナが一歩近づく。
「聖剣を壊す必要はないわ」
「何?」
「ここで旅をやめて」
フィオナの左手首にある契約印が、わずかに光った。
「アクアレギアも、エアリアルも壊さなくていい。別の方法で戦争を止めればいい」
「別の方法とは?」
「これから探す」
「見つからなかったら?」
「見つけるわ」
「フィオナ」
「あなたをもう一度死なせるくらいなら、何年かかっても探す」
その声に迷いはなかった。
アルトは彼女を見つめた。
百年前。
自分が死ぬときにも、フィオナは同じ顔をしていた。
泣いていないふりをして。
どうにかして自分を引き止めようとしていた。
「ここでやめれば、俺はいつまで生きられる?」
アルトは尋ねた。
フィオナの表情が止まる。
「二本の接続が残っていれば、身体は保てるのか?」
「分からない」
「一年か?」
「分からない」
「十年?」
「分からないと言っているでしょう!」
フィオナが声を荒らげた。
契約印の光が揺れる。
「明日消えるかもしれない。何十年も残るかもしれない。そんなこと、誰にも分からない」
「それでも、聖剣を残せば可能性はある」
「ええ」
「俺が生きる可能性が」
「そうよ」
アルトは倉庫の外へ目を向けた。
夕暮れの王都。
水の結界は、今も空を覆っている。
その向こうに、淡い緑色の光が時折見える。
セルディア軍はまだ離れていない。
セレスは今夜もアクアレギアを使う。
王都を守るために。
その一方で、ガルディア方面では水を失った人々が倒れている。
二本目の聖剣を残せば、アルトは生きられるかもしれない。
だが、その間も水を奪われる者がいる。
三本目を残せば、セルディアは二代目勇者の名を掲げ、他国へ剣を向け続けるだろう。
百年前も、同じように考えた。
魔王のような脅威が再び現れるかもしれない。
そのとき、聖剣が必要になるかもしれない。
だから破壊せず、封印した。
あの判断が間違っていたとは思わない。
あのときは、それが最善だと信じていた。
だが、百年後。
三本の聖剣は、人間同士の戦争へ使われている。
今度は、自分が生きるために剣を残すのか。
また未来へ問題を押しつけるのか。
「戻ってきた理由があるとすれば」
アルトは言った。
「きっと、このためだ」
「勝手に理由を決めないで」
フィオナの声が、鋭く遮った。
「あなたが蘇ったのは、私が呼び戻したからよ。世界が選んだわけでも、運命が命じたわけでもない」
「フィオナ」
「聖剣を壊すために生き返ったなんて言わないで」
彼女の手が震えている。
「そんな理由のために、あなたを呼び戻したんじゃない」
「じゃあ、何のためだ?」
フィオナは答えなかった。
答えられなかったのではない。
言葉にできなかったのだろう。
アルトは小さく息を吐いた。
「そうだな」
左手首の契約印へ触れる。
わずかに温かい。
「戻ってきたことに、最初から理由なんてなかった」
「だったら――」
「だから、これは使命じゃない」
アルトはフィオナを見る。
「世界に命じられたわけでもない。勇者だからでもない」
次に、リナを見る。
「俺が選ぶんだ」
「何を?」
「三本の聖剣を壊す」
リナの顔が歪んだ。
「どうして!」
「残せば、また使われる」
「でも、壊したら消えるんだよ!」
「ああ」
「怖くないの?」
アルトは答えようとして、少し考えた。
怖くないと言えば嘘になる。
一度死んでいるから平気だというわけでもない。
百年前の死は、長い戦いの果てに訪れたものだった。
身体が弱り。
自分の時間が終わることを、少しずつ受け入れていった。
今回は違う。
剣を壊す瞬間を、自分で選ぶことになる。
「怖いと思う」
アルトは答えた。
リナが目を見開く。
「でも、怖くないふりをするつもりもない」
「なら、やめればいい」
「それでも、残す理由にはならない」
「あなたが生きる理由になる!」
リナの声が震えた。
アルトはすぐには答えられなかった。
自分が生きることを、誰かが望んでいる。
それを無視することが正しいとは思わない。
だが。
自分の命を理由に、他人へ犠牲を押しつけることもできない。
「俺が生きるために聖剣を残せば」
アルトは静かに言った。
「危険を知りながら、また未来の人間へ問題を押しつけることになる」
「百年前とは違うよ」
「理由は違う」
アルトは認めた。
「でも、聖剣を残した先で何が起きるか分からないまま、未来へ預けることは同じだ」
「それでも……」
「リナ」
アルトは彼女の言葉を遮らず、続ける。
「お前がそう言ってくれることは、うれしい」
リナが黙る。
「フィオナが助ける方法を探してくれたことも」
フィオナは顔をそらした。
「だから、二人が何も言わずに決めていいことじゃなかった」
「それは……」
「でも、俺も一人で決めていいことではないんだろうな」
アルトは無銘の剣へ目を落とした。
刀身には、フレイムベルグを壊したときにできた細い亀裂が残っている。
この剣も、いつまで保つか分からない。
自分と同じだった。
「だから、隠し事は終わりにしよう」
アルトは言った。
「身体に何か起きたら話す。無理に動くときも、できる限り先に伝える」
「できる限り?」
リナが睨む。
「全部伝える」
「本当に?」
「ああ」
「約束して」
「約束する」
リナはまだ納得していない顔だった。
それでも、わずかに肩の力を抜いた。
アルトはフィオナを見る。
「代わりの方法を探すなとは言わない」
「当然よ」
「見つかったなら使う」
「本当に?」
「ああ。消えたいわけじゃない」
フィオナの目がわずかに揺れた。
「生きられる方法があるなら、生きたい」
それも本心だった。
旅を続けることと、死を望むことは違う。
自分の命を惜しみながら。
それでも、選ばなければならないことがある。
「ただし」
アルトは続けた。
「方法が見つからないまま、聖剣を壊すときが来ても、俺は止まらない」
フィオナは何も言わなかった。
肯定もしない。
納得もしていない。
ただ、アルトから目をそらさなかった。
しばらくして。
「頑固ね」
小さく言った。
「百年前からな」
「知っているわ」
「フィオナも同じだろ」
「一緒にしないで」
「似てると思うけど」
「似てない」
リナが二人を交互に見る。
「似てるよ」
フィオナがリナを睨んだ。
「あなたはどちらの味方なの?」
「今は、どっちの味方でもない」
「それが正解かもしれないな」
「アルトは黙ってて」
「厳しいな」
わずかな沈黙の後。
リナが小さく息を吐いた。
張りつめていた空気が、少しだけ緩む。
その瞬間。
王都の西側から警鐘が鳴った。
一度。
二度。
続いて、別の方角からも鐘が鳴る。
休む時間は終わったらしい。
アルトは無銘の剣を取った。
「また攻撃?」
リナが外を見る。
「監視塔か、伝令拠点だろう」
アルトは答えた。
「結界への攻撃だけじゃない。王都の目と耳を奪うつもりだ」
フィオナがアルトの右手を見る。
「動くの?」
「ああ。ただ、右手にはまだ痺れが残っている」
アルトは指を開き、ゆっくりと握り直した。
「剣は振れる。でも、長くはもたない」
フィオナがアルトの右手を見つめる。
「さっきの約束は、守るつもりなのね」
「約束したからな」
「なら、私たちも行く」
リナが弓を背負った。
「一人で無茶をさせないために」
アルトは二人を見た。
一人で向かうとは、もう言えなかった。
「なら、一緒に来てくれ」
フィオナはため息をつく。
「最初から、そのつもりよ」
三人は倉庫を出た。
夕暮れの空。
王都の上では、アクアレギアの水の結界が揺れている。
その光は、一日目よりも明らかに弱くなっていた。
セレスも。
聖剣も。
限界へ近づいている。
アルトは水の流れへ意識を向けた。
王都を守る結界。
ガルディア方面への水源封鎖。
王都周辺に展開された、いくつもの防御水流。
複数の力が、同時にアクアレギアから伸びている。
その一つ一つが、剣の内部に蓄えられた精霊力を削っていた。
この状態は、長く続かない。
セレスが倒れる前に。
王都の結界が破られる前に。
アクアレギアを壊し、水を本来の流れへ戻さなければならない。
そのために必要な条件を、アルトは頭の中で組み立て始めた。
アクアレギアを失っても、王都を洪水へ沈めず。
せき止められた川を、本来の流れへ戻す方法。
今夜の戦況を見届けた後。
アルトは、セレスともう一度話すつもりだった。
それでも彼女が水を戻さないなら。
明日、アクアレギアを終わらせる。
残された時間が、どれほどなのかは分からない。
今の身体も。
アクアレギアも。
王都の結界も。
すべて、永遠には続かない。
アルトは左手首の契約印へ触れた。
そこには、フィオナの温かさが残っている。
自分が持っているのは、この世界へ一時的につなぎ止められた、借り物の時間。
与えられた使命ではない。
最初から決められた運命でもない。
だからこそ。
その使い道だけは、自分で選ぶ。
アルトは無銘の剣を握り直し、鳴り続ける警鐘の方角へ走り出した。




