第33話「僕と僕の中のもう一人」
第33話
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ガルド、リュシアンナ、エヴァンジェリナが跪いたまま、部屋の空気は張り詰めていた。
僕は丸テーブルの前に立ち、胸の奥に溜まった息をゆっくり吐き出す。
「……話しておきたいことがあるんだ」
ゴシファーが静かに頷き、シスモとゴモンも息を呑む。
胸ポケットのヴィオデスが顔を出す。
「余のことか?」
「……そうだよ」
僕は目を閉じ、静かに語り始めた。
「生まれたときから、僕の頭には“映像”が流れていた。夢みたいで、でも夢じゃない記憶。
5歳で歴史を学んで、それが“龍魔王ヴィオデス”の記憶だと気づいた」
リュシアンナが小さく息を呑む。
「7歳の夏、理由がわかった。
庭で空を見ていたら視界が真っ白になって……精神世界でヴィオデスと対面した」
エヴァンジェリナが震える声で呟く。
「精神世界で……龍魔王様と……」
「彼は“お前は余のものだ”と言った。
でも僕は拒んだ。“僕は僕のものだ”と。
その瞬間、胸の奥から光が溢れ、6枚の蒼い板が現れて……僕は彼を封印した」
ヴィオデスが肩をすくめる。
「余はたった7歳の子供に封じられたのだ」
「黙ってて」
「む」
「それからずっと、ヴィオデスは僕の中にいる。魂は融合しているけど、身体は僕が支配している。
記憶も断片的で、全部を知っているわけじゃない」
「余の記憶は深淵だ。覗くにはまだ早い」
「……そうかもしれないね」
「でも、僕は僕として生きたい。ヴィオデスがいても、僕は僕だ。
その上で……君と向き合っていく」
ゴシファーが一歩前に出る。
「マサヴェイ様。その意思こそ、我々が従うべき道です」
ガルドも深く頭を垂れた。
「殿下は“マサヴェイ様であり、ヴィオデス様”。どちらも我らの主」
リュシアンナとエヴァンジェリナも続く。
「殿下の意思に従います」
「どうか……私たちをお使いください」
シスモとゴモンも頷いた。
「マサヴェイ君、あたしもついていくわよ」
「私も……!」
胸の奥が熱くなる。
「……ありがとう」
ヴィオデスが静かに言う。
「ならば余も、お前の隣で見届けよう。お前が選ぶ未来を」
(僕は――僕として生きる。ヴィオデスと共に)
けれど、その奥に隠しきれない本音があった。
「……僕は争いごとが嫌いなんだ。
王家の後継者争いにも、魔族の戦いにも関わりたくない。
ただ静かに生きたいだけなんだ」
言葉にすると胸が少し軽くなるが、逃げられない現実が重くのしかかる。
「でも、きっと周りは僕を放っておかない。僕も、ヴィオデスも……巻き込まれるんだろう」
その瞬間、ゴシファーが膝をついた。
「周囲は必ず、あなた様を“力”として扱おうとするでしょう。
だからこそ――私が守ります」
ガルドも頭を垂れる。
「新魔王エゾモン、龍海将ブルイドン……彼らは必ず殿下を狙います。
殿下が戦わぬなら戦わせません。戦うなら、我らが先陣を切ります」
リュシアンナとエヴァンジェリナも深く頭を垂れた。
「殿下の平穏を守るためなら、どんな影にも潜ります」
「殿下に危害を加える者は、必ず排除します」
シスモとゴモンも真剣な眼差しで頷いた。
「マサヴェイ君……あたしも絶対に離れないから」
「大切なものは、私も守るよ」
胸が震えた。
こんなにも多くの人が、自分のためにここにいてくれる。
(……誰も死んでほしくない。誰一人、失いたくない。
僕は――この人たちを守りたい)
争いを望まないのは、自分が傷つきたくないからじゃない。
大切な仲間たちが傷つく未来を、絶対に見たくないからだ。
僕は静かに顔を上げた。
「……ありがとう。
僕は、みんなに守られるだけの存在にはなりたくない。
でも……みんながいてくれるなら、僕は前に進める。
誰も失わないために。僕自身の未来を選ぶために」
ゴシファーが深く頭を垂れる。
「その決意がある限り、私は何度でもあなた様の盾となります」
ガルドも続ける。
「殿下が守りたいと願う者たちを――今度は我らが守りましょう」
リュシアンナとエヴァンジェリナも胸に手を当てた。
「殿下の大切なものは、私たちの大切なものです」
その時、ヴィオデスが静かに言った。
「……マサヴェイ。
お前が守りたいと願う者たちを、余も守ろう。
お前が選ぶ未来を、余は否定せぬ。
お前が“生きたい”と願う道を――共に歩むだけだ」
その声は深く、どこか温かかった。
(僕は――僕として生きる。
この仲間たちと共に。
そして、ヴィオデスと共に)
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