第31話「封じられた魂と三つの角」
第31話
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グレた名門貴族の三男は、魔法の廃れた世界で、大魔導士の魔法の力をこっそり使い、世界を救う 第120話「封じられた魂と三つの角」
と合わせてお楽しみください。
その朝。
王都アイーズは、雲ひとつない快晴だった。
山々の雪が陽光を反射し、空気は澄みきっている。
「……今日は、どうなるんだろう」
思わず小さく呟いた。
胸の奥がざわつく。
ゴシファーが言っていた“昔の友”――その正体が気になって仕方がない。
そんな僕の背後から、落ち着いた声がした。
「マサヴェイ様、そろそろ参りましょう」
黒燕尾服のゴシファー。
その隣には、地味なメイド服のシスモ。
そして革靴をコツコツ鳴らしながら歩く、完璧な紳士の姿をしたオネエ口調のゴモン。
「……本当に行くの? 別に今日じゃなくても……」
「今日です」
ゴシファーは即答した。
逃げ道は完全に塞がれた。
「はいはい、マサヴェイ君は気にしなくていいのよ~」
ゴモンが扇子をパタパタさせながら笑う。
「アツレク君の監視なんて、あたしの革靴で軽くいなしてきたわよ~♡
ヒールじゃないから走りやすいのよねぇ」
「走るな」
ゴシファーが冷静に突っ込む。
「ふふっ……ゴモンさん、朝から元気ですね」
シスモがくすくす笑う。
僕はというと――胸ポケットにそっと触れた。
「……大丈夫だよな?」
黒く艶のある小さなトカゲが、ひょこっと顔を出す。
「コロロ」
ヴィオデスだ。
今日は“余計なことを言わないように”封印魔法をかけさせてもらったので、
今は「コロロ」しか喋れない。
(……これで、変なことを口走る心配はない)
僕は小さく息を吐いた。
「では、参りましょう」
ゴシファーの一言で、僕たちは王宮を出て湖畔へ向かった。
・・・・・・・・・・
湖畔に着いた瞬間、僕は思わず息を呑んだ。
湖面には、雪をかぶった山々と青空が映り込み、
上下の境界が分からなくなるほどの透明度だった。
「……綺麗だ」
「マサヴェイ様、足元にお気をつけください」
ゴシファーがそっと支えてくれる。
湖畔の風は冷たく、しかし心地よい。
その時――前方に3つの影が見えた。
ヴィオデスの記憶から、すぐに分かった。
ガルド・ホルヴァルガ・ヴァルノクス。
リュシアンナ・ネレアーク・ヴァルノクス。
エヴァンジェリナ・ノクティカーナ・ヴァルノクス。
――ヴァルノクスの中枢だ。
3人は膝をつき、頭を垂れていた。
そして、それぞれの角が朝日に照らされて輝いている。
ガルドの白銀色の角。
リュシアンナの淡い青色の角。
エヴァンジェリナの漆黒の角。
その3つの角が、まるで“探知機”のように僕へ向けられていた。
(魂の探知……か)
3人は必死に、僕の中の“魂”を探っている。
だが――
僕の胸の奥には、蒼く輝く透明のキューブが存在している。
その中に、ヴィオデスの魂は封じられていた。
(……簡単には気づかれない)
僕は静かに立っていた。
胸ポケットのヴィオデスが、じっと3人を見つめている。
・・・・・・・・・・
最初に反応したのは、ガルドだった。
白銀の角が、わずかに震える。
「……っ……!」
ガルドの目が見開かれた。
「……微かだが……確かに……
“龍魔王様の魂”の波動……!」
「えっ……? わ、私は……何も……」
リュシアンナが眉をひそめる。
「私も……感じ取れませんでした……」
エヴァンジェリナも首をかしげた。
ガルドは深く息を吸い、ゆっくりと立ち上がる。
「……確かに、微弱だ。
だが――間違いなく“そこ”にある」
ガルドの視線は、僕の胸元へ向けられていた。
その瞬間――
胸ポケットのヴィオデスが「コロッ」と鳴いた。
「……そ、そのトカゲは……?」
「マサヴェイ様の使い魔です」
ゴシファーが淡々と答える。
ガルドは慎重に問いかけた。
「……あなたは……
ヴィオデス様の……?」
ヴィオデスが、ゆっくりと頷く。
「コロロ」
ガルドは一歩後ずさり、
次の瞬間――膝をついた。
「……っ……!
このような形で……お目にかかれるとは……!」
リュシアンナとエヴァンジェリナも慌てて跪く。
「ま、まさか……!」
「魂の“分身”……!」
ゴモンは扇子をパタパタさせながら目を輝かせた。
「やぁん……可愛い姿しちゃってるけど……♡
でも中身はヴィオデス様なのねぇ……!」
シスモも頬に手を当てる。
「マサヴェイ君の胸ポケットから出てくる姿は……
なんて可愛いの……!」
ゴシファーは静かに微笑んだ。
(……僕の封印は完璧。
感じ取れたのは、ガルドだけ……か)
・・・・・・・・・・
ガルドたちは深く頭を垂れたまま動かない。
湖畔には風の音と、水面の揺れる微かな音だけが響いている。
僕は静かに息を吐いた。
(……これで、ヴィオデスの魂を正しく感じ取れたのは
ゴシファーとガルドの2人、ということか)
胸ポケットのヴィオデスが、
「コロロ」と小さく鳴いて僕を見上げる。
(……そろそろ、ちゃんと向き合わないとな)
湖面に映る自分の姿は、
どこか覚悟を決めたように見えた。
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