第29話「王都散歩」
第29話
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翌朝。
王宮の僕の部屋には、いつものようにシスモがいた。
「今日は何するの~?」
「そうだな~今日は……散歩でもしようかなって」
「散歩! いいじゃない~! あたしも行くわよ!」
シスモは朝から元気いっぱいだ。
まあ、いつものことだ。
「でも、アユナはどうするんだろう……」
「アユナちゃんなら、もう王宮の門のところで待ってるわよ~?」
「えっ、もう?」
「昨日、“明日ご一緒してもいいですか?”って言ってたじゃない~。
マサヴェイ君と歩けるって分かったら、そりゃ早起きするわよ~」
「……そうなの?」
シスモはにやにや笑っている。
なんだか胸がくすぐったい。
「じゃあ、行こうか」
「は~い! アユナちゃん待たせちゃダメよ~!」
僕とシスモは王宮の正門へ向かった。
すると――
「マサヴェイ王子! おはようございます!」
アユナが、少し息を弾ませながら駆け寄ってきた。
深い青のワンピースが朝の光に映えて、とても綺麗だ。
「おはよう、アユナ。待たせた?」
「い、いえ! 私も今来たところです!」
「嘘よ~。さっきから門の前でそわそわしてたじゃない~」
「シ、シスモさん!? 言わなくていいですからっ!」
アユナは真っ赤になって抗議する。
シスモは楽しそうに笑っている。
「じゃあ、行こうか」
「はいっ!」
「行くわよ~!」
こうして、僕たち3人の散歩が始まった。
・・・・・・・・・・
王宮を出て大通りに出ると、
すぐにアユナとシスモのテンションが跳ね上がった。
「わぁ……! やっぱりアイーズって綺麗……!」
アユナが目を輝かせる。
「見て見てマサヴェイ君! あの屋根、赤いわよ!
全部赤いわよ! 可愛い~!」
シスモはすでに観光客モード全開だ。
「シスモ、落ち着けって……」
「無理よ~! だって可愛いんだもの!」
そんな2人を横目に、僕はふと背後に視線を向けた。
……ついてきている。
黒い外套の男、
灰色のフードの女、
そして妙に軽い足取りの青年。
3人の影が、一定の距離を保って僕たちを追ってくる。
ただ、敵意はない。
(監視……だよな)
「マサヴェイ王子、どうかしました?」
「いや、なんでもないよ。続けよう」
・・・・・・・・・・
「わぁっ! 見てください、あのパン……丸いです!」
アユナがパン屋のショーケースに張りつく。
「丸いパンくらい昔からあったでしょ……」
「でも……この丸さは違います! ほら、ふわふわしてて……!」
アユナは真剣な顔でパンを見つめている。
「アユナちゃん、買っちゃう? 買っちゃう?」
シスモが肘でつつく。
「えっ……い、いいんですか……?」
「もちろんよ~! 殿下のおごりで!」
「ちょっと待て、こういうときだけ殿下って……」
気づけば2人はパンを選び始めていた。
「これください!」
「わたしはこのクリームのやつ~!」
店員さんは笑顔で袋に詰めてくれる。
「マサヴェイ王子、ありがとうございます!」
「ありがと~マサヴェイ殿下!」
「……まあ、いいけど」
2人は宝物を手にした子どものように嬉しそうだった。
・・・・・・・・・・
次に二人が反応したのは、服屋だった。
「見てください! あのワンピース……可愛い……!」
アユナが目を輝かせる。
「ちょっとちょっと! あのフリル見てよ!
あたしに似合うと思わない!?」
シスモが僕の袖を引っ張る。
「いや、僕に聞かれても……」
「似合うって言いなさいよ~!」
「はいはい、似合うよ」
「やった~!」
シスモはスキップしながら店の前をぐるぐる回る。
アユナはというと、
ワンピースを見つめながら頬を赤くしていた。
「……着てみたいな……」
「試着してみれば?」
「えっ……マ、マサヴェイ王子の前で……?」
「いや、別に僕は外で待ってるけど……」
「そ、そうですよね……! そうですよね……!」
アユナは慌てて手を振った。
その様子を見て、シスモがにやにやしている。
「アユナちゃん、可愛い~。
ねぇマサヴェイ君、アユナちゃんのことどう思ってるの?」
「ちょっ……シスモさん!?」
アユナが真っ赤になって飛び跳ねる。
「いや、どうって……普通に仲間だよ」
「ふぅん……?」
シスモは意味深に笑った。
(……なんだその顔は)
・・・・・・・・・・
街の中心部に近づくと、
大きな噴水が見えてきた。
水が陽光を受けてきらめき、
子どもたちがその周りを走り回っている。
「綺麗……」
アユナが目を細める。
「ほんとね~。
あたし、こういう場所好きだわ~」
シスモは噴水の縁に腰を下ろし、足をぱたぱた揺らす。
「マサヴェイ王子、アイーズって……いい街ですね」
「うん。僕も好きだよ」
その時――
「マサヴェイ君~! 見て! 蜂蜜タルトよ!」
シスモが指をさす。
「えっ……ほんとだ……!」
アユナの目が輝く。
「……買うの?」
「買います!」
「買うわよ~!」
即答だった。
結局、3人で蜂蜜タルトを買って噴水のそばで食べることにした。
「……うまい」
「……美味しい……!」
「……文明の味がするわ~!」
3人で笑い合う。
背後には3つの影。
敵意はない。
ただ、一定の距離を保ちながらついてくる。
(……まあ、いいか)
気にしないでおこう。
アユナとシスモの笑顔を見ていると、
そんな気持ちになった。
アイーズの空は青く澄み、
街は穏やかに賑わっていた。
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