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異世界先生 ~転生して塾を開いたら、世界を変えてしまう!?~  作者: きりたちのぼる


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【ep.9_2】立ち回る先生 3.呆気にとられる

 当初は数の差を感じさせない三人だったが、殺さずの戦い方には徐々に綻びが生じた。


 すでに二十人以上は一人で無力化しているアルにはまだ余裕を感じられたが、長谷川とレグはそうはいかない。


 地形を生かして巧みに応戦するが、相手も言わば正規兵で、二人でどうにか十人程度を排除した程度だった。

 その時――


「グゥアッ!」


 ロビンがかく乱している方向から悲鳴のような唸り声が聞こえた。

 そちらに目をやると、いつの間にかロビン周辺の歩兵たちが長槍や盾を構えており、その一部がロビンに命中したようだった。


 やったぞ! と敵方から小さな歓声も上がっていた。


「ロビンッ!」


「ヴァゥゥッ!」

 長谷川が叫ぶと、ロビンはすぐに応えて飛び跳ねた。

 しかし着地した瞬間、僅かに後ろ足を崩した。


 それでもロビンは大きく咆哮して敵を威嚇し、場の注目を集めた。


(くそっ! 足をやられたのか!)


 そう思った瞬間、ロビンの足元に小さな黒い塊が転がり込んできて、ピタリと止まった。ロッキーだった。


「ロッキー! 駄目だ! 止まるな!」

 ロッキーは全く反応せず、小さな牙を剥き出し唸っていた。


――ヴゥゥゥ……グゥゥ……


 最初は微かに聞こえたロッキーの唸り声は、やがて地響きのように大きくなり、

「グゥゥゥ……グルルゥ…………」


 そして突如淡い光りに包まれる――


(ロッキー! お前もしかして……!)


「ヴァァウッ!」

 フラッシュのような閃光を放った瞬間、付近にいた兵士たちが目を塞いだ。

 そして――


「うわぁ! バ、バケモノだっ!」

 誰かが叫んだ。


 彼らがまぶたを開いた瞬間目にしたのは、大きさこそロビンに劣るものの、三つ首の猛獣の威容だった。


 それぞれの首が獰猛な牙を剥き出し、それぞれが激しく唸りながら、それぞれの視線で周囲を威圧していた。


(ケ、ケルベロスだ……!)


 その場の敵兵全員がその異形に目を奪われた。

 もちろん長谷川も呆気にとられていた。


 敵兵は口々にバケモノだ魔物だと叫びおののき、広いスペースに展開していた後続の歩兵たちを中心に混乱した。


 さらに――


 三つ首の真ん中の口から何やら煙のような吐息が漏れ出し始めた。

 まさかと思った長谷川は、再びロッキーを呼んだが遅かった。


 クゴォォォォ


 直後、火炎放射のような豪炎が一直線上に勢いよく吐き出された。

 するとその線上にいた十人ほどの兵士の服や頭に一気に炎が乗り移った。


 幸い距離もあり、前方の何名かが盾を構えていたお陰か、そのまま丸焦げなんてことにはならなかった。

 しかし突然の出来事に、火を纏って逃げ惑う者、それを消そうとするものなど場にパニックが起きていた。


 ロッキーはロビンとは違う腹に響くような咆哮を上げ、次に狙いを定め始めた。

 だがその時何故かロビンがロッキーの尻尾を噛んだ。


「ギャンッ!」

 それで冷静になったのかロッキーの三つ首が同時にフシューと唸り、間をおいてから二本目の炎を吐きだした。


「だめだ! ロッキー!」

 再び反応は無かった。


 しかし心なしか先ほどの火炎よりも勢いが無いように見えた。それでも再び数人を燃やし、追い返した。

 ある者はそのまま海に飛び込んだ。


(そうか! ロビンのやつ、“殺さず”を伝えて!)


 恐らく進化したロッキーは、まだ己の力に馴染んでない上に、ロビンに怒られてどうにか力をセーブしたんだと長谷川は考えた。


 その後は魔物のような二匹に翻弄されながら、ジワジワ数を減らしていた敵兵だったが、まだ数には分があった。


 その上素人ではない敵兵にも、二匹の攻撃が致命傷を与えてこないことに気付いたのか、次第に立て直し始めた。


(流石は異世界……いや、兵士だからか? あんな姿を見ても受け入れが速い……!)


 ロッキーが何本目かの火柱を吐くが、炎の勢いが弱く、盾を装備した兵士達が前に出て、かろうじて防がれた。

 いつもならもっと機敏で力強いロビンも、“殺さず”の指示を守っているせいで、本来の動きができないでいた。


 敵はその僅かな変化を見逃さず、再び槍兵によってロビンとロッキーは動きを制限され始めた。



 そして――


 ワァァァアアァァ――


 町の中心部の方から押し寄せる新たな喚声が聞こえてきた。

 恐らく敵の援軍だった。


「まじかよっ!?」


 長谷川は正面の敵と対峙していたが、一人や二人とは思えないその音に反応した。


 ここまでレグとどうにか連携してきたが、いよいよ二人の息も上がり始めていた。 


 頼みのアルは、気が付けば敵騎士団長と剣を交えていた。

 口ぶりからして小物感のあったそいつは、剣の腕は確かの様で、流石のアルでも手加減したままでは手こずっているように見えた。


 幸いなのはその打ち合いの激しさに、周りの兵士の突入が散漫になっており、それに救われている形だった。


 気が付けば最初の敵は半数以下に見えたが、遠くから迫る援軍に目を向けると長谷川はいよいよ焦りを覚えた。


(このままでは数に押される……。かくなる上は“殺さず”を……)


剣を振りながら逡巡した。

同じことを考えているのか、レグの表情も強張っていた。

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