表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界先生 ~転生して塾を開いたら、世界を変えてしまう!?~  作者: きりたちのぼる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/50

【ep.9-1】認める先生 4.生徒が対峙する-1

「よい、下がれ」


 王と思しき男がそう発すると、赤い絨毯の両脇に立っていた男たちは、足並みを揃え、一歩後ろに下がって控えた。


 そのまま、先ほどまで案内をしていた男性に付き従って、王の目前、十メートルあたりにまで近づいた。


 男性がこちらで、と告げると脇に退いた。

 そして突然レグが跪くので、慌てて長谷川も合わせて跪き、見様見真似で頭を垂れた。


「我はレオナート・ミラージュ、この国の王だ」


(やはりそうか……でもここは港町じゃなかったのか!?)


 あの風貌や態度に予想はしていたが、本当に名乗られると一気に緊張感が増した。

 同時に何故隣国にまで来る必要があったのかと、その疑問を強くした。



「公式の場でない、そうあまり畏まるな。面も上げよ」


 男性特有の中低音だが、見た目の若々しさも現れた美声が響いた。


「では失礼いたします」


 レグは緊張を隠し、スクっと立ち上がった。

 左後方で長谷川が顔を上げたのが見えた。


「ふむ。やはりたまには市井に興味を持つものだ。こんな珍客の来訪を楽しめるなら、渋々認めたこの宮殿の建設も無駄ではなかったな」


 王はどこか楽しんでいるように言った。


「で、用件は聞いている。貴公が我が国に相応の利益となる情報をもたらすのだとか」


「はい、恐れながら。聡明なレオナート王におかれましては、我が国が現在、改革派と保守派で争っていることをご存じだと承知しております」


 レグは怯まず堂々と繕った。

 しかし相手への敬意を忘れずに切り出した。


「……。法と秩序を重んじる貴国なら、そういったこともあるだろう」


「ご推察の通りです。我が国のセルヴィウス王は国の繁栄を願い、その法と秩序も必要に応じた変革を望んでおります。それに対し、保守派の一部の貴族たちは自らの利権を守るため、その変化を良しとしておりません」


「伝統ある貴国ゆえ、そのような考えをするものも、当然おろう」


 余裕のないレグに対して、レオナート王は軽くいなすように答えた。


「仰る通りです。しかし我が国の王は国の未来を、民を見ておりますが、保守派の貴族たちは自らの財と権力しか見ておりません。そんな彼らが見過ごされれば我が国はもちろん、レオナート王にとっても不利益だと考えております」


「ほう。どうして言い切れる。仮にセルヴィウス王がその貴族どもを排したとして、貴国が発展するのは分かる。しかしそれは隣国である我がアウレリオンにとって、当然脅威になるのではないか?」


(よし、食いついた!)

 自分のことばに初めてレオナート王が興味を示したと感じた。


「確かにヴァレリアは前進できます。しかし先ほど申し上げたように、セルヴィウス王は民を見ています。仮に国力が高まったとして、その力は隣国の脅威となる軍事ばかりに注がれるでしょうか。争いはむしろ、民はもちろん国の未来にとっても有益にあらず……」


 レグは続ける。

 レオナート王は彼を見定めるようにじっと見つめている。


「故に、高まった国力は経済や民の幸福へと向けられること、必定と言えます」

「…………」


 王は少し沈黙して、静かに口を開いた。

「……なかなかにほざく。ではその国力とはなんだ」


(今だ!)

 レグの目に力が入った。


 半身を逸らし、汗ばんだ手のひらを揃えて後ろを指し示した。


「彼です! 彼がそれを成し遂げます」


 少し後ろで跪いていた長谷川と目が合ったが、彼はきょとんとしていた。


「……ほう、何者だ」


 レグはこれまでで一番力を込めて答えた。

「彼はハセカー、ハセカー先生です!」


 レオナート王は眉を上げた。


「先生……彼の村の……確か“塾”とかいう」


 そう言われて視点が定まった長谷川は、レグと王を交互に見た。


「さすがレオナート王、ご見識に感服致します。はい、彼がその塾の教室長、ハセカーです。彼の教室で育った生徒たちが、やがて国を支える人材となります。即ち、国力とは人であり、その人を育てるのが“教育”です! 彼はそのことに卓越しているのです!」


「なるほど。貴公もその教え子の一人と言うわけか」

 レグは力強く頷き、その右手を左胸に添えて畏まった。


「“レグナス”殿よ、そなたはまだしも、そなたのような大鳳のヒナが今どれほど貴国にいようか。仮に育つのを待つとして、それでは我が国の富はいつもたらされる」


「わかりません」

 即答したレグに王はニヤリとした。


 一方で“レグナス”と聞いた長谷川は戸惑った。


「しかしレオナート王よ、人はすぐに成長します。そして彼、ハセカーには原石を磨き上げる魔法の力がございます。五年もあれば成長を助け、十年すれば私程度は掃いて捨てるほど現れるでしょう。そうして成長した彼らは様々な方面で力を発揮します。例えば……陛下の好まれる文化においても、やがて大きな刺激をもたらす者も現れることでしょう」


 レグがそう言うと、アルが後ろから何やら手渡した。

 彼はそれを受け取り、先ほどの使用人の男性を通じてレオナート王に差し出す。


 王が少しだけ飾られた袋の中から、チェスの盤と駒を取り出した。

 長谷川は「ここで!?」と、そんな驚きの表情だった。


「これは……」

 王の表情はおもちゃを手にした子供のようで、レグの顔も見ずに尋ねてきた。


「そちらはチェスと申します。それもハセカーがもたらした遊戯盤にございます」


「ほう……遊戯盤とな」

 綻んでいた王の表情はすぐに戻った。

 その反応にレグは少し不安を覚えた。


「……レグナス殿、ならば我とこのチェスとやらを遊んで貰えまいか」


 レグの不安は的中した。

 レグナスは口角を吊り上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ