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異世界先生 ~転生して塾を開いたら、世界を変えてしまう!?~  作者: きりたちのぼる


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【ep.9-1】認める先生 3.生徒と異国に立つ

 その町はヴァレリアの港、ガルドリアとは全く違う景色だった。


 船着き場が石造りなのは同じだが、広さは両端が確認できないほどで、恐らく軍艦であろう、紋章を掲げた大きな船から、商船や漁船のようなものまで含めれば、それこそガルドリアの優に倍は停泊していた。


 もちろん海上で行き来する船もあり、まさに貿易都市の賑やかさを醸し出していた。


 そして何より印象深いのは、ほとんどの建物が乳白色の壁に、オレンジに近い濃淡鮮やかな茶色の瓦を乗せ、群立していたのだ。


「あれ……全部石造りなのか?」

 長谷川は感嘆していた。


「そうです。ヴァレリアでは石造りなんて城や城塞、王都ならまだしも、通常の町ではここまで普及していません。悔しいですが、これも経済や文化に力を入れているからでしょう……」


 長谷川より先に船着き場に降りていたレグは、本当に悔しそうに言った。

 そのまま彼は訪れたことがあると言わんばかりに、迷いなく石畳の道を進んだ。


 少し歩くと奥にはひときわ立派で大きな宮殿のような建物が見えた。


 その手前には商館なのか、通りに並ぶ店々と同じような雰囲気だが、存在感のある館も見えた。


「まずはあの館を目指します!」


 レグは再び先導するように早足で歩きだした。

 長谷川はいよいよ目的地到着を前に緊張していた。


 普段ならば間違いなく目に留める町並みや人々の様子、店に並ぶ品々などには目もくれず、往来の激しい通りではぐれないようとにと、とにかくレグを追った。




 館の中に入るとどことなく見覚えのある男が恭しく一行を迎えた。


 するとレグは商人に近づき、何やら話始めたが、それをすぐに終えた。

 商人は近くに控えていた男に耳打ちすると、その男は素早く館を出て行った。


「では我々も急ぎましょう……」

 と、商人がレグを伴い長谷川の前を通る。

 その時長谷川を一瞥し、軽く会釈をした。


 浅黒い肌に切れ長の目……、

(あ! たまに村に来ていた商人じゃないか!?)

 その特徴からかろうじて思い出すことができた。


 しかしそんなことを問いただす余裕はなく、一行は商人が用意した牛のような生き物、“ギウ”が引く豪華な客車に乗り込んだ。


 その方向は到着したときよりも明らかに大きく見える、宮殿を目指していた。


 塾を出てからあまりにとんとん拍子であったが、異国の地であることもあり長谷川は戸惑った。

 未だ先が見えない不安もそれに拍車をかけていた。



 宮殿の入口には衛兵らしき姿もあったが、ヴァレリアとは出で立ちも違い軽装だった。


 商人が何やら告げると、宮殿の大きな門が開かれ、小ぶりだが手入れされた庭があり、そのまま玄関までギウに引かれたまま進んだ。


 客車から降り、求められるがまま一行は武器の類を預けた。


 そののち、開かれた宮殿の内部に足を踏み入れると、想像を超える豪奢で華やかな装飾が施されていた。


 アウレリオンは経済と文化、中でも芸術も重んじられている国だとレグのノートに書かれていたのを思い出した。

 まさにそれを証明しているかのようだった。


 この宮殿の所有者は領主だろうか、だとすればアウレリオン全体の豊かさも現しているようだった。


 中では使用人らしき男性が一行を案内した。

 彼の服装もまた建物や装飾に調和するよう、派手さは無いが特別にこしらえられたものに見えた。


 途中すれ違う男女使用人も服装は統一されていた。

 違いは案内人の男性が被る帽子に羽が付いてることくらいだった。


 通路は中庭を横目に伸び、初めて目にする色鮮やかな草花が出迎えた。

 しばらく進んだ先、大きな扉が現れた。


 今まで先を歩いていたレグがそこで立ち止まり、振り返った。


「先生……、僕を隣で見ていてください……!」

 彼の手は緊張からか震えているようにも見えた。


「あぁ……」

 そうとしか答えられなかったが、長谷川は彼の瞳をしっかり捉え、強く頷いた。



 大きな扉が軋んだ鈍い音を立て、内側に開かれる。

 その先の様子に長谷川は絶句した。


 その空間には華やかな出で立ちの男女が幾人も立っていた。

 そして奥まで続く赤い絨毯の両脇にも文官と武官のような男たちが整然と立っていた。


 香だろうか、海辺の湿り気と強い甘さの入り交じった香りが辺りを満たし、異国の異様を激しく主張していた。

 そうしてその最奥、豪奢なソファに若い男が沈んでいた――


 簡素だが決して地味ではない金の王冠を乗せていた。


 金髪の三十代前後に見えたが、どっしりと構えたその様子は年齢以上の風格と尊大さを体現しているようだった。


 それは長谷川でも一目見て“王”だと理解できた。

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