【ep.6】実感する先生 3. テッサとリヴァエル-1
その日もソフィアと子犬ロビンがじゃれる様子をみながら、何かスキルがないのかと“イメージ”を膨らませていた。
「子犬はショルティ、成犬……いや成体は狼……う~ん、噛みつく、威嚇、遠吠え……電光石火! ……仲間を呼ぶ?」
バンッ!
長谷川が少しゲーム脳になっていた時、ユイが勢いよく家の中に駆け込んできた。
「ハセ! 大変!」
「どうした?」
呑気に返した長谷川だが、ユイがここまで慌てているのを初めて見た。
「リヴァと……リヴァエルとテッサがケンカしちゃう!」
「ええっ!?」
あり得なくも無いが、なんだかんだ上手くやっていると思っていただけに、長谷川も急いでその現場に向かうと、すでにミラが止めに入っていた。
冷静に様子を見ていたアルに声を掛けると、どうやら「どちらが強いか」で、エスカレートしているそうだった。
長谷川はなるほどなと頭を搔きながら、ふたりに声を掛けた。
「おいお前ら! そんなにどっちが強いかはっきりさせたいのか?」
「私は一生懸命魔法だって練習してて、剣だってあんたには負けないわ!」
「最近少し成長したからって、そんなに力を見せつけたがるなんて中身は変わらずお子様ね。それに長谷川がひけらかすなといつも言っているのに、ヒトの習性かしら?」
「なぁにぃを……!」
いきり立ってしまったテッサの収まりが付かず、リヴァも主張は正しいが、はっきり言いすぎて煽ってしまっていた。
「よし! わかった!」
相対して徐々に距離を詰め始めたふたりの頭に、長谷川は同時に手を乗せた。
「なら、今からふたりに模擬試合をやってもらう、剣術と魔法の二種目だ。どうだ?」
ふたりは望むところとすぐに了承した。
「そうしたらまずは剣術から、審判はアル先生。ルールは……」
「ならば双方武器は木剣を使用。いつものように“型”を意識し、“型”同士をぶつけ合うイメージで。それを無視してむやみに相手を傷つけるような攻撃は無し。もちろん当てるのも無し。ただし、流れの中で虚をつくようなフェイントはあり。相手が武器を落とすか、態勢を崩すかすれば勝ち。勝負がつかなければ私が試合を止め、勝敗を伝えます」
ふたりは頷いた。
機転を利かせて木剣を取りに行っていたミラが、それぞれ剣を渡す。
「それでは構え! ……はじめっ!」
「いやぁぁぁぁ!」
テッサが速攻で踏み込んだ。
予測していたのかリヴァは難なく躱した。
テッサはロングソードタイプ、リヴァはレイピアタイプだった。
素早さではリヴァが圧倒的に有利だった。
リヴァはお返しとばかりに連撃を繰り出すが、テッサはそれを見事に捌ききり、そのままロングソードを構え直した。
その落ち着き払った様子がリヴァを熱くさせたのか、彼女は猛然と、左右ステップを交えながら、テッサの剣を打ち続けた。
あくまで“型”を意識した戦いである点も、彼女には不利に働いたかもしれない。もともとスタミナに劣るリヴァは次第に攻撃が緩慢になり、テッサはその隙を見逃さなかった。
「はぁぁぁっ!」
十分に温存していたスタミナを、まるで剣道のような鋭く踏み込んだ瞬発力に変え、リヴァのレイピアを打ち付け、落とした。
「そこまでっ! 勝者、テッサ!」
アルが宣言した。
テッサはまだまだ余裕があり、手加減してたようにも見えた。
彼女がチラリとアルを見ると、アルはにこやかに頷いた。
それを見たテッサは照れながらもはしゃいだ。
普段あまり実践的な訓練を取り入れず、型の繰り返しを推奨していたアルの指導を真面目に守っていたようだ。
また手加減するほどの技術があることも証明していた。
(これは……うかうかしていられないな……)と、長谷川は危機感を覚えた。
実のところもはや剣術では並ばれているなと、苦笑もした。だが悪い気分ではなかった。
勝負が決し、リヴァは打ち震えていた。
少し冷静になったテッサが歩み寄ろうと踏み出すと、リヴァは何故か小川のある茂みのほうに駆けていってしまった。




