【ep.4-2】思い知る先生 2.己の無力さを知る-2
少年レグと青年アル、ふたりが家の前にやってきたのは、入れ違いだった。
「こちらで塾をされている、長谷川先生ですね? 私はレグと申します。そして彼はアル。私に同行する、世話焼きです」
(世話焼き? 執事みたいなものか?)
突然の来訪だった。
礼儀正しくレグと名乗った少年に対し、アルと紹介された彼もまだ若いがレグよりは年上と見えた。
こちらは寡黙だが隙が無いと言うか、会釈程度に淀みなく頭を下げた。
それにしても村の住人とは違った雰囲気のふたりであった。
中学生…いや、ともすれば高校生くらいに見えるレグは、金髪だがエルフの黄金色とは違い、赤みがかった鮮やかなオレンジにも見えた。
スマートな姿勢と相まって、爽やかな印象もあった。
身なりについても華美さはないが、少し意匠を凝らしたような服装は青い瞳を引き立て、どこかの御子息かのようにも見えた。いわゆる美形男子だった。
対してアルは大学生くらいだろうか、長谷川に迫る身長に加え、服の上からでも分かるしなやかな筋肉を備えた体躯は、相当に鍛えているように見えた。
切れ長の目つきにアッシュブルーの髪は、見た目とは対照的に知性も窺わせた。腰には長剣を携えていた。
服装はレグよりも粗末だが、その剣と鞘は磨かれており、従者然として見えた。
するとレグが口を開く――
「先生! 是非、私も先生の塾に入れて頂きたいのです!」
「えぇ!? そんな急に、どうしてまた……?」
「先日、この塾を野盗が襲ったと聞きました。それを退けた手並み……いや、私はそれ以上にあなたが教えていると言う“授業”にとても興味があるのです」
横ではアルが黙って聞いていた。
(授業はともかく、退けたって言うか……)
これまでの生徒たちより年上に見えたこともあり、長谷川はう~んと頭を掻いて悩んだが、レグの猛烈なアピールもあり、半ば強引に受け入れてしまった。
(まぁ、大学入試を教える訳ではないし、目的ははっきりしないが、この真面目さと熱意は本物だろう……やれるとこまでやってみよう)
レグがぱぁっと笑顔になると、初めて幼さが窺えた。
その様子を見ていたアルの表情は何とも読み取れないが、レグが綻んだ瞬間は嬉しそうに見えた。
念のため彼らに年齢を聞いてみると、レグは十一歳、アルは十九歳とのことだった。
(十一歳!? どれだけ大人びてるんだよ!)
同じ歳のテッサに見習わせたいと思った。
アルは剣術の心得があるそうで、渡りに船と、むしろ講師をお願いした。
二つ返事で了承した彼だが、その関係も気になるふたりでもあった。




