魔王城へと続く道
114話です。
前話のあとがき通り、最終部後編開始、本話含めてあと6話です。
※作者は京都弁に関して未履修なため、ツール(AIを含む)を用いて変換を行っています。誤用等ありましたら報告していただければ修整します。
四天王たるペストや王姫の護衛サーズ、マーズ、ジフテリア──そして、5人目の竜人ファルシュ。現魔王軍にとって、魔王を除く最高戦力たる5人。エイズに引き続き、マラリアの離反、更にはエボラを失った彼らではあるが、その存在は、人類にとって依然として脅威であることに違いはない。
…では、そんな彼らが一度に攻めてきたとしたら?
かつて、酒の席でそんな世迷言を零した冒険者は、周囲の同僚が皆、たちまち顔を青く染め、その席を台無しにしたとかなんとか。
──そして、現在。正確には、コウスケとユウが、この世界線に戻ってきた頃と言うべきか。
大規模な戦場から外れ、王国と帝国を隔てる災いの森の一画。炎が立ちこめ、荒野へとかわる景色の中。そんな彼女らを引き連れた大男。そこ発せられた威圧が、周囲の空気を重く振動させる。
「身の程を弁えない愚か者共よ。絶滅しなさい」
対峙するスズナとライムを襲う、圧倒的なまでのプレッシャー。そんな声に続けて、傀儡と成り果てた兵が、次々と迫り襲いかかる。
味方すらも失い、ただでさえ数的不利な状況。人類の中では、天才─ひいては上澄みである2人ですら、対抗することに精一杯であるが。ダメ押しのように控えられた魔人達の存在は、そんな彼女らの希望という言葉すらも容易に打ち砕いていく。
意思の強さだけで、なんとか地を這い藻掻く2人に、仲間だったはずの傀儡兵が迫る。
「…相変わらず、尊大な態度だな──皇帝」
もうだめか、と。2人の心が折れかけた刹那。不意に現れた人影が、その道筋を明るく照らし出す。
──虐殺の女神、と。よく似た容姿の存在が、2人の脳裏に過っては消える。
「フン──竜人の小娘如きが。誰の許可を得て我に歯向かう」
続け様に放たれた、大男─皇帝の声。
相対しながら、大鎌を振るう竜人の女──ユイは、傀儡兵を薙ぎ払うと、満面の笑みで、鎌についた血を払う。
「悪いが、愛する弟に頼まれたんでな。アンタに──いや、そこの傀儡共と決着をつけさせてもらう」
──事の発端は、ライムが姫に渡した一通の手紙。次々と徴兵されていく中、エルフの街にて加勢した2人の魔人と接触を果たしたことから始まる。
本戦争における要、コウスケとその一行。戦力的に、そして能力的に。大胆にも、彼らのみで本丸を叩かせると判断を下した姫は、魔人達の言葉に従い、この遊撃部隊を編成した。
傍から見れば、魔人に唆された戦犯のような行為。ただ、そこに見えていない追加情報を加えるとするならば、アネモネにとって、その魔人達が元々、信頼に値する協力者であったことか。無論、送り主たるジフテリアの言葉に偽り無く、帝国の次なる進軍ルートを入手した王国連合軍は、その勢いを現在進行系で削いでいる。
ネモフィラの一件より、大枠の事情を共有している彼女達。スズナとライムは、あくまで遊撃部隊として、数人の兵を連れて、災いの森へと向かった。…ただ、3人の策に誤算があるとするならば、向かわせる戦力をスズナとライムだけにするべきであったことか。当初の想定通り、大男と接触した彼らは、一瞬にして肉体の主導権を乗っ取られ、意思無き傀儡兵へと成り果てるという、この惨状へと繋がる。尤も、皇帝の持つ傀儡化させる能力について、敵味方含め、誰も把握できるモノではなかったのだが。
さて、時は現在に戻り、ユウの姉─ユイが戦場へ舞い降りた直後。
大男の後ろ、魔王軍の面々が動き出そうとした刹那、2人の前に、新たな人影が、滲み出るように出現した。
「俺達は死神──悪いが後少しだけ、後始末に協力してもらうぞ。スズナ、ライム」
ーーー
「空飛ぶ魔王城、だと…!?」
その発想は無かった、とコウスケの漏れた声。本人の感想としては、自らの当てはめたテンプレートになかった展開、というだけではあるが。
悪趣味、気持ち悪いと2人が呟いた理由。窪んだ帝都の中央、鈍くも輝きを放つ中心の大穴。徐々に、城そのものが高度を増すにつれ、光柱が強く伸びる。
「ねぇユウ、これってなんだかヤバそうなんだけど…」
「…えぇ、非常にまずいかもです」
ミリンの呟きに、周囲の影を撃ち抜きそう返すユウ。真剣な話──ではあるのだが、ここはあくまで戦場。次々と横槍が入るのは仕方がないだろう。
意識を取られつつも、戦闘を再開したコウスケ達一行。際限なく現る傀儡を裁きつつ、着々と魔王城への歩みを進めていく。
──2人曰く、地脈に結び付いたこの世界の存在そのもの。中央に構える巨大な魔法陣が、それを無理矢理引き出して、大規模な儀式を行うものである、と。
一刻も早く、原因を叩くしかない、と。彼等の考えはまとまるも、宙を這う有象無象に拒まれ、そうは問屋が卸さない。尤も、数による肉壁であるため、コウスケやユウが全力を出せば容易に突破できるものではあるが…彼等の想定がこの後の魔王戦である以上、少しでも温存しておきたいというのが足枷か。ともあれ、苦しい状況であることに違いはない。
「──チッ、こんな時に…ッ!」
「いや…こんな時だからこそ、だよ。ユリ」
埒が明かない、と。強行突破を試みようとして、不意に反応したユリ。サクラの言葉が響く直後、再び地鳴りが彼等を襲うと、大きな影が一つ、魔王城から飛来し落ちる。
『──────────────────ッ!』
聞き覚えのある咆哮。駆動音を鳴らしながら、瞳のようなモノを動かしたソレは、彼等を捉えて淡く光る。
「なんて悪趣味な…」
ポツリ、と。ミリンの残した呟き。ユウとコウスケの顔が、僅かに歪む。
機械仕掛けでありながら、全身に脈動する神経系のようなナニカ。その姿は、さながら合成竜ようで。動き出したソレは、左右非対称な機体を大きく揺らすと、その至る所から、熱線に似た線を放つ。
「──っ、…?」
ただ一瞬、真っ白に染まった視界。避ける間もなく、回避できなかったはずの、その一撃。そんな、待てども痛みすら無い状況を前にして、コウスケはゆっくりと瞼を開ける。
「これは、一体どうなって──うぉ!?」
呟きを遮って、瞬時に入れ替わった周囲の景色。恐る恐る、と。動く足元へ視線を落とした彼が見たものは、黄金で覆われていて。理解するよりも早く、再び景色が入れ替わる。
「なぁユウさん、これってもしかして…」
「えぇ、空間転移の一種ですね。あの竜モドキの攻撃が着弾する寸前、私達の座標をズラして──」
「──それくらいわかってるわ!じゃなくて!コイツは一体どういうことなんだよ!?」
彼等の足元、そこに居る黄金の竜。その背に乗っている事実を認識したのか、コウスケ同様に、頷くミリンに遅れて。ユウは、あー、と声を上げると、足元の鱗を撫で、満面の笑みを零す。
「大丈夫ですよ、二人とも。彼女はエリ姉さん、私達の幼馴染の一人で──えっと、王国では空間竜とか呼ばれてます。それと、コースケさん。女性コイツ、というのは失礼ですよ」
「いや分かんねぇよ!?」
コウスケの反応に対し、遺憾だ!と吠える黄金の竜。直後、三度景色が入れ替わり、先程いた場所に熱線が走る。
一瞬だけ空気が緩んでいたものの、ここは戦場である。一先ず、疑問を投げ捨てた彼は、呼吸を整えると、下を見下ろして目を見開く。
「なんつー威力してんだアイツ…」
辺り一面に、焼け溶けた街の跡。周囲の傀儡も巻き添えに、文字通り消し炭にされた景色を前にして、コウスケの呟きが虚構を震わせる。
「2体目の模倣機竜、ね。いけそう?」
「えぇ…理論上は。…ただ、エリ姉さんが合流したので、これはこれで都合がいいかもしれないですね」
コクリ、と。イヨとユウに続けて、頷くユリとサクラ。言外に、空間竜達に任せる、と言った彼等は、ミリンの方へ向き直ると、そっと手を出し口を開ける。
「ミリン」
「…何よ」
「また少し、貴女の彼氏を借ります。ユリとサクラ…それにエリ姉さんのこと。頼みますよ」
返事は無く、ただ握り返されるミリンの手。
当初の予定通り、魔王戦まで、メイン戦力であるコウスケとユウ、そして魔王特攻たるイヨの3名を温存させ、ミリン達は回復と露払いをし役割をわけるというもの。模倣機竜、そして空間竜の存在こそ想定外ではあったものの、その大枠は変わらない。地上の魔法陣をなんとかするためにも、二手に分かれることは、やむを得ないだろう。…尤も、ここで決戦前に回復役を外すということは、竜人や竜がいても尚、模倣機竜が脅威であると言うこと他ならないが。
ただ静かに、それぞれを向いて、頷き合う6人。
コウスケが、小箱を翼に変えたその直後、ミリンの視界から、3人の姿がかき消えた。
ーーー
周囲に羽根が舞い、張り巡らされた糸が光る。
皇帝と死神、その両者が接触するや否や。誰が言ったわけでもなく、舞台は、因縁を抱えた者同士の戦いへと移り変わっていた。
「──それが、あんさん達の本当にやりたいことなんどすか…っ!?」
外套の魔人、その一人から叫ばれた、そんな言葉。
対するは、元ローズの護衛、サーズとマーズ。虚ろ目に、ブツブツと呟く2人は、無理矢理糸を引き千切って、眼前の魔人へと、その拳を振るう。
「──っ!」
「すんまへん、アヤメはん」
「大丈夫。気にしない、で──ッ!」
拳が降ろされた刹那、問いかけた魔人との間に割り込む、もう一人の魔人─アヤメ。外套が外れ、その鱗に覆われた身体で拳を受け止めたリザードマンの女は、趣に重心をズラして、崩れた二人を尾で払う。
「私は今度こそ守るって、そう言ったでしょ?ストレリチアさん」
「──そうやねぇ。あても、おきばらなあかんね」
自らを鼓舞し、外套を脱ぎ捨てた魔人─ストレリチア。限りなく人に近いフォルムで、随所に『鱗』を浮かばせたアラクネの女は、その両腕を広げて4つの瞳を大きく見開く。
さて、この戦場において、最も大事な要素とは何か。頭数か、はたまた個としての武力か。否、これらが拮抗している以上、それは大事な要素となり得ない。では、何が勝敗を決するのか?
マーズの片足が潰れ、サーズの腕がはじけ飛ぶ。
一瞬にして、一方的なそれへと移り変わる形勢。リザードマンの腕力が、そしてアラクネの糸が、戦闘に特化したオーガの肉体を凌駕した、ただそれだけの話。
「ローズ様の…為、に…」
「ローズ、さまの…た、め…に」
ブツブツと。虚ろな瞳のまま、繰り返し発する2人の声。幽鬼のように立ち上がろうとする姿は、まるで意思なきゾンビのようで。三度、場を支配する糸が、絡め取った肉体を、その空中へ固定する。
「アヤメはん」
「いえ…敵と言えど、ここまでいくと憐れにも思いますね」
ドサリ、と。地面を叩く音と共に、虚構へ消えたアヤメの声。2人を貫いた、竜鱗を纏ったその腕は。赤い液体を振り払い、深紅の姿を露わにする。
──意思なき傀儡と、信念を持つもの。互いが同格であるならば、その勝者は火を見るより明らかで。
直後、ふらつくアヤメの身体を、ストレリチアが抱き留めた。
ーーー
ぽたり、と。また一つ、地面をたたいた紅い液体。森の渇きを潤すソレが、それぞれの姿を反射し映す。
「──それじゃあ、コレすらアンタの意思だってのか!?」
「──えぇ。そう、ですともッ!」
方や、大槍を持った半人半馬の魔人。方や、人々に天才と称された槍の申し子。罵声混じりの声が、矛先とともに弾き合う。
ライムにとって、3度目の邂逅。
一度目は、姉貴分を罵倒する敵として。
二度目は、ただ操られた駒の一つとして。
そして──
「人をバカにするのも、大概にしろ──ッ!」
薙ぎ払われたライムの大槍が、ジフテリアの身体を大きく揺らす。
一度目の邂逅とは、逆の状況。切っ先を捩じり上げ、自身の後ろへと、相手の槍を突き刺したライム。よろめくジフテリアを前にして、槍の血を払い捨てた彼女は、大きく息を吐き、その視線を向き直る。
「…何が、アンタの意思だ。それじゃ、アンタの言う傀儡と同じじゃねぇか」
「…ッ、しかし──」
「ジフテリア。アタシは今、非常にアンタに失望してる」
「な──ッ!?」
わざとらしく、ジフテリアの槍を引き抜き、彼女の足元へ転がすライム。
ジフテリアにとって、ライムのその口調は、はじめて相手した頃の自分とよく似ていて。自らの槍を拾い上げ、ヨロヨロとした4つの足で、彼女は静かに立ち上がる。
「──いえ、確かに、貴女の言う通りですね」
僅かに歪んだ口元。刹那、互いに槍を構え合い、踏み込む足に力がこもる。
皇帝の力により、傀儡となった同期の幹部。忠誠以外を書き換えられ、戦闘マシーンと化した2人をどうこうすることはできなくて。自らをかつての主と重ね、駒であると納得もした。──ただ、計算外だったとするならば。眼の前の少女に、そして彼女が慕う元同期に、心が揺り動かされたことか。彼女達の持つ、見返りの無い信頼が、いつしか心を焼かれたのが、この矛盾した行動に至るのかもしれない、と。
駒であるはずなのに、情報を漏洩し、少女との再戦を望んだ姿。ローズの為に、と。そんな口実を前にして、立場を彷徨った彼女は、切っ先に反射した姿を、ゆっくりと捨て動かす。
──一瞬にして、しかし永遠にも思えた攻防。
互いに大槍を突き交わし、火花と共に倒れ込む。
「はは…コレで、もう終わりかよ…」
「誠に、遺憾ですね…」
ただ一瞬、されど一瞬。素人目には、捉えようの無い刹那の攻防。周囲に薙ぎ倒された木々が、その衝突の照明か、その激しさを物語っているか。もはや、言葉などいらない、と。満足気に嘆く彼女達は、深紅の泥上で、仰向けになる。
──同じ槍使いであっただけ。本当に、ただそれだけのこと。
生まれも、育ちも、立場すらも違う敵同士。もし例外的に、同じ物を上げるとするならば、それは竜人の存在か。…尤も、ジフテリアは魔王の人形たる魔人、ライムは献身する本来の竜人、と。皮肉にも、その中身は真逆であったりするのだが。
「ライムっ!」
感傷に浸る最中、鼓膜を震わすスズナの声。直後、ライムの身体が、温かな癒しに包まれる。
「ふふ…結局、こんな結末ですか…」
ポツリ、と。青空にかかるジフテリアのつぶやき。
誰に言ったわけでもなく、納得したような、そんな彼女の言葉。彼女の視界の端、懸命に回復を試みる少女を前に、それが漏れたのは。きっと、名ばかりの忠誠で自分を縛り、言葉を交わさなかった、己への失望か。
──主が望んだ、存続する世界。
理由や経緯はもはやどうでもいい。ただ、忠誠を誓いながら、駒となった自分自身が、そこで立つ姿は無い、と。同期すら見て見ぬふりをした、自分だけがまともであるはずもなく。大義名分だけの、どっちつかずな一連の行動は、ただの自己満足でしか無くて。そんな己を前にして、虚構の空へと腕を伸ばす。
「──っ、なんの真似ですか」
敗者として、このまま消えて行く、と。そう覚悟した刹那、己を包む癒しの魔法。
みるみる塞がる欠損跡。驚きのまま振り返り、脂汗を浮かべたスズナが視界に入る。
「なんの、真似って…言われても…っ、見たまんま、よッ」
絞り出したような、スズナの声。
見たまま、という意味は分かる。現在進行系で、回復されている自身の肉体。ただ、見るからに魔力が足りていない状態で。敵である自分を回復する意味が、彼女にはわからなくて。
思考のドツボにハマろうとした瞬間。尚も満身創痍のまま、起き上がったライムが、睨みつけるように視線を向ける。
「アンタの忠誠は、その程度なのかよ──っ!」
ガツン、と。ジフテリアの頭を走る衝撃。
脳裏に過ったのは、傀儡となり、先に散った同期達の姿。──いつか、様子が変わった主に対して、それでもと忠誠を誓い確認し合った仲。彼女等の散り様はもちろん、ジフテリア自身に許容できるものでは無くて。
「スズナさん、と言いましたね。…もう大丈夫です」
ただ自然に、ニコリと笑顔を返して、4つの足で立ち上がる。
…本当は、外面だけの回復。だがしかし、今の自分なら、全力以上に動ける様な気がしていて。大槍を持った彼女は、自らの来た道へと、その視線を捉え直す。
「そうそう。スキルス──いえ、スミレに言っておいてください。『あの時はごめんなさい。いい仲間に巡り合えたのね』、と」
「おい、それって──」
音を、そして光すらを凌駕するような錯覚。ライムの言葉をかき消して、地面を強く蹴り上げたジフテリア。
ただ、その大きく凹んだ足跡に。透明な水が一つ、飛沫を上げた。
ーーー
方や、金属の翼を広げ、漆黒の線を描き。
方や、紅白の両翼を広げ、白い羽根を舞い上げる。
地上から、そして帝国すら離れた上空。空間竜により、そこに飛ばされたコウスケ、ユウ、イヨの三人は、視界に捉えた魔王城を前に、その速度を早める。
「イヨ、迎撃は任せます」
「おっけー。振り落とさないでよ」
「えぇ、もちろん」
ユウに抱き抱えられたまま、そんな軽口を叩くイヨ。直後、魔王城の外壁から、はがれ落ちたガーゴイルの群れが、行く手を拒むよう襲い来る。
「はは、こりゃねぇわ」
「コースケさんは、この後──」
「わかってるって。予定通りに、な」
コウスケが苦笑いを浮かべる中、次々と矢に射抜かれ、落下していくガーゴイル共。ユウとイヨの、まるで、ずっとペアを組んでいたかのような息の合った連携。左右不規則に揺れる不安定な姿勢から、クロスボウによって正確に撃ち抜いていくその姿は、素人目に見ても美しく映る。
ユウの言葉に頷いて、コウスケは改めて目先を捉える。
自らに与えられた役割──それは、結界の無力化。内容は単純であり、権能によって結界本来の機能を書き換え、3人を素通りできる隙間を作る、というユウからの案。捉えようによっては、権能を使わなければ突破できないものであるのだが…だからこそ、最も重要な役割であると言える。
「──〈解放〉」
大半のガーゴイルが墜とされ、視界がクリアになる最中。右腕を突き出したコウスケが、鎧の化物へとその姿を変える。目前の、ただ一点。その定義を書き換えて、魔王城へと続く道を切り開く。
「ユウさん!」
「えぇ、突っ込みます!」
壊れなさい、と。結界を抜けた直後、ユウの呟きと共に崩れた壁の一画。
ただ一直線上、そのまま魔王城へと侵入した3人。転がるように勢いを殺した彼らは、待ち構えられたその姿を前にして、己の足で立ち上がる。
「──アハ、フハハ…!そうかそうか、そういうことなのだな…ッ!」
魔王城、その玉座の間に響き渡る、気色の悪い引き笑い。化物の右腕と、そして紅い鱗に覆われた継ぎ接ぎの左腕。3人が訝しげに眉を寄せる中、振り返ったその男は、イヨ視界に捉えて、引き裂かれんばかりに口角を上げる。
「待っていたぞ!我が娘よ──ッ!」
■アヤメ
・サーズとマーズによって、仲の良いエルフごと襲われたリザードマンの少女。
・イヨに回収された後、自らが「守る」ことを誓い、その為に死神として表舞台から姿を消していた。
・ユウに対し恋慕に誓い憧れを持ち、ドラゴンに相当する紅い鱗を持つリザードマンへと、突然変異的な進化を遂げた。
■ストレリチア
・ユウに命を救われたアラクネの少女。
・回復の為と、意図せず行われた契約によって、竜装種へと進化した。
・ユウと別れた後、事の顛末を確認しに戻った際、後処理をするイヨ、ユイと接触。ユウへの憧れと、同族の末路を再認した為、彼女らの仲間へと志願。死神の一人として、人工魔物の処理を行っていた。
■エリ姉さん
・空間の権能を持つ、黄金の竜。ユイの親友にして幼馴染の1人(1体?)。2人が産まれる前、エリアー・ドラゴンと人族に呼ばれたことから、自らをエリ(或いはエリア)と名乗っている。性別はもちろんメス。
・里の襲撃後、バラバラになった彼らを探すべく世界を放浪していたところ、『竜人と魔人』に接触。死神の1人として暗躍するに至った。
・ユイに心酔しており、「性別以外変わらないユウと自分との間にできた子どもは、ユイと自分との子も同然なのでは?」と考えるような生粋の変態。過去には、そんな自分の考えを理解しなかったとある王族に腹を立て、一つの国を丸ごと深海と入れ替えた事がある。
・「設定的に強すぎるから、名前は後にして匂わせだけにしようと思ってた。でもユウが割と万能なのは既定路線だったし、ある意味完全下位互換の彼女を出すなら今しかないかなって。だから、初期プロット通り最終決戦に援軍として参加させることにした。いいよね、ドラゴンとドラゴンモドキの戦い…浪漫があるとは思わないかい?」───作者の初期プロット、及び最終部プロット作成時より抜粋───




