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この空色バス、春先行き。【完結】  作者: 猪野いのり
第二章 安全運転にて走行中《2年生編》
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Ep.16 春、芽吹く(2)「2年2組の場合」

 追い風が吹いている。

 今、俺の背中には、運命の強風が吹いているのだ。

 だって──なぜならば!


 大谷 圭介:

「望月! 同じクラスだな!」


 望月 美羽:

「だね、大谷くん。よろしくね~」


 片想い中の相手、望月となんと同じ2組になったのだから!


 教室に飛び込んだ俺は、さっそく目当ての相手を見つけて声をかけた。

 笑って応えてくれた望月は、やっぱり可愛い。

 大谷圭介、今最大のチャンス到来時期に、己の運の強さを実感する。


 大谷 圭介:

(俺は今……キテる!)


 フハハハと笑う俺の後ろで、恋愛成就の追い風が、ここぞとばかりに吹いていた。



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


 春、芽吹く

(2)「2年2組の場合」


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



 隼人と中曽根とはクラスが離れ、大中小トリオは解散となったが、そんなのはどーでもいいのだ。

 俺は浮かれるままに、望月の席に近寄った。


 大谷 圭介:

「へへ、よろしくな」


 望月 美羽:

「うん、大谷くんの席はどこなの?」


 大谷 圭介:

「あそこ。窓際だから、日当たりいいぜ」


 望月 美羽:

「いいな~。私は見てのとおり、教卓の近くなんだよ」


 大谷 圭介:

「なら、俺の席に遊びにきてもいいぜ」


 望月 美羽:

「それもいいね」


 おお、なんかこう……いい感じじゃないか!?


 嬉しくて仕方ない。

 もう、まわりに俺の片想いがバレバレだとは知っているんだ。

 ならいっそのこと、オープンにアピールしてやるぜ! と意気込んでいた俺の邪魔をするやつが現れた。


 井本:

「よっす大谷ー! 同じクラスじゃーん」


 大谷 圭介:

「ぐえっ」


 襟首を掴まれて、喉が詰まる。

 同じサッカー部の井本だった。


 大谷 圭介:

「なんだ、井本か」


 井本:

「なんだとはなんだ。せっかくいい情報あるってのに」


 大谷 圭介:

「いい情報?」


 すると井本がにやりと笑った。


 井本:

「へっへっ。そうでっせ、旦那」


 大谷 圭介:

「!」


 この笑いと言い方で、ピンときてしまった。


 悪友井本がこういった物言いのときは、あっち側の情報なのである。


 大谷 圭介:

「い、井本。向こうで話そう」


 俺は望月に背を向けて、井本の肩をがしりと掴む。


 望月 美羽:

「?」


 後ろで望月が首をかしげたような気がして、俺らはこそこそ教室の隅に寄った。


 大谷 圭介:

「──で、何だよ。情報って?」


 井本:

「なんと! このクラスに、学年一の巨乳がいる!」


 大谷 圭介:

「な……なんだって!? 」


 悪友──スケベ仲間の井本が持ってくる情報とは、つまりこういったものである。

 1年のときからエロ親父キャラの俺と、下ネタ情報屋井本は、薄っぺらくとも熱き友情で結ばれていた。

 こんなこと、決して望月にバレてはならない。


 大谷 圭介:

「誰だれ?」


 井本:

「江川だよ。なんとEカップ!」


 大谷 圭介:

「い、E!? 」


 井本:

「やばいよな~。衣替えとか超楽しみじゃーん」


 大谷 圭介:

「んー、ですなぁ」


 いやはや、まったく最近の女子は発育がよろしくて嬉しいかぎりですな、はっはっはっ。

 と、井本と笑っていたら。


 ?:

「まーたスケベな話してるんでしょ、井本ー」


 女子の声がかかって慌てて俺たちは振り返った。

 すると……。


 大谷 圭介:

(げっ! 望月!?)


 声をかけてきた女子の隣に、なぜか望月もいた。


 き……聞かれてないよな!?


 井本:

「何だよ里美、男の話に入ってくるんじゃねえよ」


 井本は声をかけてきた女子に対して言う。

 そうだ、この子、たしか望月と同じ園芸部の子だ。

 さとみん、て望月が呼んでいたのを聞いたことがあるぞ。この子とも同じクラスになったのか。


 さとみん:

「井本はそんな話ばっかじゃん。大谷くんも染まっちゃダメだよ~」


 井本:

「なーに言ってんだ、大谷は俺よりスケベだぜ!」


 や、やめろー!!

 望月の前で、それはやめろー!!


 大谷 圭介:

「なななな、なーに言ってんだい、君らー!」


 望月 美羽:

「……大谷くん、スケベなの?」


 大谷 圭介:

「んなわけねーだろ、望月!」


 わはは、と誤魔化す俺の肩に、がしりと井本の腕がまわる。


 井本:

「そーそー、こいつは1年の時は、スケベプリンスと呼ばれていたんだ」


 やめろ井本ーーー!!

 望月に余計な情報吹き込むんじゃねえー!!


 井本:

「なー、巨乳好きプリンス~」


 大谷 圭介:

「お、おま、おま、お前~」


 もしやこいつ、俺の片想いに気づいて、わざと望月に言ってんな!?


 しかしそんなことよりも、気になるのは望月の反応である。

 怖いもの見たさで、恐る恐る望月の顔をのぞき見る。


 すると……。


 望月 美羽:

「……ふーん」


 望月 美羽:

「巨乳ねぇ……」


 大谷 圭介:

「……!!! 」


 やたら冷めた目の望月サンが、そこにいた。


 ち、違うんだ望月ー!!

 俺は確かにスケベだが、それは健全なるスケベで、決してイヤらしいとか、そんなわけではなくて……!!


 大谷 圭介:

「望月、違う、違うんだぞ!?」


 望月 美羽:

「違うって何が? 大谷くんも大きいのがいいんだねー」


 望月はやたら冷たい声を出す。こんな態度は初めてだ。


 えーと、違うのは、俺はもちろんスケベだからそれは否定できないけど……!

 えーと、えーと……!!


 大谷 圭介:

「俺は……」


 大谷 圭介:

「デカさより形重視だから!! 」


 望月の肩をがしりと掴んで、そう言ったら。


 望月 美羽:

「……なっ…」


 望月 美羽:

「バカー! セクハラーー!!」


 望月に思いきり突き飛ばされ、俺はガーンとショックを受けた。


 大谷 圭介:

(ガーン!!)


 井本:

「よっ! セクハラプリンスー!」


 大谷 圭介:

「う……うるせー!!」


  許さん!

  井本ぜってぇ、許さんぞー!!


 しかし、痛感してしまった。

 同じクラスになるということは、隠したいことも隠せないというわけなのである。


 今後の苦労に、俺はガックシとうなだれたのであった。


 とほほ。




 ◇ 2年3組編へ続く ◇

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