Ep.16 春、芽吹く(2)「2年2組の場合」
追い風が吹いている。
今、俺の背中には、運命の強風が吹いているのだ。
だって──なぜならば!
大谷 圭介:
「望月! 同じクラスだな!」
望月 美羽:
「だね、大谷くん。よろしくね~」
片想い中の相手、望月となんと同じ2組になったのだから!
教室に飛び込んだ俺は、さっそく目当ての相手を見つけて声をかけた。
笑って応えてくれた望月は、やっぱり可愛い。
大谷圭介、今最大のチャンス到来時期に、己の運の強さを実感する。
大谷 圭介:
(俺は今……キテる!)
フハハハと笑う俺の後ろで、恋愛成就の追い風が、ここぞとばかりに吹いていた。
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春、芽吹く
(2)「2年2組の場合」
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隼人と中曽根とはクラスが離れ、大中小トリオは解散となったが、そんなのはどーでもいいのだ。
俺は浮かれるままに、望月の席に近寄った。
大谷 圭介:
「へへ、よろしくな」
望月 美羽:
「うん、大谷くんの席はどこなの?」
大谷 圭介:
「あそこ。窓際だから、日当たりいいぜ」
望月 美羽:
「いいな~。私は見てのとおり、教卓の近くなんだよ」
大谷 圭介:
「なら、俺の席に遊びにきてもいいぜ」
望月 美羽:
「それもいいね」
おお、なんかこう……いい感じじゃないか!?
嬉しくて仕方ない。
もう、まわりに俺の片想いがバレバレだとは知っているんだ。
ならいっそのこと、オープンにアピールしてやるぜ! と意気込んでいた俺の邪魔をするやつが現れた。
井本:
「よっす大谷-! 同じクラスじゃーん」
大谷 圭介:
「ぐえっ」
襟首を掴まれて、喉が詰まる。
同じサッカー部の井本だった。
大谷 圭介:
「なんだ、井本か」
井本:
「なんだとはなんだ。せっかくいい情報あるってのに」
大谷 圭介:
「いい情報?」
すると井本がにやりと笑った。
井本:
「へっへっ。そうでっせ、旦那」
大谷 圭介:
「!」
この笑いと言い方で、ピンときてしまった。
悪友井本がこういった物言いのときは、あっち側の情報なのである。
大谷 圭介:
「い、井本。向こうで話そう」
俺は望月に背を向けて、井本の肩をがしりと掴む。
望月 美羽:
「?」
後ろで望月が首をかしげたような気がして、俺らはこそこそ教室の隅に寄った。
大谷 圭介:
「──で、何だよ。情報って?」
井本:
「なんと! このクラスに、学年一の巨乳がいる!」
大谷 圭介:
「な……なんだって!? 」
悪友──スケベ仲間の井本が持ってくる情報とは、つまりこういったものである。
1年のときからエロ親父キャラの俺と、下ネタ情報屋井本は、薄っぺらくとも熱き友情で結ばれていた。
こんなこと、決して望月にバレてはならない。
大谷 圭介:
「誰だれ?」
井本:
「江川だよ。なんとEカップ!」
大谷 圭介:
「い、E!? 」
井本:
「やばいよな~。衣替えとか超楽しみじゃーん」
大谷 圭介:
「んー、ですなぁ」
いやはや、まったく最近の女子は発育がよろしくて嬉しいかぎりですな、はっはっはっ。
と、井本と笑っていたら。
?:
「まーたスケベな話してるんでしょ、井本ー」
女子の声がかかって慌てて俺たちは振り返った。
すると……。
大谷 圭介:
(げっ! 望月!?)
声をかけてきた女子の隣に、なぜか望月もいた。
き……聞かれてないよな!?
井本:
「何だよ里美、男の話に入ってくるんじゃねえよ」
井本は声をかけてきた女子に対して言う。
そうだ、この子、たしか望月と同じ園芸部の子だ。
さとみん、て望月が呼んでいたのを聞いたことがあるぞ。この子とも同じクラスになったのか。
さとみん:
「井本はそんな話ばっかじゃん。大谷くんも染まっちゃダメだよ~」
井本:
「なーに言ってんだ、大谷は俺よりスケベだぜ!」
や、やめろー!!
望月の前で、それはやめろー!!
大谷 圭介:
「なななな、なーに言ってんだい、君ら-!」
望月 美羽:
「……大谷くん、スケベなの?」
大谷 圭介:
「んなわけねーだろ、望月!」
わはは、と誤魔化す俺の肩に、がしりと井本の腕がまわる。
井本:
「そーそー、こいつは1年の時は、スケベプリンスと呼ばれていたんだ」
やめろ井本ーーー!!
望月に余計な情報吹き込むんじゃねえー!!
井本:
「なー、巨乳好きプリンス~」
大谷 圭介:
「お、おま、おま、お前~」
もしやこいつ、俺の片想いに気づいて、わざと望月に言ってんな!?
しかしそんなことよりも、気になるのは望月の反応である。
怖いもの見たさで、恐る恐る望月の顔をのぞき見る。
すると……。
望月 美羽:
「……ふーん」
望月 美羽:
「巨乳ねぇ……」
大谷 圭介:
「……!!! 」
やたら冷めた目の望月サンが、そこにいた。
ち、違うんだ望月ー!!
俺は確かにスケベだが、それは健全なるスケベで、決してイヤらしいとか、そんなわけではなくて……!!
大谷 圭介:
「望月、違う、違うんだぞ!?」
望月 美羽:
「違うって何が? 大谷くんも大きいのがいいんだねー」
望月はやたら冷たい声を出す。こんな態度は初めてだ。
えーと、違うのは、俺はもちろんスケベだからそれは否定できないけど……!
えーと、えーと……!!
大谷 圭介:
「俺は……」
大谷 圭介:
「デカさより形重視だから!! 」
望月の肩をがしりと掴んで、そう言ったら。
望月 美羽:
「……なっ…」
望月 美羽:
「バカー! セクハラーー!!」
望月に思いきり突き飛ばされ、俺はガーンとショックを受けた。
大谷 圭介:
(ガーン!!)
井本:
「よっ! セクハラプリンス-!」
大谷 圭介:
「う……うるせー!!」
許さん!
井本ぜってぇ、許さんぞー!!
しかし、痛感してしまった。
同じクラスになるということは、隠したいことも隠せないというわけなのである。
今後の苦労に、俺はガックシとうなだれたのであった。
とほほ。
◇ 2年3組編へ続く ◇




