↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
70/136

Ep.14 ぼくらの卒業(2)「卑怯者の悩み」

わからん。

望月の考えがまったくわからん。


望月 美羽:

「おっはよ~!」


いつものように、2組に飛び込んできた望月。

いつものように、戸田と羽鳥の元まで行き。

いつものように、談話を楽しんでいた。


あんなことがあった──翌日なのに。


大谷 圭介:

(もしかして望月……気づいてない?)


あんなにわかりやすい反応しちまったのに?

思いっきり好きなやつって言っちまったのに?


それとも。


大谷 圭介:

(なかったことに……されてる?)


その可能性は、いたく俺の気分を落ち込ませた。

うつむきかけた俺の視線が一瞬、望月とぶつかる。


大谷 圭介:

「……っ!」


慌てて目をそらしてしまった。

望月の顔を、まともに見ることなんてできない。


小池 隼人:

「どうしたの? ケイちゃん」


不思議がって見つめてくる隼人に。


大谷 圭介:

「……別に、何でもねーよ」


口の中でこもるくらいに、小さく呟いた。


この日以来。

俺は花壇にも、足を運べなくなっちまったんだ。



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


ぼくらの卒業

(2)「卑怯者の悩み」


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



思いがけないタイミングで、望月に気持ちがバレちまったバレンタイン。

あれ以来、望月とは会話ができていない。

火曜日と木曜日に行っていた花壇への足も遠のく。

別々のクラス。

俺が特に動かなければ、接点は自然と消滅してしまう。


あんなことがあったのに、日常は過ぎていく。

二月末の期末テストも終わり、在校生は春休みを待つだけの身となった。

卒業式は1年生は参加せず、2年生が送辞や送り出しの歌を歌う。


しかし、サッカー部である俺らは、伝統だか恒例だかの「卒業生の胴上げ」をしなければならないらしい。

卒業式が終わるくらいに、1年生は学校へ出なければならない。


2年生:

「……てことで、大谷から1年に伝えといて」


大谷 圭介:

「うっす、わかりました!」


昼休み、廊下でサッカー部2年生に捕まった俺は、当日の詳細を1年生に伝える司令を受けていた。

そんなのは2年生が部活中に伝えればいいのに、3年生と比べて怠けがちな2年生は1年生をよくパシらせる。


あーあ、来年度からはこいつらが頂点になっちまうのか。


大谷 圭介:

(隼人にでも、協力してもらうか)


トリオの中で唯一スマホを持っている隼人なら、他の連中にも伝えやすい。

そんな算段をして、廊下を歩いていたら。


戸田 るり:

「美羽、卒業式もうすぐだね」


望月の名前を呼ぶ、クラスメイトの戸田の声が聞こえた。


大谷 圭介:

「!」


慌ててその声の出所を探す。

それは、たまたま通り過ぎようとした家庭科室だった。

引き戸に少しすき間ができていて、静かな特別教室校舎に中の声がもれている。


次の授業は家庭科だったから、先に乗り込んでいたのだろうか。

中にはいつもの3人組である戸田と羽鳥、そして望月がいた。


望月 美羽:

「ねー、本当に早いよ」


座って会話している3人。望月の声が聞こえてドキッとした。

次の羽鳥の発言が、より俺の心を揺さぶる。


羽鳥 梢:

「先輩への告白、今度こそ頑張ってね!」


大谷 圭介:

(えっ……)


──告白?

望月が、あいつに……?


望月 美羽:

「……うん!」


力強く、でもどこか緊張して響いた望月の声。


本気なんだ。

……そりゃそうか。

相手が卒業するとなれば、そう決意したっておかしくないんだ。


望月 美羽:

「本当、玉砕覚悟だけど!」


大谷 圭介:

「………!」


明るくも強く言い放つ望月が、眩しかった。

俺は好きなことがバレただけでこんなに動揺して、無視しているのに。望月は気持ちをぶつけようと決心している。


これじゃあ、どっちが女々しいのかなんて明白だ。

うつむく俺。だけど。


戸田 るり:

「でも、美羽の告白が成功したら、大谷くんが残念がりそうだよね」


大谷 圭介:

「!?」


戸田が放ったとんでも発言に、俺はビクッと肩を上がらせた。


うえええ!?


羽鳥 梢:

「あ、たしかに! あいつ絶対、美羽のこと好きだよねぇ」


大谷 圭介:

(ば、バレてた!?)


続く羽鳥の言葉により、どうやら俺の片想いは周囲にバレバレだったようだと気づく。


ま、マジか!?

俺は息を殺して望月の反応を待った。


望月 美羽:

「やっぱり……そうなのかなぁ」


大谷 圭介:

「!」


ぐっと息を飲んだ。


望月……どう、思ってる……?


戸田 るり:

「美羽、気づいてたんだ」


望月 美羽:

「……んー、というか……」


もしかして、告ったことバラされちまう?

ハラハラしたが、でも望月はその先をすぐには言わず。


望月 美羽:

「……今は、先輩のことでいっぱいいっぱいで……よくわかんないよ」


少し小さくなった声に、つられるように俺も小さく息を吐いた。


大谷 圭介:

「……」


俺は静かに、そっと家庭科室から離れた。

そして特別教室校舎から出ると、ずんずんと足をならして教室へ向かった。


俺、今、すげぇ卑怯なこと考えてるよ。


望月が好きな園芸部の部長とやら。

そいつは、もう卒業しちまうんだろ?


今はそいつのことで、いっぱいいっぱいだという。

でも、やつとの決着をつけてくれれば……それなら俺にも、少し希望はあるのかもしれない。


どうせ、まわりに気持ちはバレちまってんだ。

アピールしまくれば、望月の気持ちも傾くかもしれない。

そんなふうに考えちまったんだ。


大谷 圭介:

(告って……さっさとフラれちまえよ、望月)


そんな卑怯な考えを頭でいっぱいにさせて、俺は教室へと向かっていた。




◇ 続く ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。