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Ep.7 ビー玉恋模様(2)「不器用に、君を」

久しぶりの同小メンバーで揃った俺たちは、ぞろぞろと連れ合いながら、祭り会場まで足を運んだ。

女子はほとんどが浴衣姿できていて、男子はいつもどおりに振る舞いながらも、少しだけそわそわしている。


大谷 圭介:

「おうおう中曽根、戸田と何話してたんだよー」


中曽根 悠:

「るっせーよ、大谷」


中曽根をからかいつつも、チラチラと望月を覗き見た。


桃色と白の華やかな浴衣の望月が、なんだか眩しくて、まともに見ることができない。

お団子に結われた髪に、揺れるかんざし。

ちまちまと、歩く速度を遅らせる下駄。

ちょこんと、両手で持っている巾着。

そのどれもが、望月をよりいっそう「女の子」として意識させる。


結局、会場に着くまで、俺は望月と話すことができなかった。



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


ビー玉恋模様

(2)「不器用に、君を」


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



大谷 圭介:

「ひゃー、スッゲー人だなぁ」


羽鳥 梢:

「はぐれないように気をつけなきゃね」


学級委員らしく羽鳥が呟いた。

最終日ともあってか、姫泣祭の会場はすごい人混みになっていた。

今日は花火もあるから、押し合いへし合いの人、人、人。

俺たちの集団は、よりいっそう固まってはぐれないように近づきあった。

するとラッキーなことに、望月が俺に近づいた。


望月 美羽:

「やほ、大谷くん」


大谷 圭介:

「おう、望月か」


なんて、さも今気がついたかのように白々しく答えてしまう。

本当はすっげぇ嬉しいのに、知られたくなくてぶっきらぼうになっちまう。


望月 美羽:

「すごい人だねぇ」


大谷 圭介:

「だな。望月ちっこいから、隠れちまいそう」


望月 美羽:

「そん時は、大谷くんが目印になるから大丈夫!」


にこっと笑う望月はやっぱり可愛い。今日は浴衣姿の相乗効果で、最上級に可愛く見えた。


不思議なもんだな。

望月なんて、小学校も同じで何回か同じクラスになったこともあるのに、こんなふうに好きになるなんて、最近まで想像もしていなかった。

それなのに今は、ただ隣にいるってだけで嬉しい。

クラスが違うから、よりいっそう嬉しいんだ。


大谷 圭介:

「はぐれんなよ」


それだけしか言えなくて、俺はまた集団にまぎれた。

これ以上、望月と話をしていたら、まわりに片想いが見透かされてしまいそうで。


望月 美羽:

「うん」


頷いた望月を気にしながら、一歩前を歩いた。



・   ・   ・



俺たちは、いろんな出店をまわった。

夕食代わりに焼きそばやお好み焼きを食べて、バナナチョコや綿菓子の甘さを堪能する。

主に食べ物メインに楽しむうちに、俺の変な緊張も解け、純粋に祭りを楽しんでいた。


中曽根 悠:

「なぁ、次は射的しよーぜ」


小池 隼人:

「ん、いいね」


中曽根が射的を提案し、何人かがそっちに付いていった。俺の横にいた隼人も、そっちに流れて離れる。

ふと団体の後ろで、望月が別の店を見ていることに気がついた。


大谷 圭介:

「望月、何見てんの」


望月 美羽:

「あれ、してみよっかな」


そう言って望月が指差したのは「くじ引き」と書かれた出店だった。

あまり人気がないのか、今すぐにでも引けそうなくらい閑散としていた。


大谷 圭介:

「くじか。やってみたら?」


望月 美羽:

「でも、みんな射的に行ってるし……」


そこで、俺は最大の勇気を出した。


大谷 圭介:

「……俺もやろっかな」


望月 美羽:

「え!」


望月は目を大きく開く。

うっ、いやって思われてないかな……。


望月 美羽:

「やろやろ! やった〜、仲間ゲット!」


その望月の言葉にホッとする。

そしてなんと、俺と望月だけが、くじ引きの出店に向かった。

思いがけない二人だけの別行動に、心が浮き立つ。

と言っても、すぐそこに射的を楽しむみんながいるのだが。


出店のおじさん:

「一回二百円ね」


出店のおじさんにそれぞれお金を渡すと、俺たちはどのくじを引こうかと手を伸ばした。


ここのくじ引きは、束になった紐から一本選んで引っ張り、その先に付いていたものがもらえるシステムだった。

二百円という値段だから、もちろん大したものは付いてない。

でも、望月と同じくじ引きを楽しめることがただ嬉しい。


望月 美羽:

「せーので、一緒に引こう!」


大谷 圭介:

「よし、わかった」


望月 美羽:

「せーの!」


ぐい!

互いに選んだ紐を引っ張った。


おじさんが引かれていく景品を見つけて、それぞれに渡してくれる。


出店のおじさん:

「はい、ありがとさん。こちらが景品だよ」


おじさんは、俺にビー玉の入った袋を、望月にはキャンディを渡した。


望月 美羽:

「わ、可愛い飴だぁ」


望月はハート形の棒キャンディに喜んだ。

俺は渡されたビー玉の袋を持って、苦虫を噛み潰したような顔をする。


大谷 圭介:

「俺はハズレだよ」


ビー玉なんか、腹の足しにもなんねぇ。

そう呟いた俺を、望月が下から覗き込んだ。


望月 美羽:

「そうかなぁ?」


透明袋に乱雑に入っているビー玉を見つめる望月。

キラキラしたビー玉が、そんな望月の肌にカラフルな影を落とした。


望月 美羽:

「当たりだよ。だって、キレイだもん」


そう言っている望月の目ん玉も、ビー玉みたいにキレイだった。


大谷 圭介:

(……ああ、俺)


大谷 圭介:

(望月のこういうところが……)


好きなんだ。

そう実感した。


前もこんなふうに、後ろ向きな俺に前向きな言葉をかけてくれたっけ。


いつも笑ってて。

いつも楽しそうにしていて。

いつも前を向いている。

向日葵みたいな子だ。

そんな望月が好きだと、あらためて思う。


大谷 圭介:

「……これ、望月にやるよ」


ビー玉の袋を差し出した。


望月 美羽:

「え、いいの?」


大谷 圭介:

「俺いらないし。やる」


なんだか照れ臭くて、ぶっきらぼうにしか言えなかった。

でも。


望月 美羽:

「嬉しい! ありがとう」


そう言いながら笑って受け取る望月を見て、俺も自然に笑ってしまったんだ。




◇ 続く ◇

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