Ep.7 ビー玉恋模様(2)「不器用に、君を」
久しぶりの同小メンバーで揃った俺たちは、ぞろぞろと連れ合いながら、祭り会場まで足を運んだ。
女子はほとんどが浴衣姿できていて、男子はいつもどおりに振る舞いながらも、少しだけそわそわしている。
大谷 圭介:
「おうおう中曽根、戸田と何話してたんだよー」
中曽根 悠:
「るっせーよ、大谷」
中曽根をからかいつつも、チラチラと望月を覗き見た。
桃色と白の華やかな浴衣の望月が、なんだか眩しくて、まともに見ることができない。
お団子に結われた髪に、揺れるかんざし。
ちまちまと、歩く速度を遅らせる下駄。
ちょこんと、両手で持っている巾着。
そのどれもが、望月をよりいっそう「女の子」として意識させる。
結局、会場に着くまで、俺は望月と話すことができなかった。
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ビー玉恋模様
(2)「不器用に、君を」
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大谷 圭介:
「ひゃー、スッゲー人だなぁ」
羽鳥 梢:
「はぐれないように気をつけなきゃね」
学級委員らしく羽鳥が呟いた。
最終日ともあってか、姫泣祭の会場はすごい人混みになっていた。
今日は花火もあるから、押し合いへし合いの人、人、人。
俺たちの集団は、よりいっそう固まってはぐれないように近づきあった。
するとラッキーなことに、望月が俺に近づいた。
望月 美羽:
「やほ、大谷くん」
大谷 圭介:
「おう、望月か」
なんて、さも今気がついたかのように白々しく答えてしまう。
本当はすっげぇ嬉しいのに、知られたくなくてぶっきらぼうになっちまう。
望月 美羽:
「すごい人だねぇ」
大谷 圭介:
「だな。望月ちっこいから、隠れちまいそう」
望月 美羽:
「そん時は、大谷くんが目印になるから大丈夫!」
にこっと笑う望月はやっぱり可愛い。今日は浴衣姿の相乗効果で、最上級に可愛く見えた。
不思議なもんだな。
望月なんて、小学校も同じで何回か同じクラスになったこともあるのに、こんなふうに好きになるなんて、最近まで想像もしていなかった。
それなのに今は、ただ隣にいるってだけで嬉しい。
クラスが違うから、よりいっそう嬉しいんだ。
大谷 圭介:
「はぐれんなよ」
それだけしか言えなくて、俺はまた集団にまぎれた。
これ以上、望月と話をしていたら、まわりに片想いが見透かされてしまいそうで。
望月 美羽:
「うん」
頷いた望月を気にしながら、一歩前を歩いた。
・ ・ ・
俺たちは、いろんな出店をまわった。
夕食代わりに焼きそばやお好み焼きを食べて、バナナチョコや綿菓子の甘さを堪能する。
主に食べ物メインに楽しむうちに、俺の変な緊張も解け、純粋に祭りを楽しんでいた。
中曽根 悠:
「なぁ、次は射的しよーぜ」
小池 隼人:
「ん、いいね」
中曽根が射的を提案し、何人かがそっちに付いていった。俺の横にいた隼人も、そっちに流れて離れる。
ふと団体の後ろで、望月が別の店を見ていることに気がついた。
大谷 圭介:
「望月、何見てんの」
望月 美羽:
「あれ、してみよっかな」
そう言って望月が指差したのは「くじ引き」と書かれた出店だった。
あまり人気がないのか、今すぐにでも引けそうなくらい閑散としていた。
大谷 圭介:
「くじか。やってみたら?」
望月 美羽:
「でも、みんな射的に行ってるし……」
そこで、俺は最大の勇気を出した。
大谷 圭介:
「……俺もやろっかな」
望月 美羽:
「え!」
望月は目を大きく開く。
うっ、いやって思われてないかな……。
望月 美羽:
「やろやろ! やった〜、仲間ゲット!」
その望月の言葉にホッとする。
そしてなんと、俺と望月だけが、くじ引きの出店に向かった。
思いがけない二人だけの別行動に、心が浮き立つ。
と言っても、すぐそこに射的を楽しむみんながいるのだが。
出店のおじさん:
「一回二百円ね」
出店のおじさんにそれぞれお金を渡すと、俺たちはどのくじを引こうかと手を伸ばした。
ここのくじ引きは、束になった紐から一本選んで引っ張り、その先に付いていたものがもらえるシステムだった。
二百円という値段だから、もちろん大したものは付いてない。
でも、望月と同じくじ引きを楽しめることがただ嬉しい。
望月 美羽:
「せーので、一緒に引こう!」
大谷 圭介:
「よし、わかった」
望月 美羽:
「せーの!」
ぐい!
互いに選んだ紐を引っ張った。
おじさんが引かれていく景品を見つけて、それぞれに渡してくれる。
出店のおじさん:
「はい、ありがとさん。こちらが景品だよ」
おじさんは、俺にビー玉の入った袋を、望月にはキャンディを渡した。
望月 美羽:
「わ、可愛い飴だぁ」
望月はハート形の棒キャンディに喜んだ。
俺は渡されたビー玉の袋を持って、苦虫を噛み潰したような顔をする。
大谷 圭介:
「俺はハズレだよ」
ビー玉なんか、腹の足しにもなんねぇ。
そう呟いた俺を、望月が下から覗き込んだ。
望月 美羽:
「そうかなぁ?」
透明袋に乱雑に入っているビー玉を見つめる望月。
キラキラしたビー玉が、そんな望月の肌にカラフルな影を落とした。
望月 美羽:
「当たりだよ。だって、キレイだもん」
そう言っている望月の目ん玉も、ビー玉みたいにキレイだった。
大谷 圭介:
(……ああ、俺)
大谷 圭介:
(望月のこういうところが……)
好きなんだ。
そう実感した。
前もこんなふうに、後ろ向きな俺に前向きな言葉をかけてくれたっけ。
いつも笑ってて。
いつも楽しそうにしていて。
いつも前を向いている。
向日葵みたいな子だ。
そんな望月が好きだと、あらためて思う。
大谷 圭介:
「……これ、望月にやるよ」
ビー玉の袋を差し出した。
望月 美羽:
「え、いいの?」
大谷 圭介:
「俺いらないし。やる」
なんだか照れ臭くて、ぶっきらぼうにしか言えなかった。
でも。
望月 美羽:
「嬉しい! ありがとう」
そう言いながら笑って受け取る望月を見て、俺も自然に笑ってしまったんだ。
◇ 続く ◇




