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この空色バス、春先行き。【完結】  作者: 猪野いのり
第三章 最終便、発車します《3年生編》
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番外編その2 片恋トランプ〈るりside〉小学6年生の冬

 ねえ。

 こんなトランプ恋占い知ってる?


 ハートのトランプを13枚だけ取り出して、裏を向けてシャッフルするの。

 好きな人のことを思い浮かべて、ひたすらに。

 そして表を向けて、1列に並べる。

 その中の、キングとクイーン。

 その2つの距離が近ければ近いほど、好きな人と自分の距離も近いんだって。


 それってなんだか、素敵だよね。



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


 番外編その2 片恋トランプ

 〈るりside〉小学6年生の冬


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



 羽鳥 梢:

「へー、初めて聞いた占いだ」


 私の机の前に立つ梢ちゃんがそうつぶやくと、横に立つ美羽がえっへんと胸をはった。


 望月 美羽:

「でしょでしょ! 最新の恋占いっ。さっそくやろうよ!」


 う、この流れはもしかして……。


 最近、恒例となりつつある流れに、私、戸田るりは冷や汗をかく。

 まわりをきょろきょろ見て、私たちの話を聞いているクラスメイトがいないか確認する。


 6年2組の教室は、今お昼休憩中で、男子のほとんどがグラウンドで遊んでいた。女子もグループを作って、それぞれしゃべっている。

 どうやら、誰も私たちの話を聞いてないみたいだとホッとした。


 望月 美羽:

「さあさあるりっち! さっそく中曽根くんとのを占おうじゃないっ」


 戸田 るり:

「わぁ美羽! 声小さくして!」


 羽鳥 梢:

「大丈夫だって、るり。誰も聞いてないって」


 羽鳥 梢:

「それにほら、男子は今、グラウンドで氷鬼してるし」


 梢ちゃんの言葉に、すぐ横の窓からグラウンドを見れば、男子たちは寒い中走り回って鬼ごっこをしている。


 その中で見つけた片想いの相手──中曽根悠。


 今は捕まってしまったのか、足を大きく開いて立って、ひたすらその下をくぐってもらえるのを寒そうにして待っていた。

 そこから視線を美羽にうつすと、いつの間に用意していたのか、トランプをジャジャーン、と掲げている。


 望月 美羽:

「もうハートだけ取り出してあるからね! さあ、彼のことを考えて、切ってみましょー!」


 戸田 るり:

「う……わかった!」


 占いは、私も嫌いじゃない。

 というか、恋占いならワラにもすがりたい気分だ。


 この夏に、中曽根への恋心を自覚した私。

 だけど、長年友達だった彼は、全然私を恋愛対象として見ていない気がする。

 そんな私の、今の恋愛運はいかほどか。

 小さく喉を鳴らして、美羽の手から13枚のトランプを受け取った。

 少し緊張してトランプを切る。

 頭の中では中曽根を思い浮かべて。


 うう……神様、どうか、素敵な結果を出してください!


 私は手を止めると、表に向けてそれを横にスライドさせた。

 現れたハートのトランプの数字たち。

 その結果は……。


 望月 美羽:

「……ありゃりゃ」


 羽鳥 梢:

「……あー……」


 戸田 るり:

「うっ……」


 う……嘘でしょ!?


 まさかのまさか!

 キングとクイーンは喧嘩をするかのように、端っこと端っこに鎮座していた。

 私と中曽根の距離……こんなに開いてるってこと!?

 相性最悪じゃない!!


 戸田 るり:

「嘘〜!!」


 望月 美羽:

「る、るりっち、これはあくまでも占いだから!」


 羽鳥 梢:

「そうそう!たまたまだよ、きっと!」


 戸田 るり:

「そうかもしれないけど……」


 でも、こんな最悪な結果を出されては精神的ダメージが大きすぎる。

 ひれ伏すように、机に身を投げた。

 私の前で、梢ちゃんと美羽が慌てたようにしゃべり始める。


 羽鳥 梢:

「じゃ、じゃあ私も、占ってみようかなっ」


 望月 美羽:

「え、梢ちゃん、好きな人いるの!?」


 羽鳥 梢:

「え? お父さんとの相性だけど」


 望月 美羽:

「んもー! そうじゃないでしょ梢ちゃーん!」


 落ち込んだ気分のまま、2人のやり取りを見守る。

 梢ちゃんはお父さんとは2枚分、美羽は隣のクラスの牧原くんと占って、4枚分の間を開けてキングとクイーンが並んでいた。


 私と中曽根みたいに端っこと端っこなんて、滅多にないんじゃないのかな。


 戸田 るり:

「うう……。もう1回だけ、してみようかなぁ」


 結果に納得したくなくて、つい占いにあるまじき再チャレンジをしそうになる。


 とその時、廊下からバタバタと教室に流れ込んでくる男の子たちが現れた。

 どうやら、休み時間が終わり近くになって戻ってきたようだ。


 それに中曽根ももちろんいて、彼は私の隣のくっついている席に戻るべく、こちらへと近づいてきていた。

 うわわ、これじゃもう占えない!


 クラスメイト:

「あー、疲れたー」


 中曽根 悠:

「俺なんか、ずっと捕まってたからすっげーさみーよ! 全然こっちに来てくれないもんなー」


 中曽根は友達としゃべりながら、席に着こうとする。

 すると、座る時の勢いがよかったのか、肘が私の腕に当たる。


 戸田 るり:

「あ!」


 その衝撃で、私の手からトランプが散らばってしまった。


 中曽根 悠:

「あ、ごめん、戸田!」


 気づいた中曽根が、慌ててカードをかき集める。

 私も膝に散らばったそれを集めて、中曽根が拾ってくれた約半分のカードを受け取った。

 持っていたのは、ハートの13枚だけだったから、拾うのにそんなに時間はかからなかった。


 中曽根 悠:

「これで全部?」


 戸田 るり:

「うん。ありがとう」


 そんなやり取りをしている私を、梢ちゃんと美羽がニヤニヤと見つめている。


 ううう、恥ずかしい!

 でも、中曽根としゃべれてラッキーだ。


 ──とその時チャイムが鳴り、梢ちゃんと美羽は慌てて席へと戻った。

 あ、美羽ったら、トランプ忘れてってる。


 でも担任の先生が教室に入ってきてしまったので、私は次の休み時間に返そうと、トランプを見た。


 ハートの13枚。

 表を向けてみる。


 戸田 るり:

(……あれ)


 戸田 るり:

「!!」


 中曽根に、半分拾ってもらったハートのトランプ。


 その中でキングとクイーンが、仲良さそうに隣同士に並んでいた。




 ◇ 終わり ◇

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