番外編その2 片恋トランプ〈るりside〉小学6年生の冬
ねえ。
こんなトランプ恋占い知ってる?
ハートのトランプを13枚だけ取り出して、裏を向けてシャッフルするの。
好きな人のことを思い浮かべて、ひたすらに。
そして表を向けて、1列に並べる。
その中の、キングとクイーン。
その2つの距離が近ければ近いほど、好きな人と自分の距離も近いんだって。
それってなんだか、素敵だよね。
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番外編その2 片恋トランプ
〈るりside〉小学6年生の冬
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羽鳥 梢:
「へー、初めて聞いた占いだ」
私の机の前に立つ梢ちゃんがそうつぶやくと、横に立つ美羽がえっへんと胸をはった。
望月 美羽:
「でしょでしょ! 最新の恋占いっ。さっそくやろうよ!」
う、この流れはもしかして……。
最近、恒例となりつつある流れに、私、戸田るりは冷や汗をかく。
まわりをきょろきょろ見て、私たちの話を聞いているクラスメイトがいないか確認する。
6年2組の教室は、今お昼休憩中で、男子のほとんどがグラウンドで遊んでいた。女子もグループを作って、それぞれしゃべっている。
どうやら、誰も私たちの話を聞いてないみたいだとホッとした。
望月 美羽:
「さあさあるりっち! さっそく中曽根くんとのを占おうじゃないっ」
戸田 るり:
「わぁ美羽! 声小さくして!」
羽鳥 梢:
「大丈夫だって、るり。誰も聞いてないって」
羽鳥 梢:
「それにほら、男子は今、グラウンドで氷鬼してるし」
梢ちゃんの言葉に、すぐ横の窓からグラウンドを見れば、男子たちは寒い中走り回って鬼ごっこをしている。
その中で見つけた片想いの相手──中曽根悠。
今は捕まってしまったのか、足を大きく開いて立って、ひたすらその下をくぐってもらえるのを寒そうにして待っていた。
そこから視線を美羽にうつすと、いつの間に用意していたのか、トランプをジャジャーン、と掲げている。
望月 美羽:
「もうハートだけ取り出してあるからね! さあ、彼のことを考えて、切ってみましょー!」
戸田 るり:
「う……わかった!」
占いは、私も嫌いじゃない。
というか、恋占いならワラにもすがりたい気分だ。
この夏に、中曽根への恋心を自覚した私。
だけど、長年友達だった彼は、全然私を恋愛対象として見ていない気がする。
そんな私の、今の恋愛運はいかほどか。
小さく喉を鳴らして、美羽の手から13枚のトランプを受け取った。
少し緊張してトランプを切る。
頭の中では中曽根を思い浮かべて。
うう……神様、どうか、素敵な結果を出してください!
私は手を止めると、表に向けてそれを横にスライドさせた。
現れたハートのトランプの数字たち。
その結果は……。
望月 美羽:
「……ありゃりゃ」
羽鳥 梢:
「……あー……」
戸田 るり:
「うっ……」
う……嘘でしょ!?
まさかのまさか!
キングとクイーンは喧嘩をするかのように、端っこと端っこに鎮座していた。
私と中曽根の距離……こんなに開いてるってこと!?
相性最悪じゃない!!
戸田 るり:
「嘘〜!!」
望月 美羽:
「る、るりっち、これはあくまでも占いだから!」
羽鳥 梢:
「そうそう!たまたまだよ、きっと!」
戸田 るり:
「そうかもしれないけど……」
でも、こんな最悪な結果を出されては精神的ダメージが大きすぎる。
ひれ伏すように、机に身を投げた。
私の前で、梢ちゃんと美羽が慌てたようにしゃべり始める。
羽鳥 梢:
「じゃ、じゃあ私も、占ってみようかなっ」
望月 美羽:
「え、梢ちゃん、好きな人いるの!?」
羽鳥 梢:
「え? お父さんとの相性だけど」
望月 美羽:
「んもー! そうじゃないでしょ梢ちゃーん!」
落ち込んだ気分のまま、2人のやり取りを見守る。
梢ちゃんはお父さんとは2枚分、美羽は隣のクラスの牧原くんと占って、4枚分の間を開けてキングとクイーンが並んでいた。
私と中曽根みたいに端っこと端っこなんて、滅多にないんじゃないのかな。
戸田 るり:
「うう……。もう1回だけ、してみようかなぁ」
結果に納得したくなくて、つい占いにあるまじき再チャレンジをしそうになる。
とその時、廊下からバタバタと教室に流れ込んでくる男の子たちが現れた。
どうやら、休み時間が終わり近くになって戻ってきたようだ。
それに中曽根ももちろんいて、彼は私の隣のくっついている席に戻るべく、こちらへと近づいてきていた。
うわわ、これじゃもう占えない!
クラスメイト:
「あー、疲れたー」
中曽根 悠:
「俺なんか、ずっと捕まってたからすっげーさみーよ! 全然こっちに来てくれないもんなー」
中曽根は友達としゃべりながら、席に着こうとする。
すると、座る時の勢いがよかったのか、肘が私の腕に当たる。
戸田 るり:
「あ!」
その衝撃で、私の手からトランプが散らばってしまった。
中曽根 悠:
「あ、ごめん、戸田!」
気づいた中曽根が、慌ててカードをかき集める。
私も膝に散らばったそれを集めて、中曽根が拾ってくれた約半分のカードを受け取った。
持っていたのは、ハートの13枚だけだったから、拾うのにそんなに時間はかからなかった。
中曽根 悠:
「これで全部?」
戸田 るり:
「うん。ありがとう」
そんなやり取りをしている私を、梢ちゃんと美羽がニヤニヤと見つめている。
ううう、恥ずかしい!
でも、中曽根としゃべれてラッキーだ。
──とその時チャイムが鳴り、梢ちゃんと美羽は慌てて席へと戻った。
あ、美羽ったら、トランプ忘れてってる。
でも担任の先生が教室に入ってきてしまったので、私は次の休み時間に返そうと、トランプを見た。
ハートの13枚。
表を向けてみる。
戸田 るり:
(……あれ)
戸田 るり:
「!!」
中曽根に、半分拾ってもらったハートのトランプ。
その中でキングとクイーンが、仲良さそうに隣同士に並んでいた。
◇ 終わり ◇




