Ep.50 挑め!プロポーズ大作戦 (2)「リサーチせよ!①」
坂本 平八:
「篠田先生に、ちょっとさりげなーく、どんなプロポーズが理想とか……聞けないか」
そう坂本先生に言われた私。
戸田るり、15歳。
人の恋愛ごとには、興味津々なお年頃である。
しかもプロポーズなんて、素敵すぎる……!!
はりきって請け負った私は、翌日の放課後、勇んで保健室へと足を向けた。
戸田 るり:
「篠田先生、失礼します」
篠田 かなえ:
「あら、戸田さん」
保健室にいた篠田先生は、相変わらずキレイ。
優しそうな笑みで、私を出迎えてくれた。
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挑め!プロポーズ大作戦
(2)「リサーチせよ!①」
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保健室にはさいわい誰もおらず、私はにやけそうになる顔を伏せて中に入る。
戸田 るり:
「今、大丈夫ですか? ちょっとお話したくて」
篠田 かなえ:
「ええ、もちろんよ」
篠田先生は私をソファに招いて、横に並んで座ってくれた。
向かい合わせよりも隣に座った方が、よりリラックスできる気がする。それも先生の心遣いなのかな、なんて思って私は、話し始めた。
戸田 るり:
「ええと、修学旅行のときは、ありがとうございました」
篠田 かなえ:
「ううん。ちゃんと仲直りできたみたいでよかったわ」
夏休みの修学旅行で、悠との悩みを聞いてくれたことに、まずお礼を述べる。
これは坂本先生の依頼がなくても、言わなきゃと思っていたことだったから、ちょうどよかった。
戸田 るり:
「あの時、先生に話を聞いてもらえて、本当によかったです」
戸田 るり:
「それで、これ。お礼です」
私はそう言って、昨日作ったクッキーが入ったラッピング袋を先生に渡した。
篠田 かなえ:
「あら、ありがとう。戸田さんは本当にお菓子作りが上手ね」
その言葉に、ピンと私のセンサーが反応する。
戸田 るり:
「えへへ。いいお嫁さんになれそうですか?」
篠田 かなえ:
「もちろん」
にっこり笑う篠田先生。
私が話をうまく持っていけそう、と考えているなんて、思ってもいないだろう。
戸田 るり:
「先生も素敵なお嫁さんになりそう」
篠田 かなえ:
「え?」
戸田 るり:
「篠田先生、坂本先生と結婚はしないんですか?」
篠田 かなえ:
「んー。今のところは、まだねぇ」
先生はちょっと困った顔をして笑う。
じつは坂本先生がもうプロポーズを考えているなんて知ったら、驚くだろうなぁ。
うう、教えたい。言っちゃいたい。
でも我慢ガマン!
この流れなら聞けるかな? と、私は今日の本命の質問をぶつけることにした。
戸田 るり:
「篠田先生、理想のプロポーズとかありますか?」
篠田 かなえ:
「理想のプロポーズ?」
きょとんとした篠田先生に「あ、ストレートすぎたかな」と、ちょっと冷や汗。
でも先生は、純粋な私の興味だと思ってくれたようで、うーんと天井を見上げると、ちょっと頬を赤くした。
篠田 かなえ:
「まぁ、ないわけじゃないけど……」
戸田 るり:
「ど、どんなのですか?」
先生の横顔がちょっと可愛くて、ドキドキと小さく胸が高鳴る。
身を乗り出しそうになる私に笑って、こっそり教えてくれた。
篠田 かなえ:
「私ね、けっこうベタなのが好きみたいで」
篠田 かなえ:
「王子様みたいにひざまづいて、指輪を差し出してくれる、なんて素敵だなぁって思っちゃうの」
戸田 るり:
「わあ、素敵!」
篠田 かなえ:
「あと、花束とか夜景とか」
戸田 るり:
「うんうん」
篠田 かなえ:
「お姫様みたいで憧れるわよね」
戸田 るり:
「うん! 憧れるー!」
うわあ、私と先生のツボってとても似ているのかも。
先生の語る理想のプロポーズは、恋愛ドラマや恋愛映画のそれのようで、聞いていてとてもドキドキした。
頭の中で、坂本先生がそれをするシーンを想像してみて、ちょっとだけ笑みがこぼれてしまう。
戸田 るり:
「坂本先生は王子様よりも、騎士っぽい」
体格のいい坂本先生。
花束と指輪を持って篠田先生にひざまづくのを想像すると、マントと白馬の王子様よりは、甲冑姿の騎士っぽい感じがするなぁなんて考えちゃう。
篠田 かなえ:
「ふふ。彼がそんなことするとは思わないけどね」
篠田 かなえ:
「まぁ現実にされたら、どんなのでも嬉しいんでしょうけど」
まだ先の話ね、なんて篠田先生は言う。
ううん、先生。
じつはすぐのお話なんですよ。
戸田 るり:
(いいなぁ先生。あんなに一生懸命プロポーズを考えてもらえて)
プロポーズや結婚なんて、私にとってはまだまだ先のお話で憧れだけでしかないけれど、実際目の当たりにしちゃうと、羨ましいなぁって思っちゃう。
私も十何年後かには、結婚したりとかするのかな。
ぼんやりと、想像上の大人の自分が頭上に浮かぶ。
その目の前に、王子様のようにひざまづく相手はもちろん、大人になった悠で……。
………………………………………
中曽根 悠(大人※想像):
「結婚してください」
戸田 るり(大人※想像):
「はい……!」
………………………………………
ひゃああああ〜!!
すごくいいかも……!!
篠田 かなえ:
「あら戸田さん、熱っぽい?」
戸田 るり:
「いえ、大丈夫です!!」
暴走しだしそうな自分の妄想を払いのけて、真っ赤な顔をぶんぶん振る。
今は自分じゃなくて、篠田先生のことでしょう!
私は慌てて表情をとりつくろい、しばらく篠田先生とたわいない話を楽しんだ。
・ ・ ・
戸田 るり:
「──らしいです」
坂本 平八:
「は、花束に指輪だとぉ〜!?」
翌日、こっそり資料室で戸田から報告してもらった「かなちゃんの理想プロポーズ」は、想像以上のハードルの高さだった。
坂本 平八:
(かなちゃん、けっこう乙女思考だったんだな)
指輪なんてサイズもわからない。
花束だって、何の花にすればいいのだ。
というか、当日それらをどう持っておけばいいのだ!?
報告を受けたのはいいものの、うんうん悩むしかない俺。
しかし実現させたい。
彼女の望むものならば、それを叶えてあげたいのだ。
坂本 平八:
「よ……よし! ありがとう戸田! 頑張るよ!!」
戸田 るり:
「はい!」
意気込む俺の前で、戸田はまたキラキラと目を輝かせて応えてくれる。
リサーチはできた。
あとは準備と調達だ!!
◇ 続く ◇




