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この空色バス、春先行き。【完結】  作者: 猪野いのり
第三章 最終便、発車します《3年生編》
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Ep.50 挑め!プロポーズ大作戦 (2)「リサーチせよ!①」

 坂本 平八:

「篠田先生に、ちょっとさりげなーく、どんなプロポーズが理想とか……聞けないか」


 そう坂本先生に言われた私。

 戸田るり、15歳。

 人の恋愛ごとには、興味津々なお年頃である。

 しかもプロポーズなんて、素敵すぎる……!!


 はりきって請け負った私は、翌日の放課後、勇んで保健室へと足を向けた。


 戸田 るり:

「篠田先生、失礼します」


 篠田 かなえ:

「あら、戸田さん」


 保健室にいた篠田先生は、相変わらずキレイ。

 優しそうな笑みで、私を出迎えてくれた。



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


 挑め!プロポーズ大作戦

(2)「リサーチせよ!①」


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



 保健室にはさいわい誰もおらず、私はにやけそうになる顔を伏せて中に入る。


 戸田 るり:

「今、大丈夫ですか? ちょっとお話したくて」


 篠田 かなえ:

「ええ、もちろんよ」


 篠田先生は私をソファに招いて、横に並んで座ってくれた。

 向かい合わせよりも隣に座った方が、よりリラックスできる気がする。それも先生の心遣いなのかな、なんて思って私は、話し始めた。


 戸田 るり:

「ええと、修学旅行のときは、ありがとうございました」


 篠田 かなえ:

「ううん。ちゃんと仲直りできたみたいでよかったわ」


 夏休みの修学旅行で、悠との悩みを聞いてくれたことに、まずお礼を述べる。

 これは坂本先生の依頼がなくても、言わなきゃと思っていたことだったから、ちょうどよかった。


 戸田 るり:

「あの時、先生に話を聞いてもらえて、本当によかったです」


 戸田 るり:

「それで、これ。お礼です」


 私はそう言って、昨日作ったクッキーが入ったラッピング袋を先生に渡した。


 篠田 かなえ:

「あら、ありがとう。戸田さんは本当にお菓子作りが上手ね」


 その言葉に、ピンと私のセンサーが反応する。


 戸田 るり:

「えへへ。いいお嫁さんになれそうですか?」


 篠田 かなえ:

「もちろん」


 にっこり笑う篠田先生。

 私が話をうまく持っていけそう、と考えているなんて、思ってもいないだろう。


 戸田 るり:

「先生も素敵なお嫁さんになりそう」


 篠田 かなえ:

「え?」


 戸田 るり:

「篠田先生、坂本先生と結婚はしないんですか?」


 篠田 かなえ:

「んー。今のところは、まだねぇ」


 先生はちょっと困った顔をして笑う。

 じつは坂本先生がもうプロポーズを考えているなんて知ったら、驚くだろうなぁ。


 うう、教えたい。言っちゃいたい。

 でも我慢ガマン!


 この流れなら聞けるかな? と、私は今日の本命の質問をぶつけることにした。


 戸田 るり:

「篠田先生、理想のプロポーズとかありますか?」


 篠田 かなえ:

「理想のプロポーズ?」


 きょとんとした篠田先生に「あ、ストレートすぎたかな」と、ちょっと冷や汗。

 でも先生は、純粋な私の興味だと思ってくれたようで、うーんと天井を見上げると、ちょっと頬を赤くした。


 篠田 かなえ:

「まぁ、ないわけじゃないけど……」


 戸田 るり:

「ど、どんなのですか?」


 先生の横顔がちょっと可愛くて、ドキドキと小さく胸が高鳴る。

 身を乗り出しそうになる私に笑って、こっそり教えてくれた。


 篠田 かなえ:

「私ね、けっこうベタなのが好きみたいで」


 篠田 かなえ:

「王子様みたいにひざまづいて、指輪を差し出してくれる、なんて素敵だなぁって思っちゃうの」


 戸田 るり:

「わあ、素敵!」


 篠田 かなえ:

「あと、花束とか夜景とか」


 戸田 るり:

「うんうん」


 篠田 かなえ:

「お姫様みたいで憧れるわよね」


 戸田 るり:

「うん! 憧れるー!」


 うわあ、私と先生のツボってとても似ているのかも。

 先生の語る理想のプロポーズは、恋愛ドラマや恋愛映画のそれのようで、聞いていてとてもドキドキした。

 頭の中で、坂本先生がそれをするシーンを想像してみて、ちょっとだけ笑みがこぼれてしまう。


 戸田 るり:

「坂本先生は王子様よりも、騎士っぽい」


 体格のいい坂本先生。

 花束と指輪を持って篠田先生にひざまづくのを想像すると、マントと白馬の王子様よりは、甲冑姿の騎士っぽい感じがするなぁなんて考えちゃう。


 篠田 かなえ:

「ふふ。彼がそんなことするとは思わないけどね」


 篠田 かなえ:

「まぁ現実にされたら、どんなのでも嬉しいんでしょうけど」


 まだ先の話ね、なんて篠田先生は言う。

 ううん、先生。

 じつはすぐのお話なんですよ。


 戸田 るり:

(いいなぁ先生。あんなに一生懸命プロポーズを考えてもらえて)


 プロポーズや結婚なんて、私にとってはまだまだ先のお話で憧れだけでしかないけれど、実際目の当たりにしちゃうと、羨ましいなぁって思っちゃう。


 私も十何年後かには、結婚したりとかするのかな。

 ぼんやりと、想像上の大人の自分が頭上に浮かぶ。

 その目の前に、王子様のようにひざまづく相手はもちろん、大人になった悠で……。


………………………………………


 中曽根 悠(大人※想像):

「結婚してください」


 戸田 るり(大人※想像):

「はい……!」


………………………………………


 ひゃああああ〜!!

 すごくいいかも……!!


 篠田 かなえ:

「あら戸田さん、熱っぽい?」


 戸田 るり:

「いえ、大丈夫です!!」


 暴走しだしそうな自分の妄想を払いのけて、真っ赤な顔をぶんぶん振る。

 今は自分じゃなくて、篠田先生のことでしょう!

 私は慌てて表情をとりつくろい、しばらく篠田先生とたわいない話を楽しんだ。



 ・   ・   ・



 戸田 るり:

「──らしいです」


 坂本 平八:

「は、花束に指輪だとぉ〜!?」


 翌日、こっそり資料室で戸田から報告してもらった「かなちゃんの理想プロポーズ」は、想像以上のハードルの高さだった。


 坂本 平八:

(かなちゃん、けっこう乙女思考だったんだな)


 指輪なんてサイズもわからない。

 花束だって、何の花にすればいいのだ。

 というか、当日それらをどう持っておけばいいのだ!?


 報告を受けたのはいいものの、うんうん悩むしかない俺。

 しかし実現させたい。

 彼女の望むものならば、それを叶えてあげたいのだ。


 坂本 平八:

「よ……よし! ありがとう戸田! 頑張るよ!!」


 戸田 るり:

「はい!」


 意気込む俺の前で、戸田はまたキラキラと目を輝かせて応えてくれる。

 リサーチはできた。

 あとは準備と調達だ!!




 ◇ 続く ◇

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