表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/60

Ep.5 お姫様ではいられない (前編)

あの消しゴム事件から、1ヶ月が経った。

もう、夏休み直前となっている。


中曽根 悠:

「どっちが先に使いきれるか、勝負な!」


あの日、中曽根はそう言って去った。

おそらく、多分、きっと。

私たちは両想い。

そうとはわかっていても。

一向になくならない消しゴムに反して、私の自信はどんどんなくなっていく。


本当にあれは、現実だったの?

私が都合よく見てしまった、夢なんじゃないかな?


あれ以来、中曽根との仲は元に戻ったけれど、あまりにも以前と同じすぎて、あの出来事が本当だったのか自信がなくなっていた。


私……どうすればいいのかな?



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


お姫様ではいられない

(前編)


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



望月 美羽:

「そりゃあ、るりっちからいくしかないでしょう!!」


戸田 るり:

「ええ〜!」


ビシッと人差し指を突き刺してくる美羽に、やっぱりと思いつつも動揺した。


羽鳥 梢:

「まあ、みずから動かないとねぇ」


戸田 るり:

「梢ちゃんまで……」


いつもなら美羽のたしなめ役となる梢ちゃんまで、美羽のアドバイスを肯定する。

私は「ううぅ」と、うなりながら抱きしめたクッションに顔を突っ込んだ。


今日は、私の部屋に美羽と梢ちゃんを招いて、夏休みの遊びの計画を立てることにした。

……というのは建前で。

私の恋愛相談に乗ってもらうことが、本来の目的だったりする。


戸田 るり:

「やっぱ、そうなのかぁ」


わかってはいた。

動かなきゃ、何も始まらないって。

でも、どうしてもその踏ん切りがつかなくて、2人に背中を押してもらいたかったんだ。


望月 美羽:

「あのねぇ、るりっち」


美羽はやけに神妙な顔を、ずいっと近づけてきた。


望月 美羽:

「もう、男子にばかり期待をする時代は終わっているの! 今は女子から動かないと、なーんにも始まらないんだから! 」


戸田 るり:

「そ、そうなの?」


やけに迫力あるその物言いに、私は思わず身を正す。


望月 美羽:

「そう! 白馬の王子様なんて、現実にはいないんだから! お姫様が待って寝ていたら、あっという間におばさんよ!! 」


うう、美羽にしては、妙に説得力のある言い方……。

そんな美羽の背後にある私の本棚には、幼い頃の「シンデレラ」や「白雪姫」なんかの絵本の背表紙が見えていて、よけいいたたまれなくなる。

待っていて幸運が巡ってくるのは、絵本のお姫様だけ、か。


戸田 るり:

(美羽のことだから、ここからガンガン押せ押せってなるかなぁ)


と覚悟していたら。


望月 美羽:

「──でもまぁ、不安になる気持ちはわかるけどね。 やっぱり本命相手となると 」


あれ?

やけに落ち着いた言葉になった。


羽鳥 梢:

「美羽にしては、大人な意見ね」


梢ちゃんも同じことを思ったらしく、美羽にそう言った。


望月 美羽:

「まぁ、私も成長してるってことで」


羽鳥 梢:

「なになに、不安になるような本命相手ができたわけ?」


梢ちゃんが少しにやけて、そう言うと。


望月 美羽:

「え!!」


思いがけず、美羽は顔を赤らめて動揺した。

珍しい、恋愛特攻隊長のあの美羽が。


戸田 るり:

「え、そうなの美羽!? 誰だれ? 」


望月 美羽:

「もー、今はるりっちの話でしょ〜!」


美羽は慌てて話を戻そうとする。

わぁ、本当に珍しいな。

いつもなら、ペラペラ聞いてもないのに話してくれるあの美羽が。

でも、それだけ今回の恋は真剣なのかもしれない。

それだと、変にからかうのも悪いような気がして、私はそれ以上追求することをやめた。

梢ちゃんも、私の話に戻そうとこちらを向く。


羽鳥 梢:

「そうそう、るりの話だったね」


羽鳥 梢:

「で、どうするの? いつ告白する? 」


望月 美羽:

「告白っていうかこの場合、両思い確認だよねー。 いいなぁ、両思い確定組は 」


戸田 るり:

「うう、プレッシャー与えないで……」


私は2人の視線を逃れて、壁にあるカレンダーを見つめた。

夏休み開始の日にちまで、あと1週間弱。


戸田 るり:

「決戦は……」


戸田 るり:

「夏休み前に!!」


拳をぐっと握りしめて、上を向いた私に。


望月 美羽:

「おお、るりっちの闘魂が見える!」


羽鳥 梢:

「イケイケるりー!」


美羽と梢ちゃんははやし立てた。



・   ・   ・



──なんてことがあったのが、三日前。


篠田 かなえ:

「じゃあ私、しばらく出てるから」


戸田 るり:

「! 篠田先生……っ」


保健室にて思いがけず手に入れた告白のチャンスは、あまりにも唐突だった。


パタリ、と静かに閉じられた保健室の扉。

戸惑う私の真向かいには、どこか少しぼんやりとこちらを見ている中曽根の姿があった。




◇ 後編へ続く ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ