Ep.40 ジェラート・ジェラシー (4)「ヤキモチ妬き彼女」
望月とケンカ別れをした俺は、足をずんずん鳴らして大通りを1人で歩いていた。
大谷 圭介:
(なーにがデリカシーないだ! ないのはそっちじゃん!)
思い出しても、腹が立つ。
俺との待ち合わせ場所で、昔の片想い相手と楽しそうに話していた望月。
何を話していたかは知らんが、その顔は赤く染まっていて、まんま昔の望月だった。
今は俺の彼女なのに、どうしてそんな顔を、よりによってそいつに見せちゃうんだよ。
大谷 圭介:
(片想いは、卒業できたと思ってたのになぁ)
付き合ってるのに、好きなのは俺ばっかりな気がする。
はぁ、と盛大にため息をついたときだった。
中曽根 悠:
「あれ、大谷。デートはどうした」
大谷 圭介:
「う、中曽根……」
背後から、同じく部活帰りの中曽根の声が聞こえた。
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ジェラート・ジェラシー
(4)「ヤキモチ妬き彼女」
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中曽根は御手洗と一緒にいた。
隼人はたしか体育委員会の用事があるとかで、まだ学校に残ると言っていたな。
御手洗 満:
「望月さんと、ジェラート屋さんに行くって言ってたよね?」
御手洗も首をかしげて、俺を見つめる。
こんな時ばかりは、ペラペラとのろけてしまう自分の性格が恨めしいぜ。
ちくしょー、こうなったら……!
大谷 圭介:
「中曽根、御手洗! ちょっと付き合え!」
2人の背後にまわりこむと、間に割り込みガシッと肩に腕を乗っけた。
中曽根 悠:
「へ?」
御手洗 満:
「えー?」
ここで俺と会ったのが運の尽きである。
俺は嫌がる2人を引きずって、近くのドーナツ屋へと向かったのだった。
・ ・ ・
中曽根 悠:
「くだらねーことで、ケンカしてるなぁ」
トレイに山盛り乗せられたドーナツをシェアしあう中、愚痴りまくった俺に対して、中曽根は開口一番に容赦のない言葉を浴びせる。
くそー、鼻にドーナツのクリームつけやがって、この可愛ぶりっこのイケメンがぁ!
大谷 圭介:
「お前にはくだらなくても、俺は真剣なんだ!」
がぶっとシュガーまみれのドーナツを食らう。
三口で無くなったそれをジュースで流し込んでいると、ずっと黙って聞いていた御手洗が口を開いた。
御手洗 満:
「まぁたしかに、昔の片想い相手と仲良く話されたら、いい気はしないよな」
ボール型のドーナツを口に放り込みながらそう言う御手洗に、俺はつい「だろだろ!?」と前のめりになる。
けれどそんな俺に対し、御手洗は急にビシッと指をさしてきた。
御手洗 満:
「でもお前、最近いい気になってたろ」
大谷 圭介:
「へ!?」
鼻っ柱にくっつくほど、近づけられた指先。
それをそのまま揺らしながら、御手洗は不敵に笑う。
御手洗 満:
「応援団の女子の声援、望月さんもいるのに笑って応えててさ」
大谷 圭介:
「え、いや、あれは……」
そういえば御手洗も、今年は応援団に参加していたな。
落ち着いたこいつが応援団なんて、何の風の吹き回しかは知らないが、まさかこいつにそれを指摘されるとは。
いやでも、無視することもできんだろう!?
中曽根 悠:
「彼女の前でかぁ。サイテーだなぁ」
大谷 圭介:
「な、中曽根クンよ、容赦なさすぎねぇ!?」
だって、仕方なくないか?
後輩の女の子が、応援してくれたんだぞ?
これで張り切らなきゃ男じゃないし、俺だって黄色い声でキャーキャー言われたい!
なんてことを力説したら、目の前の御手洗は苦笑して、中曽根は呆れ顔になった。
御手洗 満:
「それは、望月さんもヤキモチを妬いちゃうよね」
大谷 圭介:
「へ?」
御手洗 満:
「望月さんの『デリカシーない』って言葉、つまりそういうことなんじゃないの」
……えーと。それはつまり。
大谷 圭介:
「……望月も、ヤキモチ妬いてたってこと?」
中曽根 悠:
「何を今さら言ってんだ」
中曽根は呆れ顔のまま、スズッとジュースをすすった。
しかし俺の口角は、ついつい緩んでしまう。
大谷 圭介:
「へへー、何だ-、ヤキモチかー」
そうかそうか、望月も後輩に、ヤキモチ妬いてたんだな。
何とも可愛い彼女である。
一気に俺の気分はよくなった。
御手洗 満:
「あのねえ、大谷。喜ぶところじゃないでしょ、そこは」
が、しかし。御手洗に呆れた顔を向けられる。
御手洗 満:
「付き合ってから、不安にさせてどうするんだよ」
大谷 圭介:
「うっ……」
御手洗 満:
「彼女にしたとたん安心して、自分は他の女子に目が行くのかー」
中曽根 悠:
「うわぁー、サイテーだなぁ、大谷」
芝居がかる御手洗に、棒読みの中曽根。
何だ、こいつらの妙なコンビネーションは!
大谷 圭介:
「お、俺が悪いのか!?」
中曽根 悠:
「どっちも悪くねーよ」
そこで中曽根は笑って、ようやく鼻の頭のクリームに気づき指でこすった。
隣にいた御手洗が、そんな中曽根を頬杖つきながら見て苦笑する。
御手洗 満:
「そ、どっちも悪くないね。だから、女の子にいい顔するのはやめにして、さっさと仲直りしなよ」
大谷 圭介:
「わかってるよ……」
大谷 圭介:
「……でも、女子にはキャーキャー言われたいな~」
俺の返答に、2人が小さくズッこけた。
しかし、望月がヤキモチを妬いていたということに俺はすっかり気をよくする。
できればまだ、この優越感に浸りたい。
大谷 圭介:
「もう少し、ヤキモチ妬いてもらいてーもん」
中曽根 悠:
「おいおい、大谷」
イケメン中曽根にたしなめられても、何ら効果はない。
モテるやつにはわからんのだ。
好きなやつにヤキモチを妬いてもらえるのが、どれだけ男として嬉しいことかなんて。
しかも俺は自慢できんが、女の子にチヤホヤされることは滅多にないので、されたいのだ!
そんなことを考えていた俺に、何を思ったのだろうか。御手洗が、じとっとこちらを見てきた。
御手洗 満:
「ふーん……」
御手洗 満:
「望月さん、可哀想」
ふぅ、とやけに、大きくため息をついた。
そしてとんでもないことを言いやがる。
御手洗 満:
「俺、望月さん狙おうかなぁ」
大谷 圭介:
「!?」
ぐっと、食べかけたドーナツが喉につまった。
ゲホゲホと咳をした俺に、御手洗はまだ冷めた目をして言葉を続ける。
御手洗 満:
「今、隣の席なんだけどさ。毎日可愛いなーっ思って見てたんだよね」
大谷 圭介:
「ゲホッ、……は!? 御手洗、何言って……」
御手洗と望月は今、同じクラス、4組だ。
でも3年生でクラスメイトになるまで、接点はなかったはずだろ!?
大谷 圭介:
「またまた、ご冗談を~」
どうせ俺をたきつけるための嘘だろ、なんて笑って、ジュースでドーナツを流し込んだんだけど。
御手洗 満:
「……どうかな?」
御手洗は不敵に笑っただけで、席から立ち上がった。
正直、御手洗の本心は──よくわからん。
御手洗 満:
「じゃあ俺、塾があるから先に行くね」
大谷 圭介:
「あ、御手洗……っ」
御手洗はカバンを肩にかけると「バイバイ」と言って、先に店から出てしまった。
残された中曽根も、口をまぬけに開けてそんな御手洗を見送っている。
俺は慌てて、中曽根の両肩をガシッとつかんだ。
大谷 圭介:
「おい中曽根ぇ! 今のはどういうことだ!?」
中曽根 悠:
「お、俺に聞くなよ!」
大谷 圭介:
「あいつマジで、望月のこと好きなの!?」
中曽根 悠:
「知らねぇよ!」
まったく役に立たないイケメンだ!
俺は中曽根の戸惑い顔に見守られながら、たらたらとイヤな汗を流した。
◇ 続く ◇




