Ep.40 ジェラート・ジェラシー (3)「大好きな彼」
圭介くんとケンカをしてしまった。
こんな時に頼りになるのは、やはり先輩彼女であるるりっちだ。
スマホでるりっちに連絡を取ると、ありがたいことにすぐ来てくれるという。
ええい、この際だから梢ちゃんも道連れだぁ! と、結局3人集まることになって、私たちは集結する。
本当なら圭介くんと来るはずだったジェラート屋さんに、私はるりっちと梢ちゃんと一緒に訪れたのだった。
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ジェラート・ジェラシー
(3)「大好きな彼」
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望月 美羽:
「圭介くんが、あんなにわからず屋だとは思わなかった!」
ジェラート屋さんの隅のカウンター席に、私たちは並んで壁に向いて座っていた。
ぷんぷんと真ん中席の私は、プラスチックスプーンを苺ジェラートに突き刺す。その反動で、飾りミントがはらりと落ちた。
羽鳥 梢:
「つまりはまぁ、ヤキモチを妬き合ったわけだ」
相も変わらずクールな梢ちゃんは、これまたクールに私の話をまとめてしまい、チョコジェラートをすくう。
戸田 るり:
「美羽、大変だったね」
優しいるりっちは、自分のことのように困り顔をして、私の話を聞いてくれた。ミルクジェラートには、まだ手をつけていない。
そんなるりっちに、ついつい私の愚痴も出やすくなる。
望月 美羽:
「私だってヤキモチ妬いたのにさ、圭介くんてば、自分のことには全っ然気づいてないんだもんっ」
望月 美羽:
「他の女の子にデレデレしてたの、私は我慢したのに、私がちょっと先輩としゃべっただけで怒るなんてさっ」
しかしそこで、冷静な梢ちゃんの突っ込みが入る。
羽鳥 梢:
「でも大谷からしたら、先輩は彼女の好きだった人でしょ? ただのファンの子とは違うよ」
望月 美羽:
「うっ……」
それはまぁ──たしかに、そうなのかもしれない。
私は圭介くんの過去の恋愛なんて知らない(というかあったのかも知らない)から、ヤキモチなんてしたことがなかったけれど。
でも圭介くんは、知っている。
私が杉野先輩を好きだったってこと。
たしかに比べると、圭介くんの方がしんどいのかもしれない。
でも……でもさ。
戸田 るり:
「でもやっぱり、他の女の子にヤキモチは妬いちゃうよね」
望月 美羽:
「!」
るりっちが私の気持ちを、代弁してくれた。
苦笑してるりっちはミルクジェラートを一口食べる。
戸田 るり:
「ヤキモチなんてしたくないけど、なかなかコントロールできないもんね」
羽鳥 梢:
「お、さすがヤキモチの苦労人」
戸田 るり:
「これに関しては、イヤだけど慣れちゃったよ、もう」
モテモテ中曽根くんの彼女のるりっち。その心労は、きっと私よりも大きいに違いない。
でも、おかしいなぁ?
ヤキモチでるりっちたちがケンカしてるところなんて、見たことないけど。
望月 美羽:
「るりっちたちは、そういうのでケンカしない?」
戸田 るり:
「んー、ないなぁ」
羽鳥 梢:
「中曽根、他の女子に興味なさそうだもんね」
梢ちゃんの言葉にハッとなる。
そう、そうなのだ!
私がヤキモチを妬く理由はそれである!
望月 美羽:
「そーなの! 圭介くんも中曽根くんみたいに、クールにしてくれればいいのにさぁ」
またしても、一度鎮火したはずのジェラシーがよみがえる。
望月 美羽:
「応援してくれた後輩女子に、すっごいデレデレするの!」
そして芋づる式に、去年同じクラスだった時のことも思い出す。
望月 美羽:
「去年も井本くんと、エッチな話とかしてるし!」
望月 美羽:
「そういえば、漫画雑誌のグラビアんとこも回し読みしてたし!」
望月 美羽:
「教育実習の女子大生にも、鼻の下伸ばしてたー!」
戸田 るり:
「お、落ち着いて、美羽」
羽鳥 梢:
「はー、何とも大谷らしい……」
どうどう、と馬をならすみたいに手を上げるるりっち。
もらされた梢ちゃんの感想に、私は小さくため息をつく。
望月 美羽:
「……うん、大谷くんて、そうなんだよねー……」
おバカで、女子に弱くて、エロ親父キャラ。
でも。
望月 美羽:
「……でも」
望月 美羽:
「そんな大谷くんだから、好きなんだよね」
しゅん、と急に勢いは消えちゃった。
そう。まくし立ててるうちに、わかっちゃった。
そんな圭介くんを見ているのも、楽しかったなって。
でも彼女の立場になったとたん、そんな余裕も消え失せて独占欲が出てきちゃう。いやだなぁ。
望月 美羽:
「あーあ、嫉妬なんてしたくないよぅ」
えい、とジェラシーの火を消したくて、冷たいジェラートを食べまくる。
ひんやり冷たいそれは、口の中であっという間に溶けていく。
戸田 るり:
「……でもさ、美羽」
戸田 るり:
「嫉妬も放っておくと、大変なことになっちゃうよ」
るりっちがやんわり語り出したので、耳を傾けた。
ただ優しくお話してくれる。
戸田 るり:
「伝えてもいいんだよ、自分がやだなって思うことは」
戸田 るり:
「大谷くんと比べて大したことないって思っても、美羽にとってイヤなことには、変わりないでしょ?」
望月 美羽:
「……うん」
戸田 るり:
「なら伝えなくちゃ。まだヤキモチが小さなうちにさ」
望月 美羽:
「うん……」
そうだね。
ヤキモチの火なんて、小さいうちに伝えて、消してもらえばいいんだ。
放っておいたら、大火事になっちゃう。
ドロドロに溶けてしまうジェラートのように、その姿はみっともないに違いない。
羽鳥 梢:
「……るり、大人になったねぇ」
梢ちゃんも、私と同じ感銘を受けたのだろう。
少し驚いたように、目を丸くしてるりっちを見た。
戸田 るり:
「ふふー、ただの受け売りだけど」
羽鳥 梢:
「いいねぇ、恋する乙女っ」
望月 美羽:
「梢ちゃんは、まだ?」
羽鳥 梢:
「まだです!」
胸を張って答えた梢ちゃんに、私とるりっちは笑い合う。
ああ、圭介くんといるのも楽しいけれど、友達とのおしゃべりは、また違って楽しいな。
大好きなるりっちと梢ちゃん。
2人から元気とアドバイスをもらって、私はようやく圭介くんに謝らなきゃ、と思えたのだった。
◇ 続く ◇




