↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この空色バス、春先行き。【完結】  作者: 猪野いのり
第二章 安全運転にて走行中《2年生編》
PR
177/273

Ep.36 まだ見ぬ明日へ(2)「到着」

 駅に集合した俺たちは、電車に揺られながら、目的地である郊外の遊園地へと向かっていた。


 少しだけ混んでいる電車の中。

 邪魔にならないよう、立ち話をしている。


 大谷 圭介:

「羽鳥は、来なかったんだな」


 しっかり者の、羽鳥梢。

 望月とも松宮とも仲がいいから、来ると思ったのに。


 望月 美羽:

「んー何かね、しばらくは大中小トリオに関わりたくないんだって」


 大谷 圭介:

「へ、何で!?」


 驚いた俺に、戸田が小さく笑う。


 戸田 るり:

「梢ちゃん、変な噂を立てられて、まいってたもんね」


 ああ、そういやそんなことがあったな、と思い出す。

 秋頃になぜか、俺と羽鳥がデートをしていたなんて、望月が誤解していたときがあった。

 あれには俺も、ビックリした。


 戸田 るり:

「なんか、悠の第2の彼女とか言われたんだって」


 中曽根 悠:

「はぁ!? んなウワサあったのか!?」


 中曽根は今知ったようで驚いている。この鈍い男め。

 まぁそんな噂も、もう消えてんだけどな。


 井本:

「はっはっ、やるじゃねーの、中曽根~」


 中曽根 悠:

「ご、誤解だ!」


 戸田 るり:

「知ってるよ」


 そんなふうにしゃべっていたら、あっという間に目的地に着いた。


 肝心の、隼人と松宮はというと。

 目は互いに合わせるものの、笑ってばかりで2人での会話はあまりしない。

 松宮は、早乙女とばかり話している。

 こりゃたしかに、応援してやらないといけないかもな、なんて小さく笑った。



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


 まだ見ぬ明日へ

(2)「到着」


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



 遊園地に着いた。

 春休みで人も多く、賑やかだ。

 俺たちはフリーパスになるリストバンドをつけて入場すると、ぞろぞろと歩きながら、どこから回ろうか話し合った。


 大谷 圭介:

「さー、どこから行くかなぁ」


 部長となってから何となく、集団を引率するくせみたいなものがついてしまった。

 今は、俺と望月が先頭を歩き、後ろに6人がついてきている。


 ちらりと後ろを見れば、なんと隼人と松宮が並んでいた。女の子たちが、気を利かせたのだろう。


 小池 隼人:

「松宮さん、絶叫系は大丈夫なの?」


 隼人は、いつもの優しい口調で松宮に問いかける。


 松宮 茜:

「うん、大丈夫。好きな方だよ」


 答える松宮は、うっすらと赤くなっていた。

 いつもはハキハキ元気な印象の彼女だが、隼人の横では少しだけ静かに見える。

 ははーん、恋する乙女ってわけね。


 大谷 圭介:

「あいつら、いい感じだなっ」


 望月 美羽:

「だねっ!」


 こそっと望月と笑い合ったときだった。


 井本:

「松宮ー、お前、相変わらず足がなげーなっ」


 井本がそんな2人に割り込んできた。

 隼人の肩に腕をのせ、2人の間に入ってしまう。


 松宮 茜:

「何、井本。それセクハラ!」


 井本:

「バカヤロ! 羨ましいっつってんだよ。サッカー部としてはさぁ」


 松宮 茜:

「あはは。ま、バスケ部エースですからね! たんと羨ましがりなさい」


 井本:

「うわ~、謙遜しろよな、そこはさぁ」


 同小のよしみか、2人の会話は親しみがある。

 そんな2人に遠慮して、隼人は肩にかけられた井本の腕をそのままにして笑っていた。


 大谷 圭介:

(あいつ邪魔して~! 中曽根としゃべってろよっ)


 そう思い中曽根を見れば、やつは戸田と並んで楽しそうにしゃべっていた。あのバカップルめ!


 たしかに中曽根があれでは、一緒にいられまい。隼人や同小の松宮に来るのは仕方ないことである。


 だがしかし、そこで意外な人物が助け船を出した。


 早乙女 茉莉:

「……い、井本くんは、絶叫系好き!?」


 ここまでほとんど男子としゃべらなかった、早乙女だった。


 井本:

「へ?」


 突然話しかけられた井本は、驚いてそんな早乙女に目を向ける。

 早乙女は、必死に言葉を続けた。


 早乙女 茉莉:

「わ、私、ここのジェットコースターはあのミニミニコースターが好きでね、昔もよく乗っててね、でも今見たら、休止になっててビックリしちゃって……」


 井本:

「お、おう」


 たどたどしく言葉を続ける早乙女に井本はきょとんとしつつ、つい聞いてしまう。

 そんな井本は、隼人たちから離れることになった。


 ははは、ナイスアシストだ早乙女!


 俺と望月は、また目を合わせた。


 大谷 圭介:

「大丈夫みたいだな」


 望月 美羽:

「へへ。じゃあ安心して、楽しめるね!」


 そう言って笑った望月は、すごく可愛い。

 そうだよな。

 俺たちだって、楽しまないと損だよな!

 まだ、デートらしいデートは数回しかしていない。

 この遊園地だって、本当なら2人きりで来たかったぜ。


 そう考えた俺は、望月の手を握った。

 望月のちっこい手は、すべすべしていてつい触りたくなる。


 望月 美羽:

「! け、圭介くん、みんないるよ!?」


 大谷 圭介:

「いーじゃん! もう公認なんだし、あいつらしかいねーし」


 わはは、俺らがラブラブなのを見せつけてやる!


 慌てる望月も可愛いなぁ、なんて鼻の下が伸びそうになっていたら。


 小池 隼人:

「ケ、ケイちゃん!」


 なぜか、隼人の声が背後から飛んできた。


 大谷 圭介:

「ん?」


 まるで、俺と望月の手つなぎを隠すように近づいて、コソッと言う。


 小池 隼人:

「今日くらいは自粛しなよっ。ほら、その……女の子たちも困るだろ?」


 大谷 圭介:

「へ? そうなの?」


 よくわからない理屈で、たしなめられてしまった。

 背後を見ても、戸田は中曽根と楽しそうにしゃべっているし、早乙女はまだ井本にたどたどしいマシンガントークを繰り広げている。

 松宮だけが、俺たちのところへ来た隼人の背をきょとんと見ていた。


 小池 隼人:

「と、とにかく今日はみんなと遊ぶんだから、そういうのは無しね!」


 大谷 圭介:

「……はぁ」


 まさか望月ではなく、隼人に怒られるとは。

 手を離すと隼人は、安心してまた松宮と並んだ。

 何だったんだ、一体。


 望月 美羽:

「小池くん、どうしたんだろ」


 大谷 圭介:

「さあ?」


 何かあいつ、変な勘違いでもしてるのか?

 俺は優しく松宮を見つめる隼人を、首をかしげて見守った。




 ◇ 続く ◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。