Ep.28 シュガー・アンド・スパイス(3)「ガールズトーク」
くじ引きの結果、それぞれが扮するキャラクターが決定した。
戸田 るり:
「本当に私がアリスでいいのかな?」
望月 美羽:
「えー、いいじゃん! るりっちにぴったり! 私チェシャ猫だってー!」
飯田 詩音:
「あ、テーマパークで買った猫耳あるよ。使う?」
望月 美羽:
「使う使うー!」
美羽ちゃんはすっかり詩音ちゃんと打ち解けて、ノリノリで衣装を探している。
るりちゃんも、いつの間にか楽しそうに服を見ていた。
茜ちゃんはもう、諦めた様子で肩をすくめている。
松宮 茜:
「まあいっか。私、マッドハッターでよかった……」
羽鳥 梢:
「ああ、帽子屋ね。それならあのシルクハットとか、似合いそうじゃない?」
にこにこと梢ちゃんは帽子を渡す。
松宮 茜:
「羽鳥はなんだったの?」
羽鳥 梢:
「私、眠りネズミだって。寝てたらいいかなー?」
そんな梢ちゃんに「あ、ネズミーランドのカチューシャ使う!?」と詩音ちゃんが声をかける。
みんな、ワイワイガヤガヤ楽しそう。
早乙女 茉莉:
「………」
ど、どうしよう。
てんで動こうとしない私のクジには「白うさぎ」と、書かれていた。
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シュガー・アンド・スパイス
(3)「ガールズトーク」
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結局、私の衣装は詩音ちゃんがすべて選んでくれた。
白シャツに赤いジャケット、蝶ネクタイをつけさせられ、ぴったりの黒パンツ。小物アイテムの懐中時計まで持たされた。
テーマパークのうさぎ耳カチューシャはとっても恥ずかしかったが、他にも猫耳やらネズミ耳やら大きなリボンをつけていたので、もう開き直るしかない。
そう、仮装とはそういったものなのだ。
恥ずかしがったら負けである。
飯田 詩音:
「うわあ、みんな可愛い! 似合ってる!」
ハートの女王に扮した詩音ちゃんは、とっても楽しそうに言った。
フリルがふんだんに使われた赤いドレスを着て、ティアラをかぶっている。
うんうん、とみんなを見渡す貫禄はなるほど、女王様である。
戸田 るり:
「ワンピース、汚さないようにしなくちゃ」
水色のワンピースに白エプロン、髪の毛をおろして水色のリボンを頭に結んだるりちゃんはとっても可愛い。
本当に、アリスが絵本から飛び出たみたいだ。
望月 美羽:
「気にしてたら楽しめないよ! 私はお菓子いっぱい食べちゃおう」
美羽ちゃんは黄色の猫耳に合わせて、レモンのような明るいワンピースを着ていた。
チェシャ猫というよりは、元気な子猫みたいだ。
羽鳥 梢:
「あ、そうだそうだ。みんなが持ってきたお菓子も広げようよ」
梢ちゃんはネズミ耳をつけていても、いつも通りに率先して進行しようとする。
白シャツにサスペンダー付きハーフパンツ、ボーダーネクタイの格好は、ちょっとだけ少年ぽい。
松宮 茜:
「あ、じゃあ私がジュースを注ぐよ」
シルクハットが少し邪魔なのか、クイッと上げながら茜ちゃんは言う。
モスグリーンのハットと蝶ネクタイ、ジャケットにパンツを着こなした茜ちゃんは、さながら紳士のように見えた。
早乙女 茉莉:
「茜ちゃん……カッコいいねぇ」
隣に座っていた茜ちゃんに、つい感想をもらしてしまう。
すると茜ちゃんは、ニカッとお日様みたいに笑ってくれた。
松宮 茜:
「ありがと! 茉莉もうさぎ姿、可愛いよ」
早乙女 茉莉:
「か、可愛い……」
あまり言われ慣れていない単語に、顔が赤くなる。
すると詩音ちゃんが、そんな会話をしている私たちに声をかけてきた。
飯田 詩音:
「こらこら茉莉ー!茜にはもう想い人いるんだから、惚れちゃダメー!」
松宮 茜:
「! し、詩音!?」
慌てた茜ちゃんに、美羽ちゃんが目を輝かせた。
望月 美羽:
「え! 茜ちゃん好きな人いるの!?」
松宮 茜:
「い、いや、えっと……」
茜ちゃんが小池くんを好きなことを知らないのは、この中では美羽ちゃんとるりちゃんだけだ。
恋バナ好きな美羽ちゃんは、戸惑う茜ちゃんにぐいぐい食いつく。
望月 美羽:
「誰だれ!? 知ってる子なら協力するよ~」
松宮 茜:
「……っえ、いや、あの……」
あ、茜ちゃん! これはチャンスでは!?
が、しかし。
奥手な茜ちゃんは自分の恋バナが中心になることが、とことん苦手なようだ。
松宮 茜:
「み、美羽ちゃんはそういえば、大谷と付き合い始めたんだって!?」
話題をすり替えた。
望月 美羽:
「うん、そだよー」
茜ちゃんとは真逆の精神である美羽ちゃんは、ころっと照れる様子もなく答えた。
それに茜ちゃんは少し安心して、質問攻めにする。
松宮 茜:
「ど、どう? 実際付き合ってみて。楽しい?」
望月 美羽:
「うん、楽しいよー! 毎日ラブラブー」
ら、ラブラブ……!
その言葉に私含めて、他のみんなが赤くなった。
ひとり、梢ちゃんはそうでなかったけれど。
羽鳥 梢:
「美羽、たしかチューしたんだっけ?」
早乙女 茉莉:
「え!?」
みんな:
「へ!? 」
梢ちゃんの発言に、私たちはみんな一斉に驚きの声をあげた。
ち、ち、ちゅちゅチュー!?
ネズミ耳をつけてもないのに、ネズミみたいな悲鳴が出そうになる。
望月 美羽:
「うん、したよー! ほっぺだけど」
戸田 るり:
「あ、結局、本当にしたんだ」
早乙女 茉莉:
「サッカー試合の……?」
なるほど、そういうことかと少しホッとした。
美羽ちゃんは以前サッカー部の練習試合で、勝ったら大谷くんにほっぺチューする約束をしていたのだ。
結局はしなかったけど、あれがきっかけで付き合い始めたことは、あの日一緒にいたメンバーは知っている。
飯田 詩音:
「なーんだ、ほっぺかぁ」
詩音ちゃんはちょっと、ガッカリしたように言う。
すると、美羽ちゃんは悪戯っ子みたいに笑った。
望月 美羽:
「私よりも、気になるのはるりっちでしょー! なんたってお付き合い1年越えの大ベテラン!」
戸田 るり:
「み、美羽!?」
今度は、るりちゃんに注目が集まる。
望月 美羽:
「ほらほら、去年キスされそうになったって言ってたじゃん! てことはもう、したんでしょー」
「えー!」と何も知らない私と詩音ちゃんと茜ちゃんは驚く。
戸田 るり:
「し、してないよまだ!」
望月 美羽:
「えー、そうなの?」
羽鳥 梢:
「あ、そうなんだ。中曽根のことだから、もうてっきり……」
戸田 るり:
「も、もう……梢ちゃんまでっ」
早乙女 茉莉:
(う、うひゃあ~)
男の子と付き合うとか、ましてやキスなんて、私にとっては遠い世界の出来事だ。
未知の恋愛トークにドキドキと胸が鳴り出したと同時に、お菓子の甘い香りが、私たちを包んでいた。
◇ 続く ◇




