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この空色バス、春先行き。【完結】  作者: 猪野いのり
第二章 安全運転にて走行中《2年生編》
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Ep.28 シュガー・アンド・スパイス(1)「パーティーをしよう!」

 女の子は何でできている?

 女の子は何でできている?

 砂糖とスパイス

 そしてすべてのステキなものたち

 そういったものでできている


 ──マザーグース『what are little boy made of』より



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


 シュガー・アンド・スパイス

(1)「パーティーをしよう!」


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



 早乙女 茉莉:

「ハロウィンパーティー?」


 飯田 詩音:

「そ! 茉莉も、もちろん来るよねっ」


 私、早乙女茉莉は、教室にやってきた詩音ちゃんにステキな提案をされていた。

 1年の時に、仲良くしてくれていた詩音ちゃん。

 10月の最終日曜日に、お家でハロウィンパーティーをするという。

 私の席の前に立って話す詩音ちゃんが珍しくウキウキしているから、つられて私もウキウキしてしまう。


 早乙女 茉莉:

「うん、行きたい!」


 ハロウィンパーティーなんて初めてだ。

 どんなことをするのかなんてわからないけれど、きっと楽しいに違いない。

 私の返事を聞いて、詩音ちゃんはにっこり笑った。


 飯田 詩音:

「茉莉ならそう言ってくれると思った!」


 飯田 詩音:

「他には茜と梢がくるよ」


 早乙女 茉莉:

「わあ、リレーメンバーだね!」


 去年、一緒に400メートルリレー走を頑張ったメンバーだ。

 それにますます、嬉しくなってしまう。

 2年生ではクラスがバラバラになってしまったから、集まるのは久しぶりだ。

 思わずにっこりした私に、詩音ちゃんは続けて言った。


 飯田 詩音:

「あと、戸田さんと望月さんも誘おうと思ってさ」


 早乙女 茉莉:

「え、るりちゃんと美羽ちゃん?」


 詩音ちゃんからその2人の名前が出たのは、意外だった。

 羽鳥梢ちゃんと小学生の頃から仲がいいその2人。

 私は、るりちゃんと2年生で同じクラスになって仲良くなれた。

 最近では、るりちゃん経由で美羽ちゃんともお話するようになって「マリリン」というちょっと恥ずかしいけれども嬉しいニックネームまでつけてもらえた。


 でも、詩音ちゃんはその2人とはあまり接点がないように思ってたんだけど。

 しかし詩音ちゃんは「ふっふっふっ」と、なぜか少し意地悪そうに笑う。


 飯田 詩音:

「茉莉! これは茜のためよっ」


 早乙女 茉莉:

「へ?」


 きょとんとした私に、詩音ちゃんはビシッと指さした。


 飯田 詩音:

「戸田さんの彼氏は?」


 早乙女 茉莉:

「えっと、中曽根くん」


 飯田 詩音:

「じゃあ望月さんの彼氏は!?」


 早乙女 茉莉:

「んっと、大谷くん?」


 最近、美羽ちゃんと大谷くんがカップルになったことは2年生の間では有名だ。

 背の高い大谷くんと、小さい美羽ちゃん。

 2人が並ぶと、とても目立って凸凹カップルなんて呼ばれている。


 飯田 詩音:

「中曽根くんと大谷くんと仲がいいのは!?」


 詩音ちゃんがそこまで言って、私はようやく理解した。


 早乙女 茉莉:

「あ、小池くん……てことは」


 茜ちゃんのため、といったさっきの詩音ちゃんのセリフを思い出して、結びつく。

 詩音ちゃんはやっとわかったね、と言ったようにうなずいて笑った。


 飯田 詩音:

「将を射んと欲すればまず馬を射よ!」


 飯田 詩音:

「奥手の茜には、まわりのサポートが必要でしょ!」


 早乙女 茉莉:

「ほぇ〜……詩音ちゃん、難しい言葉よく知ってるねぇ」


 なるほど、たしかに茜ちゃんのためであった。


 茜ちゃんは、1年生の時から小池くんに片想いをしている。

 でも自分の方が背が高い、女の子らしくない、と茜ちゃんはなかなか小池くんに対して積極的にはなれない。

 そんな茜ちゃんに、私と詩音ちゃんはいつも励ましエールを送っていた。


 でも、そんな下心で2人を誘うのは悪くないかなぁ? なんて考えた私の気持ちがわかったのかな。

 詩音ちゃんが今度は、優しく笑った。


 飯田 詩音:

「ま、あの2人とは、私も遊んでみたいなって思ってたし」


 それを聞いて、少しホッとした。

 好きな友達が、自分の友達に好意を示してくれるのはやっぱり嬉しい。


 早乙女 茉莉:

「そうなんだ」


 飯田 詩音:

「うん、茉莉がいつもお世話になってますって言わなくちゃね」


 早乙女 茉莉:

「えへへ、お母さんみたい」


 飯田 詩音:

「そうよー! 私はあんたの保護者みたいなもんなんだからっ」


 詩音ちゃんはそう言って、私の頭をガシガシと撫でてくれた。

 その温もりを受けて、幸せな気持ちになる。


 私、詩音ちゃんが本当に大好き。

 1年生の頃は、きつい言い方をする詩音ちゃんが怖いな、なんて思っていた時期があった。

 でもいったん打ち解けると、とことん仲間や友達に甘い詩音ちゃんは、今では私にとって欠かせない唯一の存在だ。

 それは、クラスを離れた今でも変わらない。

 今は同じクラスのるりちゃんと一緒の時間が多いし、もちろんるりちゃんも大好きだけど、詩音ちゃんはまた違うの。


 ずっとずっと、仲良くしてほしい。

 そんなふうに思っている。


 早乙女 茉莉:

「あ、るりちゃんが戻ってきた」


 ふと、教室に戻ってきたるりちゃんに気づいてそういうと、詩音ちゃんも振り返った。

 日直の仕事で職員室へ行っていたるりちゃんに、あらためてハロウィンパーティーの声をかける。


 戸田 るり:

「へー、面白そう! 行きたい行きたい!」


 るりちゃんは突然の詩音ちゃんの誘いにも、嬉しそうに答えてくれた。

 それを聞いて詩音ちゃんも、ホッとしたように笑っている。


 飯田 詩音:

「よかった。簡単なお菓子だけ、持ってきてくれればいいからさ」


 戸田 るり:

「わかった! 手作りとかでもいいのかな?」


 飯田 詩音:

「もちろん! 戸田さんってお菓子作り得意なんだよね? 期待しとく!」


 戸田 るり:

「ふふー、頑張っちゃお」


 そんな2人の会話を聞いているだけで、私も楽しみになってきちゃう。


 その後、2組にも行って、無事に美羽ちゃんの参加OKをもらった。


 こうして私、詩音ちゃん、茜ちゃん、梢ちゃん、るりちゃん、美羽ちゃんと6人でのハロウィンパーティーが行われることが決定したのであった。


 わあ、なんだか……とっても楽しみだ!




 ◇ 続く ◇

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