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この空色バス、春先行き。【完結】  作者: 猪野いのり
第二章 安全運転にて走行中《2年生編》
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Ep.23 おまけの2人

1話完結

 たぶん、神様ってのはいるんだと思う。

 そしてその神様は、俺にすっげー意地悪で、俺がよからぬことを考えると罰を与えるんだ。


 寝ているるりの頬に、キスをした。

 まさか、その現場を坂本先生に目撃されてしまうとは……!



❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀


 おまけの2人


❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀ ❀



 中曽根 悠:

(いやでも、こっちも弱味は握ってるし!)


 坂本先生が篠田先生と付き合っているとは知らなかった。

 夏休み中だからって、油断したのだろう。

 下校中の俺らに、抱き合っているところを見られてんだから。


 戸田 るり:

「ひゃあ~。なんか、すごいの見ちゃったねぇ」


 門を出たら、隣で歩いていたるりがのん気にそう言った。


 戸田 るり:

「あの2人ができてるって、みんな知ってるのかなぁ」


 その言葉に俺はドキッとする。


 中曽根 悠:

「るり、言いふらすなよ」


 戸田 るり:

「言いふらさないよー」


 そう言いつつも、るりはニマニマしている。

 うう、どうして女ってやつは、こうも人の色恋沙汰が好きなんだ!?

 決して、るりや他の奴に知られたくない秘密を人質にされている俺は、もう一度るりに念を押した。


 中曽根 悠:

「絶対だからな!」


 戸田 るり:

「う、うん」


 頭に「?」を浮かべてそうなるりは、戸惑いながらもうなずいてくれる。

 ホッとした俺は、そんな彼女の横顔をちらりと見た。

 視線の先には、柔らかそうな桃みたいなほっぺ。


 いや、柔らかそうじゃなくて。

 柔らかいことを、俺は知っている。


 中曽根 悠:

「……っ」


 ダメだダメだ!

 変に意識してるとバレちまう。


 何にしても、あれはあんなところで寝ていたるりが悪い。

 寝顔をさらすなんて、無防備にもほどがある。

 だから俺は悪くない。

 うん、悪くないよな。


 1人うなずく俺を、隣のるりは首をかしげて見つめていた。



 ・   ・   ・



 戸田 るり:

(変な悠)


 やたら私に念を押す悠。

 そんなに私、言いふらしそうに見えるのかな? 失礼しちゃう。


 とは思いつつも、さっき見た篠田先生と坂本先生のラブシーンを思い出して、ドキドキしてしまう。

 抱き合う2人はまるで、ドラマや恋愛漫画の登場人物みたいだった。


 戸田 るり:

(今度、篠田先生に詳しく聞いちゃおうっと)


 告白のきっかけをくれて、恋愛相談にも乗ってもらっている篠田先生とは仲が良い。

 また部活がある日に聞きに行っちゃおうかな、なんて考える。


 そうしてふと、隣の悠を見る。

 なぜだか今日の悠は、そわそわしているみたいで落ち着いてない。

 いつもなら帰り道の途中で手をつないでくれるのに、それもない。

 変なの。


 戸田 るり:

(……ていうか)


 戸田 るり:

(いっつも悠から、だもんね)


 手をつないでくれるのは、いつも彼から。

 つい恥ずかしがってしまう私から手をつなぐことは、あまりなかった。

 それも何だかなぁ、と思う。


 ちゃんと思っていることを伝えることは大切と、篠田先生は教えてくれた。

 私は勇気を出して、彼の手を自分からつないでみた。


 中曽根 悠:

「え!」


 戸田 るり:

「!?」


 予想外の反応に、びっくりする。

 悠なら驚きつつも笑ってくれると思ったのに、思いのほか慌てている。

 そ、そんなに私からつなぐのって驚くこと?


 戸田 るり:

「……えっと」


 戸田 るり:

「……ダメ?」


 つい、気弱になって言ってしまう。

 ちらりと横を向けば、悠が顔を赤くして恥ずかしがっていた。

 めずらしい。

 いつもこっちが恥ずかしくなることを、平気でする悠なのに。


 中曽根 悠:

「……ダメじゃねーけど」


 そう言って悠は、きゅっと手を握り返してくれた。

 良かった、と安心していたら。

 彼はもう片方のつないでない手を、私の顔に寄せた。


 戸田 るり:

(……え!?)


 頬に手を添えられ──次の瞬間。



 ぐにっ。


 戸田 るり:

「ふにっ!?」


 ほっぺたをつねられた。

 軽くだけど。


 戸田 るり:

「何するのー!?」


 中曽根 悠:

「べっつにー」


 べぇ、と意地悪そうに悠は舌を出して顔をそむけた。


 一体急に何なの!


 今日の悠は本当に、わけがわかんない。

 あーあ、こんなんじゃ篠田先生たちみたいな素敵な雰囲気は、まだまだ遠そう。


 なんて憤慨しつつも、握った手はしっかりと離さない私なのだった。




 ◇ 終わり ◇

❀次エピソードへ続く

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