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理系令嬢、没落公爵家を科学で救う  作者: 此花サギリ


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第69話 忠告と王の決断――聖女令嬢の影響力


隣国の王宮。豪華なシャンデリアが煌めく玉座の間で、王は書類の整理をしていた。しかし、静かな王宮の空気はすぐに緊張に変わる。王の側近たちが一斉に面前に揃い、口々に忠告を始めたのだ。


「陛下、この町において、フラン男爵令嬢――キャサリンが薬屋を営み、貴重な漢方薬を販売しているとの報告です」

「さらに、教会の大司教の子息からの話によると、彼女は香水や妙薬を駆使し、町や貴族層に大きな影響力を及ぼしているとのことです」


王は眉をひそめ、側近たちを見渡す。忠告は穏やかではなく、危機感を帯びた声で続く。


「このまま放置すれば、隣国全体での社会的影響力を彼女が握ることになりかねません。聖女の称号まで得てしまった今、宗教的権威と世俗的影響力を併せ持つ存在として、王権に対しても影響を及ぼす可能性があります」


側近のひとりが、さらに具体的な懸念を口にした。


「彼女の薬屋や香水、妙薬による影響力は、臣民や貴族の忠誠心を彼女の方向に傾ける恐れがあります。将来的に王宮の統制力に影響を与えるかもしれません」


王はしばらく沈黙したまま、報告書や手元の情報を読み返す。表情に一切の動揺を見せず、冷静な声で言った。


「……なるほど、キャサリンか。フラン男爵令嬢か」


側近たちは緊張を抱えながら、王の反応を待つ。王はじっと窓の外を見つめ、町や城下の景色を思い浮かべているようだった。


「彼女の行動は……目立つが、直接的な危害を与えているわけではない。薬屋の運営も、町の健康向上に寄与しているではないか」


側近たちは息を呑む。王は懸念を完全に否定するのではなく、冷静に分析して判断する姿勢を見せたのだ。


「だが、聖女の称号を与えられるなど、宗教的権威を利用する動きは無視できぬ。情報収集と監視を強化し、必要であれば注意喚起を行うように」


王は手元の書類に指を滑らせながら、静かに命令する。側近たちはうなずき、報告書を持ち帰る準備を整える。王の声には、威圧や怒りではなく、理性的で戦略的な冷静さが感じられた。


「隣国の町における影響力は拡大しているが、今は過剰な介入はせず、彼女の行動を観察する。忠告は受け取った。だが、慌てて対応する必要はない」


忠告を伝えた側近たちは、王の決断にやや肩透かしを食らったような表情を見せる。だが、王の冷静さは確実で、状況を静観することで、隣国全体の秩序や自国への影響を正確に判断しようとしていた。


「陛下……しかし、将来的には影響力が王権に挑戦する可能性もございます。聖女としての権威と、薬屋や社交界での人気を持つ令嬢を放置するのは危険ではないでしょうか」


王は軽く笑みを浮かべた。


「危険かもしれぬが、同時に観察材料としても価値がある。彼女の動きを見極め、忠誠心や権力の反応を記録することも戦略の一つだ。過剰な介入は、かえって問題を大きくする」


側近たちは静かにうなずく。王の判断は明確で、焦らず、感情に流されず、戦略的に状況を監視することに重点が置かれていた。


「分かりました、陛下。私たちは町と貴族層の動向を監視しつつ、報告を続けます。必要であれば、王宮としての対応も準備いたします」


王は書類を机に戻し、再び窓の外を見つめた。

「良いか……キャサリン・フラン。彼女の行動は今は挑戦ではなく、学びと観察の対象だ。油断せずに見守ること、そして過剰な干渉は避けること。これが我が判断だ」


こうして、隣国の王はキャサリンの影響力拡大を正式に把握した上で、冷静に監視と観察の戦略を取ることを決定した。王宮内では忠告は受け入れられたものの、行動は王の判断に従って慎重に進められることとなった。


隣国の小さな町で薬屋を営み、香水と妙薬を駆使して聖女となったキャサリン。その存在は、王にとっても無視できないものとなりつつあったが、王は焦らず静かに次の動きを見極める覚悟を決めていた。



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